大人の発達障害

―文献名―
青木 省三, 村上 伸治.大人の発達障害を診るということ 診断や対応に迷う症例から考える.医学書院, 2015

―要約―
背景:
 幼少期から「少し変わった子」だと気づかれながらも診断や支援を受けてこなかった例、また多少の徴候はあっても気づかれずに児童期を過ごし、青年期や成人期に学校や職場などで対人関係などの問題が生じ抑うつなどの様々な症状を呈して精神科を受診する例が増えている(そのような例は、大半は児童期に児童精神科や発達障害を専門とする小児科医の診断を受けてない)。

目的:
「発達障害的なところがあるが診断してよいか迷うようなグレーゾーン」の患者について、その患者の中の発達障害特性に気づくことで患者理解が進み、その特性に応じた適切な対応が出来ること。

内容:
<特徴>
●発達障害特性は、状況に応じて変化する。
 例)ストレスの強弱によって、イライラやこだわり行動や独り言が強く現れたり見えにくくなったりする。
   「ある職場では発達障害, 別の職場へ行けば定型発達」
●発達障害と定型発達は、その間に明確な境界線を引くことが出来ない。
安藤先生図

<診断>
●発達障害の診断とは、白黒をつけることではなく、患者の行動を予測できるようになることである(灰色診断)。
 その人の発達障害特性はどのようなものであり、生活障害としてどのように現れるかを詳しく把握する。
 それにより、今後本人が遭遇するであろう生活上の困難を予測し、きめ細かい支援を行うことが出来る。
●生活上の具体的なエピソードから発達障害特性を一つずつ同定し、灰色診断を行う。
 発達障害に関する本を2-3冊、本人や家族に読んでもらう。その記載に似たエピソードを話してもらう。

<支援>
●常に周りに相談しながら生きていく人生を提案する。
●全ての人が必要としているのは「解説者」である。
 障害者手帳や障害者就労などの公的支援は、必要がある人もいれば必要がない人もいる。
 発達障害特性を持つ人は、目の前の状況を正しく理解できないことがあるため苦労する。
 同時通訳のように状況を解説してくれる人が必要である。本人に関わる全ての人が解説者になりうる。
●周りに相談できる人になってもらう。
 予後を決めるのは障害の重さではなく、助けてもらうパターンを身につけたかどうか、である。

<その他>
●現在の精神医学体系は、定型発達であることを前提に診断分類を行ってきた。
 発達障害特性を基盤にする事例は、非典型的病像を呈しやすい。
 →統合失調症/うつ病/不安障害などと並列して発達障害があるのではなく、全ての精神疾患のベースに発達障害があると考えたい。

―考察とディスカッション―
 誰もが定型発達と発達障害それぞれの要素を持ち合わせているため、はっきりとした「発達障害」の診断をつけなくても、個々の患者さんの特性を把握しそれに合わせて患者さんと付き合い必要な支援を提供していくとよい、という内容は普段の臨床経験から考えると腑に落ちるものでした。

ディスカッションポイント
 ① 発達障害の特性を持ち合わせている患者さんとの面接について、どのような経験があるか。
 ② ①の際、面接の際に気を付けていることや工夫していることは何か。

【開催日】
 2016年2月3日(水)

困難な学習者へのアプローチ

―文献名―
AMEE2015におけるワークショップ“Managing Trainees in Difficulty”より
Managing Trainees in Difficulty (version 3) -Practical Advice for Educational and Clinical Supervisors- Oct 2013 NACT UK: Supporting Excellence in Medical Education

―この文献を選んだ背景―
 「困難な学習者」はいつの時代も世界のどこでも、教育実践をする者にとって、最も困惑させ、最も教育的である。今回、AMEE2015で「Managing Trainees in Difficulty」というWSを受講し、アプローチとして学ぶべき点が多くあった。今回この学びを共有させていただき、教育経験豊富な指導医陣から、実戦的な対応方法についての交流できたらと考えた。

―要約―
General Principles
1)早期の問題の同定と介入が必要不可欠である
患者の安全や教育担当者の脅威になるような案件を取り上げる事は、指導医とそのチームの責任である。

使い勝手のよい「早期の警告サイン」は「Understanding doctors’ performance」から引用している。
  1.The “ disappearing act”:コールに出ない、姿を消す、遅刻する、病欠する
  2.Low work rate:段取り(患者に赴き、説明し、決定する)が遅い。早く出勤し、帰宅も遅いわりに、納得できる仕事量をこなしていない
  3.Ward rage:感情の爆発、相手を怒鳴る、現実ないし想像での軽蔑
  4.Rigidity:不確実性に耐えられない、妥協を許さない、優先順位をつけられない、不適切な「内部告発」をする
  5.Bypass syndrome:後輩や看護師が、当事者の意見やヘルプを避けている
  6.Career problem:試験に受からない、キャリア選択が曖昧、医学へ幻滅している
  7.Insight failure:建設的批判を拒絶する、自己防御する、言い返す
  8.Lack of engagement in educational processes:評価できない、事例から学ぶ事が遅い、ポートフォリオ作成にモチベーションが低い、
   振り返りが乏しい

  9.Lack of initiative/appropriate professional engagement:確固たるヒエラルキーのある文化で医学教育を受けてきたような学習者に
   よくみられる。そのような学習者は、上級医が決めた患者のマネジメントについて疑問を投げかけることや、健全な自己主張をしない

  10.Inappropriate attitudes:男性主導型の文化的背景があり、学習者は女性と同等の立場で働く事に慣れていない

2)環境や事実を出来るだけ素早く明らかにし、多くの情報を取り寄せる
 多くの案件は早期に、教育担当者と学習者の間で、現実的な学習プランを作成する中で、述べられている。オープンで支援的な文化であれば、臨床チームは、学習者のスキルを伸ばすように教育するし、改善すべきパフォーマンスや現状の困難さに建設的なフィードバックをするだろう。
 全ての情報を集めて照合し、判断を形成する。
 患者や当事者の安全に関わる問題は他の全てに優先する

3)パフォーマンスが低いのは症候であって、診断ではない。その根本の原因を探索する事が必要不可欠である
 1.臨床能力の問題(知識、技術、コミュニケーション技量)
 2.個人的、人格的、行動上の問題(プロフェッショナリズム、モチベーション、文化的宗教的背景も含む)
 3.病気(個人もしくは家族のストレス、キャリアに対する不満、経済的問題)
 4.環境の問題(組織、業務負担量、ハラスメント)

4)確実で詳細な診断によって、効果的な再教育ができる:異なる問題は異なる解決方法がある
 糖尿病やメンタルヘルスの問題を抱えた医師は、個人の力量や洞察力が欠けている医師とはまた違ったアプローチが必要である。前者は、産業医や総合診療医の助けが必要になる。後者は、支援的なモニタリング、頻回の臨床的アドバイス、望ましくない行動の裏にある信念を変えるフィードバックが必要であろう。

5)明文化する
 学習者に対する全ての議論や介入は、文書化され、学習者とキーパーソン(信頼、学校長ないしGMC)とのコミュニケーションツールとなる。また教育担当者、プログラム責任者、学校長のような重責のある者にフォローアップされ、このプロセスが適切に管理できているか、きちんと結論づけられるかを確認する必要がある。

6)不安は伝えるべきである、記録はつけるべきである、改善策を探るべきである
 問題が解決されるまで進化は止まったままであろう

銘記する事:適切で同時並行の文書化は必要不可欠である。

宮地&長図

―考察とディスカッション―
考察
 このワークショップでは、実際に、このフレームワークを用いて、困難な学習者とおぼしき4名が例示され、その学習者が本当に困難な学習者なのか診断の後で、困難な学習者について「非公式なおしゃべり」「360度評価」「患者からの苦情」「MiniCEX」などの様々な情報が提示され、対応策を考えるものであった。情報の中には、同僚医師からの妬みを表現しているものも含まれており、多様な情報を集めることが重要だというtake home messageもあった。また記録をし続けることも重要だと説明された。

ディスカッションポイント
 ・早期発見において10の警告サインがありますが、自身の直感・経験を踏まえて、納得できる点と納得できない点はありましたか?
 ・対応経験とフローチャートのフレームワークを比べて、うまくいっていたところ、こうすればよりよかったと感じるところはありますか?

【開催日】
2016年1月20日(水)

【EBMの学び】認知症患者の治療

STEP1 臨床患者に即したPI(E)CO
【評価を行った日付】
2015年12月9日
【臨床状況のサマリー】
ある日の施設回診の一場面。
79歳女性 今年9月から特養入所中 鉄欠乏性貧血や頻尿でもともと当院へ通院されていた。アルツハイマー型認知症については3年前に他病院で診断・フォローされている。当院でのHDS-Rは8点(2年前)。今年7月からリバスタッチパッチ(リバスチグミン)導入されており9月頃から背中の貼付部位に皮膚炎出現。他病院の処方医に相談すると足底に貼るよう指示されたとのことで変更したところ大きな水疱を形成。10月よりレミニール(ガランタミン)4mg2T2×内服に変更された。施設看護師「レミニールに変更後は以前より眠りがちです・・もともと認知症の周辺症状は強くなくおとなしい方です・・」
現在のADLは一部介助で車椅子レベル。
この方が認知症治療薬を飲み続ける必要はあるのか?

P;重度アルツハイマー型認知症で認知症治療薬を内服している高齢女性
I(E);内服を継続している場合
C;内服を中断する場合
O;予後を改善するか?

STEP2 検索して見つけた文献の名前
【見つけた論文】
◆Up to dateのCholinesterase inhibitors in the treatment of dementiaにはDuration of therapyの項目があり、ChEIの中断によりしばしば悪化することがあるとの記載。関連する論文はいずれもRCTではなく横断研究だった。
横断研究:http://www.uptodate.com/contents/cholinesterase-inhibitors-in-the-treatment-of-dementia/abstract/67?utdPopup=true
      http://www.uptodate.com/contents/cholinesterase-inhibitors-in-the-treatment-of-dementia/abstract/68?utdPopup=true

Galantamineの項には36ヶ月は効果持続するとあり、その根拠となっている論文を読んでみた。
The Cognitive Benefits of Galantamine Are Sustained for at Least 36 Months
 http://www.uptodate.com/contents/cholinesterase-inhibitors-in-the-treatment-of-dementia/abstract/33?utdPopup=true
→Pubmedでhttp://archneur.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=785390
軽症~中等度認知症患者を対象としており、患者のPICOには合わない…

◆Dynamed のAlzheimer dementiaでの薬物治療の項目にはcontinuing donepezil may slow cognitive decline compared to discontinuing donepezilとある。この根拠となったRCTがこちら
Donepezil and memantine for moderate-to-severe Alzheimer’s disease.
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1106668

◆認知症疾患治療ガイドライン2010ではその時点ではリバスチグミン・ガランタミンは本邦未発売だったが、重度AD患者へのドネペジル24週間治療の有効性についてのRCTが紹介されている。
 http://www.neurology-jp.org/guidelinem/nintisyo.html

STEP3;論文の評価
STEP3-1.論文のPECOは患者のPECOと合致するか?

P;地域に住み、3ヶ月以上ドネペジルを内服しておりそのうち少なくとも最近6週間は10mg内服している、中等度~重度(SMMSE5-13点)の
アルツハイマー型認知症(疑い)患者
I(E);ドネペジルを続ける/メマンチンを使用する/ドネペジルとメマンチンを併用するのは(ドネペジル・メマンチンの単独または併用治療は)
C;ドネペジルをやめる/メマンチンを使用しない/ドネペジルとメマンチンを併用しないのに比べて(プラセボに比べて)
O;52週後のSMMSEスコアやBADLSスコアの値は良くなるか
→患者のPECOと (合致する ・ 多少異なるがOK ・ 大きく異なるため不適切)

STEP3-2 論文の研究デザインの評価;内的妥当性の評価
①研究方法がRCTになっているか?隠蔽化と盲検化はされているか?
→ランダム割り付けが ( されている ・  されていない )
→隠蔽化が      ( されている ・  されていない )
→盲検化が      ( されている ・  されていない )
実際のTableで介入群と対照群は同じような集団になっているか?
→( なっている ・ なっていない)
どう異なるか? 介入群の方が、女性の割合が高い
② 解析方法はITT(intention to treat)か?
→ITTが (されている  ・  されていない)

STEP3-3 論文で見いだされた結果の評価
Outcomeについて、以下の値を確認する
【① 治療効果の有無; P値を確認する】
 ・ドネペジル継続群ではドネペジル中止群と比較してSMMSEスコアが平均で1.9ポイント高かった(95%信頼区間1.3-2.5、P<0.001)。
  BADLSスコアは平均で3.0ポイント低かった(95%信頼区間1.8-4.3、P<0.001)。
 ・メマンチン投与群ではメマンチン非投与群と比較してSMMSEスコアが平均で1.2ポイント高かった(95%信頼区間0.6-1.8、P<0.001)。
  BADLSスコアは平均で1.5ポイント低かった(95%信頼区間0.3-2.8、P = 0.02)
 ・ドネペジルとメマンチンの有効性には互いに有意な差がみられなかった。(SMMSE:p=0.14、BADLS:p=0.09)
 ・ドネペジルとメマンチン併用ではドネペジル単独を上回る効果は見られなかった。(SMMSE:p=0.07、BADLS:p=0.57)

【②治療効果の大きさ;比の指標と差の指標を確認する】
 連続変数である症状スコアが指標となっており率が求められない。
 分析にあたって、SMMSEは1.4ポイント、BADLSは3.5ポイントの差をもって臨床的に意義のあるスコアとしている。
【③治療効果のゆらぎ;信頼区間を確認する】
 P値と同様の項目で有意差あり。

STEP4 患者への適用
【①論文の患者と、目の前の患者が、結果が適用できないほど異なっていないか?】
 使用している薬剤は同じChEIだがそもそもドネペジルとガランタミン、リバスチグミンで種類は異なる。
 また施設入所中の患者である点も異なる。
【②治療そのものは忠実に実行可能か?】
 内服そのものは施設介護者が手助けしてくれ、拒食や拒薬の症状はみられないため、ドネペジル10mg内服継続という治療は有害事象がなければ実行可能と考えられる。
【③重要なアウトカムはコストや害を含めて全て評価されたか?】
 ドネペジル10mgは後発品でも1日300点以上。ガランタミン16mgだと400点。コストはかかる。
 そもそもガランタミンとリバスチグミンは軽度~中等症の認知症に対して保険適応となっており重症について保険適応があるのはドネペジルとメマンチン。
 内服前に比べて傾眠の副作用が前面に出る場合は転倒のリスクもあり、内服継続は望ましくない。
【④患者の考え・嗜好はどうなのか?】
 現時点で本人は施設での生活に満足しており、介護者も認知症による症状で困難を感じていない。重症の認知症患者と考えると認知症治療薬を内服継続することで僅かのMMSEやBADLSの値の改善がその後の生活を大きく変えるとは考えにくい。

 

【開催日】
2015年12月9日(水)

仏教と医療

―文献名―
池口惠觀:仏教は医療にどう関わるべきか.日救急医会誌.2015;16:539-544

―要約―
(文献のうち、「仏教界あるいは本邦の宗教界の医療への関わりについて」に該当する部分を要約する)
【諸言】
 原始、医療は宗教の一部であった。西洋ではヒポクラテス、東洋では釈迦がそうだった。本来、医療と宗教の両者は結びついていなければならないものだった。そこに、江戸時代に西洋医が導入され、区別されるようになった。医療は病を治す技術者としてその道を究め、宗教は心を癒す道に邁進してきたはずである。しかし宗教(この場合は仏教)は組織化と儀式化、そして学問化に邁進して布教という本来の職務を忘れてしまった。布教とはただ信者の獲得手段ではなく、信者の多くの心の支えとなり、庶民の生活に馴染んでいた。信仰は、身についてこそ緊急の場面で生きてくるが、それがなくなってしまっている。明治元年に施行された神仏分離令により、収入の道が閉ざされたことによる。

【仏教者の医療協力は必要か】
 近年、その仏教が再確認されるに至った。臨床医ならぬ「臨床僧」としての役目がありはしないか、という模索だが、当面のところ無理である。その理由を述べる。
 アメリカは多くの病院に礼拝堂が見られる。それは祈りの場としてキリスト教では馴染みの場所だが、日本では仏教が葬式を収入の道として開いたがために、病院内に薬師堂や涅槃堂を設けると、死のイメージに甘んじなければならなかった境遇を跳ね返す力を持たなかったことも含む。
 明治元年から昭和20年までの間、国は仏教を儀式に閉じ込め、日本人は個人の心を癒す宗教を失った。現在では仏教者自身が「道徳性」を崩壊または忘却してしまっている。有名な寺院は観光化し、檀家寺は葬式と副業に専心して、医療の場に役立つような有能な人材を育て得なかった。西洋のチャプレンに匹敵する「臨床僧」が成立するには、新たな宗教者の育成が不可欠である。それには医師に匹敵する優秀な学生を集めて教育しなければならず、そのためには魅力ある職業としての環境を整える必要があり、時間がかかる。

【諸行無常と共通の磁場】
 現代仏教が医療に役立つとすれば、医療者に対する教育に於いて発揮できる。仏教は万物の「無常」を説く。「生老病死」の4つの苦は、肉体に対するもので、今日は医療が担当している。釈迦は、この4つの苦を「真理」すなわち動かし難い宿業と悟れば、苦から解放されると説いた。万物は、必ず滅する。これを生きている者が真理として共通の認識を持つならば、死すなわち苦とはならない。そして自己の鍛錬と我欲の克服を日常の生活と成せば、いかなる死をも恐れる必要がない。
 この諸行無常の教えを医療の「慈悲」に繋げる。人の命は「須臾」の間、息を吸って吐く間と言われる。この時間をどう生きるのか。暗く生きるよりも明るく生きよと教えられている。仏教は一分一秒、刻々の生ある時を慈しむ生活の智慧であった。
 しかし医療は、死の世界から蘇らせる究極を天職とした。死を敗北とするだけに日常の学習は厳しく、日進月歩の医学についていかなければならない。それによって自己の人間性を損なっていないか、それを確認する時間もないままに新知識の獲得に追われる。これが医学生、臨床医のおかれた現実である。しかし、知識の量は進化しても、精神や体力はむしろ退化していると思われる。これでは精神が健全でいられるはずがない。
 宗教教育は、こうした精神の滋養に対する共通の認識、相互理解の磁場のようなものを培うことによって一瞬の「生」を慈しみ、お互いが助け合う心、補い合う心を育てるのではないか。

―考察とディスカッション―
考察
文献のまとめ:
 医療と宗教は元来結びついていたものだったが、江戸時代に西洋医が導入され、さらに明治時代となり、仏教者自身が心を癒す宗教を失ってしまっている。そのため臨床現場で役立つ仏教者は今のところ現れず、教育するにも長い時間がかかる。現代仏教が医療に役立つ場面としては、医療者に対する教育である。日進月歩の医学についていくため日々学んでいるが、それに追いつくための精神が培われていない現状があるため、宗教教育によってお互いに助け合う心を育てることができるかもしれない。

 「現代医学は、死を敗北とする」というところと、「生老病死は真理であり万物に必ず訪れる宿業と悟れば、死は苦とならない」というところが対比されているように見える。ヒーラーとしての家庭医や終末期ケアを行う医療者にとってはこういった心の持ちようも重要であるように思える。一方で、患者さんに対して思うだけでなく、自分自身も年をとり、病気にかかり、死ぬということも考えなければならない。自分は普段あまり病気をしないのでつい認識が薄れがちだが、自分自身の身体や心を大事にする必要もあるなぁと感じた。

ディスカッション
 ・皆様自身あるいは患者さんで、宗教によって心が救われていると感じた経験はありますか?

【開催日】
 2015年12月2日(水)

早期教育と幼児の発達

―文献名―
須森りか、鈴木克明:早期教育が幼児の発達に与える影響と今後の在り方.東北学院大学教養学部総合研究論文:1999

―要約―
【研究方法】
 文献とインターネットを使った研究論文。国会図書館での雑誌検索、インターネットにて早期教育を検索し独自に書籍やインターネットからの情報をまとめた。
 この論文における早期教育の定義は「胎児から小学校以前の教育でできるだけ早い時期から開始するという志向性を持ち、知的な教育、主にIQを高めることを意図し、働きかけに対する子どもの期待される反応を強く期待して行われる幼稚園や保育園を除いた教育」と定義づける。ここではお稽古ごとや、スポーツ教室は除外する。

【早期教育側の考え】
 知的早期教育の特徴は大脳生理学の考えである「才能逓減の法則」と「右脳教育」という2点がある。
 大脳の発達を年齢で見ると、第1の段階が1歳頃まで、第2の段階が3歳頃まで、第3の段階が6歳から7歳まで、そして第4の段階がそれ以降となっている(三石、1990)。脳が急速に発達を遂げているのは第2の段階までで、3歳頃まで が環境から与えられる刺激により脳の働きの可能性を大きく左右してしまうといわれている。「才能逓減の法則」とは、教育は早く始めるほど 高い能力が育ち、才能が伸びる可能性は年齢とともに急速に減っていくというものである(村松・吉木、1990)。また、「右脳教育」では右脳の働きが活発なのは幼児期で、0歳に近ければ近いほど高度の能力があり、学習意欲も旺盛であると考えている。右脳にはたくさんの能力が隠されており、開発できるのも右脳優位である3歳までが決め手になるのだという(七田、1993)。脳が急速に発達する3歳までの間に外からの刺激を受け止め、パターン化し、記憶するという最も基本的で重要な情報処理の仕組みができる。そのため右脳の働きも3歳までの間がもっとも活発である。上記2つの視点から、早期に教育することで幼児の才能を最高にひきだせるとしている。
 早期教育の教育内容の一つは、パターン認識を利用した「パターン教育」がある。特徴は「理屈抜きに見せる」「繰り返す」「結果は忍耐強く待つ」の3つであり、遊びの形態にしやすく左脳教育と比較し脳の負担が少ない。具体的にはカードを使うことが最良で、カードの使い方は一枚一秒の間隔でパッパッとめくって見せていく。するとこの速さに左脳はついていけないので引っ込んでしまい、右脳に働きを任せる。すると子供たちが生来持っている右脳の働きが優位に働くと説明している。
 アメリカのギルフォードが発表した知能構造論においては、脳には120の知能因子があるという。この知能構造論に基づいての教育法は、言語中枢と密接な関係があるという指先を司る脳を発達させることである。つまり言葉や文字の暗記などのひとつのことに偏らず、指を使うことで脳のいろいろな部分に刺激が与えるので子供の知能が全脳的に開発されるといっている。
 また、親子関係も深まる。早期教育をすることは子供への働きかけの時間が多くなるので、以前よりも子供とのふれあい、スキンシップが増えて、親子関係が深まると主張している。

【早期教育反対派の意見】
 幼児教育には「子供は遊びの中で育つ」という。早期教育でもその遊びを中心とした教材を開発しているが、本来の遊びと早期教育の遊びを取り入れた教材をすることでは本質が違うという。幼児の遊びの世界は、意味や価値の世界と無関係なところで展開される世界である。それに対して早期教育の世界は、この社会がもっている価値や意味の世界を体系化・記号化して子供の中に入れて行くことで成立する世界である。遊び体験は、自分の感情や要求に従いながら、子供自身が「内的ルール」を作り上げることで成立する世界であるのに対して、早期教育の場合は、外部で準備された活動を受動的に受け入れることで成立する世界である(加藤1995)。
 遊びを体験しなかった幼児は、体力がつかず幼児同士のコミュニケーションがないので社会性や協調性も育たず他人の気持ちが理解出来なくなる。遊びに熱中した経験がないと、集中力も育たなくなる。
 また山口(1994)は、早期教育で受動的な学習をしている幼児は自発性、創造性の領域の発達が抑圧されるのではないかと懸念している。幼児は親からの評価を気にして親の期待に沿おうと努力し続けてしまうという「依存的」なパーソナリティーが育ってしまう (高良、1996)。自主性が無く依存的な性格では、自分で自分の道を切り開いて行くことは出来ない(小宮山、1995)。
 早期教育では子供の知能をIQで測定するが、本当の賢さとは子供たちはその年齢にふさわしい形で対象に主体的・能動的に働きかけていく存在にほかならない。自分が体験したさまざまな事実を自分なりの論理でつなげ、それらのあいだに共通性を見つけだし、自分なりの「主観的な概念の枠組み」を形成しながら知的能力を伸ばしていくのである。賢さの本質はこの点にある(加藤、1995)。
 早期教育機関が挙げている大脳生理学の「合理性」に対しては、3歳までの脳の重さが急激に重くなることは確かであるが、それは脳の「構造」ができるだけであって「機能」が発達するわけではないと反論している。乳幼児期には子供自身が興味をもって広義の学習活動を行うことで、その後の脳の発達に影響する。早期教育機関の教材の遊びでは、なんのために覚えなければならないのか本人の自覚がないものでは学習の効果は一時的なものになる(汐見、1996)。
 加藤(1995)は、現在進められつつある早期教育はもっとも現代的な形で組織された管理主義保育の典型であるといっている。早期教育には基本原則が存在し、しかもその原則には一定の方向と順序を認める。その原則は「もっと早く、もっと高く、もっと正確に」である。早期教育が考える「能力観」には、「人間観」が欠如している。

【開催日】
 2015年12月2日(水)

【EBMの学び】BNPガイド下の心不全治療

STEP1 臨床患者に即したPI(E)CO
【評価を行った日付】
 2015年10月25日
【臨床状況のサマリー】
 #脳梗塞後遺症 #慢性心不全 #高血圧症 #脂質異常症 #慢性腎不全
 上記プロブレムで訪問診療中の74歳女性。ADLは屋内歩行器レベル
 2年前に心不全からの退院を契機に訪問診療導入。施設入所者。その後、入院を要することなく、安定した在宅療養を行えている。紹介時の心エコーではLVEF=30% 診察上 血圧130/80mmHg HR70 Sat95% 頸静脈怒張あり
  心雑音:心尖部にIII/VIの収縮期雑音 下腿浮腫あり 体重は概ね安定している。
 当院では、脂質異常症、慢性心不全のフォロー目的に3-6か月毎に血液検査(CBC、一般生化学、NTproBNP)を行ってきた。ここ2年のNTproBNPは1000程度pg/mLで推移している。内服調整なし。血清Creは1.5mg/dL程度
  内服薬)バイアスピリン(100)1T1x, アトルバスタチン(5)1T1x, レニベース(5)1T1x, アーチス(2.5)1T1x, アルダクトンA(25)0.5T,
      ラシックス(20)1T1xなど
  既往症)心不全の急性増悪(入院)心房細動なし
  喫煙歴:なし 飲酒なし 家族歴:なし
 今までなんとなく、慢性心不全の病名のある患者には定期採血にNTproBNPを含めていた。しかし、最近になりNTproBNP検査過剰である旨の警告が支払基金から送られてきた。NTproBNPを実施する患者を選択する必要を感じるようになった。慢性心不全の患者にBNPを実施することは有益なのか調べてみることにした。
 P;慢性心不全で治療中の高齢者
 I(E);NTproBNPを心不全の評価に利用した治療
 C;NTproBNPを利用しない治療
 O;QOLを改善するのか?

STEP2 検索して見つけた文献の名前
【見つけた論文】
BNP-guided vs symptom-guided heart failure therapy: the Trial of Intensified vs Standard Medical Therapy in Elderly Patients With Congestive Heart Failure (TIME-CHF) randomized trial. JAMA. 2009 Jan 28;301(4):383-92.

STEP3;論文の評価
STEP3-1.論文のPECOは患者のPECOと合致するか?

 P;60歳以上の慢性心不全患者(EF≦45%) and NYHA>II以上 and 1年以内の心不全の入院歴 and NTproBNPが正常値の2倍以上
 I(E);症状に加えてBNP正常上限2倍以下を目標に治療
 C;NYHA≦II度を目標に治療する
 O;18ヶ月後の入院回避率とQOL
→患者のPECOと (合致する ・ 多少異なるがOK ・ 大きく異なるため不適切)

STEP3-2 論文の研究デザインの評価;内的妥当性の評価
①研究方法がRCTになっているか?隠蔽化と盲検化はされているか?
 →ランダム割り付けが ( されている ・  されていない )
 →隠蔽化が      ( されている ・  されていない )
 →盲検化が      ( されている ・  されていない )
実際のTableで介入群と対照群は同じような集団になっているか?
 →( なっている ・ なっていない)
どう異なるか? 介入群の方が、女性の割合が高い
② 解析方法はITT(intention to treat)か?
→ITTが (されている  ・  されていない)

STEP3-3 論文で見いだされた結果の評価
Outcomeについて、以下の値を確認する
【① 治療効果の有無; P値を確認する】
一次エンドポイント
 ●入院回避率(figure 5)
  41% vs 40%( BNP群vs 症状群) p=0.39で有意差なし
 ●QOL(table 2)
  両群とも12ヶ月後にベースラインに比べて優位に改善(p<0.001)。
  両群間に有意差はなし。
その他の評価項目
 ●全生存率(Figure 5)
  84% vs 78%( BNP群vs 症状群) p=0.06
 ●心不全による入院回避率(figure 5)
  72% vs 62% ( BNP群vs 症状群) p=0.01
 ●年齢によるサブ解析(Figure 6)
  75歳未満では:入院回避率(p=0.05)、全生存率(p=0.02)、心不全による入院の回避率(p=0.002)と有意差を認めた。
  75歳以上では:入院回避率(p=0.54)、全生存率(p=0.51)、心不全による入院の回避率(p=0.45)と有意差は認めない。
【②治療効果の大きさ;比の指標と差の指標を確認する】
●RR(あるいはHR・OR)を確認する
 一次エンドポイント(入院回避率 & QOL):有意差なし
 その他の評価項目
  ・全生存率(Figure 5) HR 0.68
  ・心不全による入院回避率(figure 5) HR 0.68
  ・75歳未満によるサブ解析(Figure 6)
    入院回避率:HR 0.70
    全生存率:HR 0.41
    心不全による入院の回避率:HR0.42
●ARRとNNTを計算する
 Figure5より
  18ヶ月時点での入院回避率 RR=0.9709 ARR=0.020 NNT=49.3
【③治療効果のゆらぎ;信頼区間を確認する】
 一次エンドポイント(入院回避率 & QOL):有意差なし
 その他の評価項目
  ・全生存率(Figure 5) HR 0.68(95% CI, 0.45-1.02)
  ・心不全による入院回避率(figure 5) HR 0.68(95% CI, 0.50-0.92)
  ・75歳未満によるサブ解析(Figure 6)
    入院回避率:HR 0.70(95% CI, 0.49-1.01)
    全生存率:HR 0.41(95% CI, 0.19-0.87)
    心不全による入院の回避率:HR0.42(95% CI, 0.24-0.75)

STEP4 患者への適用
【①論文の患者と、目の前の患者が、結果が適用できないほど異なっていないか?】
 Table 1によれば、NYHA>IIIの心不全が74%を占めていて、NT-proBNP値の平均が4000程と高い点が目の前の患者と異なる点である。全体的に、論文の患者の方が目の前の患者に比べて重症感がある印象。
【②治療そのものは忠実に実行可能か?】
 治療のプロトコール詳細は不明であるが、ACC/AHAガイドライン通りの治療を行うことは忠実に実行可能であろう。しかし、BNP値が高いからといってACEIやB遮断薬の増量を行うということは実臨床では行うことはないかもしれない。
 NTproBNP測定(1.3.6.12.18か月)については心不全患者であれば保険適用内で実行可能であろう。
【③重要なアウトカムはコストや害を含めて全て評価されたか?】
 75歳以上の患者群ではBNPガイド群は症状ガイド群に比べて入院回避率やQOLを改善させることなく、重大な副作用(腎機能障害や低血圧による入院)が多く出現している。74歳≒75歳であり、NTproBNPのコントロールを目標とした薬剤調整には危険を伴うだろう。
【④患者の考え・嗜好はどうなのか?】
 患者の希望は入院せずに施設で生活すること。
 今回の論文の示す通り、BNPガイド治療で全入院回避率(特に75歳以上)について有意差がないのであればBNP検査施行の意義は限定的である。
 しかし、BNPの血液検査は患者の侵襲性をあげるとは考えない。他の検査機器(胸部レントゲンや心エコー)が使えない、在宅医療のセッティングを考慮すればNTproBNPを継続的にフォローする事自体は患者の心不全病態把握の一助となると思う。しかし、NTproBNPの値を目安に内服薬を調整することは患者に有害事象を加える可能性が高く慎重であるべきと思われる。

【開催日】
2015年11月11日(水)

【EBMの学び】脂質異常症に対するスタチン

STEP1 臨床患者に即したPI(E)CO
【評価を行った日付】
2015年9月28日
【臨床状況のサマリー】
5年ぶりの市民健診でLDL203,T.Chol270を指摘された65歳女性。特に大きな既往もなく、1日40分程度散歩するなど健康には気をつけている方という自負のある方。5年前の健診では特記事項なし。兄弟でコレステロールの薬を飲んでいる人がいたため、自分もついに薬を飲まなければならないのかと不安に思いながら小生外来受診となった。診察上黄色腫や黄疸、甲状腺腫大など認めず、血糖、腎・肝機能、甲状腺機能にも大きな異常を認めなかった。喫煙なし 飲酒なし 家族歴 父;食道癌 母;心不全、ペースメーカー留置後。「投薬せずに経過をみる症例」と考えたが、今回一次文献に遡り文献上の吟味を経た意思決定を行うことにした。
P;心血管系イベントの既往のない高齢女性
I(E);スタチン投与群
C;プラゼボ投与群と比較して
O;心血管イベント発生率に差が出るか

STEP2 検索して見つけた文献の名前
【見つけた論文】
Primary prevention of cardiovascular disease with pravastatin in Japan (MEGA Study): a prospective randomised controlled trial. Lancet. 2006 Sep 30;368(9542):1155-63.

STEP3 論文の評価
STEP3-1 論文のPECOは患者のPECOと合致するか?

P;冠動脈疾患既往のない軽~中等度(総コレステロール値220~270mg/dL)の高脂血症患者
I;食事療法+プラバスタチン(10~20mg/日)群
C;食事療法単独群
O;冠動脈疾患の発症に差が出るか
→患者のPECOと (合致する ・ 多少異なるがOK ・ 大きく異なるため不適切)

STEP3-2論文の研究デザインの評価;内的妥当性の評価
①研究方法がRCTになっているか?隠蔽化と盲検化はされているか?
→ランダム割り付けが ( されている ・  されていない )
→隠蔽化が      ( されている ・  されていない )
→盲検化が      ( されている ・  されていない )←不完全
実際のT ableで介入群と対照群は同じような集団になっているか?
→( なっている ・ なっていない )
②解析方法はITT(intention to treat)か?
→ITTが (されている  ・  されていない)

STEP3-3 論文で見いだされた結果の評価
Outcomeについて、以下の値を確認する
【①治療効果の有無; P値を確認する】
 ※Figure1を参照 (5.3年後の結果)
  ●Primary endpointsでは冠動脈疾患、心筋梗塞、冠動脈再潅流術
  ●Secondary endpointsでは冠動脈疾患+脳梗塞、全心血管イベント
 でP<0.05となり有意差あり。
【②治療効果の大きさ;比の指標と差の指標を確認する】
  ・ RR(あるいはHR・OR)を確認する
  ・ARRとNNTを計算する
 ※Figure2を参照
  ARR=101/3966-66/3866=0.0084
  NNT=1/ARR=119(“Results”内にも記載あり)
【③治療効果のゆらぎ;信頼区間を確認する】
 P値と同様の項目で有意差あり。
 (ただし、冠動脈再潅流術の項目以外はおおよそ0.5-0.9程度に入り、幅は広い印象。)

STEP4 患者への適用
【①論文の患者と、目の前の患者が、結果が適応できないほど異なっていないか?】
 論文の対象者(Table 1)は女性の占有率が70%と高く、女性の喫煙率が低い点、コレステロールの平均値などは一致している。一方、年齢が少し若い点や高血圧や投薬例が40%弱を占めている点などは若干異なる。
 登録患者は全て病院の外来受診患者であるため、診療所の患者とは背景が異なる点もあるが、今回の症例には適用可能な点も多いと考える。
【②治療そのものは忠実に実行可能か?】
 投薬していても、癌の発生率や総死亡に差がないこと、(発症すると致命率の高い)横紋筋融解症の発生がゼロなのはメリット。
 メバロチンの薬価も100点を下回っておりコスト面でも問題なし。
【④患者の考え・嗜好はどうなのか?】
 患者は健康意識の高い方であり、基本的には「薬による治療は最後の手段」という認識がある方だった。母親に心疾患があったことも考慮し、スタチン投与による心血管イベントのNNTを説明したところ再度投薬希望はされなかった。今後も定期的に健診は受けられる予定であり、follow可能なことは確認しつつ、次回半年後に再度フォローとした。

【開催日】
2015年10月14日(水)

包括性と医療費

―文献名―
Andrew Bazemore, et al. More comprehensive care among family physician is associated with lower costs and fewer hospitalizations. Annals of family medicine. 2015; 3(13):p.206-213.

―要約―
【目的】
 包括性は、プライマリ・ケアの5つのコアな要素のうちの1つとして評価されているが、包括性とアウトカムとの関係はまだわかっていない。我々は、家庭医の診療における包括性を構成する要素と、医療費との関連を調査した。

【方法】
 患者の診療に従事している家庭医のサンプルと、彼らが診療したメディケア受給者全員分を含む、2011年以降のメディケア・パートA、パートBの請求書、そしてサンプルの家庭医のうち2007年から2011年までの間に専門医更新を申請した医師から得られたデータを統合した。包括性の測定のため、自記式調査票を作成し、専門医更新時に提出必須とした。またメディケアのBerenson-Eggers Type of Service(BETOS)からも指標を作り、比較した。その後、2つの包括性指標と入院、パートB単独、パートAとBの合計の医療費の関係を調査した。

【結果】
 サンプルとした家庭医数は3,652人で、メディケアの受給者555,165人のうちの大部分の診療を担っていた。そのうち、2007年から2011年の間に専門医更新を行ったのは1,133人であり、185,044人の診療にあたっていた。BETOSと自己評価による包括性は中等度の相関(0.30)を示した。受給者と家庭医の特性を調整すると、包括性はメディケア・パートAとパートBの合計およびパートB単独のコスト削減と関連していた。しかし入院との関連はみられなかった。医療費の支払いとの関連はBETOSのほうが自己評価による包括性よりも強かった。BETOSが高いほど、入院の可能性は低くなった。

【結論】
 家庭医のケアの包括性(特に請求書に記載される項目から測定した包括性)が増すと、メディケアの医療費、入院は減少した。プライマリ・ケアの包括性へ報酬を与えることや、診療方針とすることが、費用曲線を変化させうる。

【開催日】
 2015年11月18日(水)

危機におけるリーダーの危うい姿と望ましい姿

―文献名―
ASTDグローバルネットワークジャパン リーダーシップ開発委員会「2011年度 ASTDグローバルネットワーク・ジャパン リーダーシップ開発委員会報告」2012年3月16日
 *ASTD:American Society for Training & Developmentという非営利団体の略称。主に人材開発や組織開発の分野でカンファレンスやセミナーを
      行っている団体。

―この文献を選んだ背景―
 診療所経営で日々様々な問題を経験し対処・対応しているが、その問題が危機的状況となると違うリーダーシップが自然と発動される感覚があった。先の震災でも話題になった「危機のリーダーシップ」について学習・省察しようと調べてみたところ、この文献に出会うことが出来たので共有する。

―要約―
【作成経緯】
 ASTDの日本支部のリーダーシップ開発委員会で、2011年7月から2012年2月まで10回の議論を行い、企業組織の内部に起因する“危機”とその対処における“あるべきリーダーシップ”に着目し、組織の危機対応のプロセスを①迫りくる危機、②危機への対処、③体質の転換の3つのフェーズに区切り、各フェーズでのリーダーシップ(トップ、ミドル、社員に求められるフォローワーシップ)の仮説を立て、インタビューや文献調査によるモデル化を行った。

【資料要約】
●フェーズ①「迫りくる危機」:危機は顕在化していないが、リスクが存在する局面
  ■組織の状況
   ◇ 杜撰で不透明な管理体制、不正や問題に対する感度の低さ、世間と組織の倫理観のズレ、現状追認の意識、組織防衛を優先
  ■リーダーの意識・行動の描写
   ◇ トップ:緩い現状認識、重んじる判断軸のズレ、自らの地位への執着
   ◇ ミドル:当事者意識の欠如

  ■望ましい意識・行動
   ◇ トップ・ミドル共通:
    ・信頼関係の構築、問題解決への執着、鋭い情報収集アンテナ、失敗経験を生かす、厳しい現状認識から逃げない姿勢(不都合な情報・
     事態に向き合う、丹念な情報収集)、価値基準の明示(長期的な組織の発展を重んじる、顧客・社会の立場で考える)
   ◇ トップに求められること:
    ・理念・危機対応方針の共有、危機対応への覚悟、私利私欲の排除
   ◇ ミドルに求められること:
    ・社内の連帯作り、現場での危機対応シナリオ構築、危機対応への覚悟
   ◇ 現場に求められること:
    ・現場の生の声を上げる
  ■望ましい組織体制・文化のあり方
   ◇ 組織全体に求められること:
    ・風通しの良い組織作り、危機の想定の具体策、危機対応シナリオ構築、危機対応に関する社内リソース構築、危機対応に関する
社外リソース活用
   ◇ トップに求められること:
    ・適切な人材登用

●フェーズ②「危機への対処」:危機が顕在化し、危機への対処処置を行っている局面
  ■組織の状況
   ◇ 危機への無関心・楽観、危機発生直後にパニック発生、不安・不信の高まり、情報錯綜・隠蔽、外部からの関心の高まり、
     司令塔不在による混乱、外部からの批判・糾弾、組織内部の疲弊、社会的制裁
  ■リーダーの意識・行動の描写
   ◇責任回避、判断回避、外部の権威への依存、多方面への受身の対処、脅威による疲弊

  ■望ましい意識・行動
   ◇ トップ・ミドル共通:
    ・的確でスピーディーな情報収集、的確な情報発信、事態収拾の徹底
   ◇ トップに求められること:
    ・価値観の明示と実践、正しい現状認識、適切な情報コントロール、積極的な内部コミュニケーション、社内のモチベーション維持への配慮、
     覚悟の明示、真摯な対応姿勢、ポジティブな思考と迅速な行動
   ◇ ミドルに求められること:
    ・方向性の明示、オープンな情報共有・的確な状況把握、主体的な行動、危機対応に集中
   ◇ 現場に求められること:
    ・事実に基づく現場の状況報告、即時最善の行動
  ■望ましい組織体制・文化のあり方
   ◇ 組織全体に求められること:
    ・危機対処組織の立ち上げ

●フェーズ③「体質の転換」:危機をバネに新生を目指している局面
  ■組織の状況
   ◇ 経営破綻への不安、上層部への批判、原因追究の動き、事態収拾の兆し、組織改革への機運、引責者・退職者の出現、組織の主体的な
     情報発信・危機的状況の沈静化、現場の主体性回復、再建への機運、新体制・ルールの構築、再生に向けた価値の再定義、新体制での方針・
基準策定、問題解決への取り組み、再発防止への取り組み
  ■リーダーの意識・行動の描写
   ◇ 旧リーダーの機能不全、新たなリーダーの出現、事業・組織体制の改革、企業価値・基準の新たな定義、信頼回復に向けたコミュニ
     ケーション、リーダーとしての覚悟と実践、大胆な改革・ビジョンの提示

  ■望ましい意識・行動
   ◇ トップに求められること:
    ・過去との決別・逃げない覚悟、新たな企業価値観の追及と明示、根本原因の解決、強いエネルギーと熱意、期限かつ誠実な行動、
ポジティブマインドを促す、部下への感謝、社外へのメッセージ発信、情報開示の徹底、着実な再生への取り組み、経営陣の信頼関係構築
   ◇ ミドルに求められること:
    ・風土改革の主導・実践、再生への熱意、方針を現場に落とす、現場のチーム作り、誠実な行動、体質転換への問題把握、
     有能な社員の引き留め
   ◇ 現場に求められること:
    ・現場管理の徹底、確実な業務運営、再生への建設的な関与、キャリアの再考
  ■望ましい組織体制・文化のあり方
   ◇ 組織全体に求められること:
    ・オープンで多様性を活かすしくみづくり、新たな企業文化構築への取り組み

―考察とディスカッション―
 危機を3つのフェーズに分け、在りがちな組織の現状やリーダーの行動の描写は反面教師になった。また望ましい意識・行動のリストは自分が行えていること・行えていないことのチェックリストにもなり、自然発生的な危機のリーダーシップでは不足する部分(意識しないと振る舞えないリーダーシップ)を補う情報となった。
 またリーダーのみならず、ミドル(HCFMならサイト長、診療所ならフェロー)の役割の重要性も認識できた。当事者意識を持ってリーダーと積極的にコミュニケーションを行い、現場を指揮するミドルの存在が危機対応には欠かせないと改めて実感した。
 また危機のときほど事実確認が濁り、組織のコントロールが難しくなる実感を持っている。自分なりには先入観や希望的観測を排し、冷静に「事実に基づくこと」情報管理と細かな情報発信を重視している。また組織コントロールを握るためにも、ギアをあげて巻き込むと同時に穏やかに落ち着いて振る舞うという、スピード感と安定感のバランスにも工夫している。
 危機を等身大に扱いどのようなパースペクティブで扱うのかのリーダーシップを鍛えていきたい。
皆さんが、この資料を読んで新たに学んだことは何ですか?
皆さんが、危機のリーダーシップで大切にした(い)ことは何ですか?

【開催日】
 2015年11月18日(水)

DSMの功罪:操作的診断は正しいのか

―文献名―
アラン・V・ホーウィッツ著.それは「うつ」ではない どんな悲しみも「うつ」にされてしまう理由
(原著名:The Loss of Sadness How Psychiatry Transformed Normal Sorrow Into Depressive Disorder).2011年 阪急コミュニケーションズ

―この文献を選んだ背景―
アリセプトの売り上げと認知症患者数の比例、新型うつ病と休職など精神疾患の診断criteriaは時に、社会問題まで発展することがある。私たち家庭医はプライマリケアを担うため、精神疾患と関わることが多いが、大局的に見た精神科業界の流れ、大きな位置付けをしめているDSMについて時に、批判的な視点をもっておくことも必要である。このような事を改めて考える必要を感じ、上記書籍を読んでみた。

―要約―
第一章:うつの概念
1960-1970年代に、同じ患者、同じ症状でも精神科医によって診断にバラツキがあることが問題となり、DSM作成チームは,1980年代から各疾患の明確な定義を確立するために、症状リストを提示することになった。

 DSM-5は、うつ病の症状を9つ挙げ、それを一定数以上満たせばうつ病の診断基準を満たすとしています。うつ病の症状については、次のようになっています。
佐藤先生図
これらのうち、
 ・5つ以上が2週間以上続くこと
 ・1か2のどちらかは必ず認めること
 ・苦痛を感じている事、生活に支障を来していることを満たすと「抑うつエピソード」であると判断され、更に他の疾患を除外している事
  (例えばお薬で誘発されたうつ状態など)
を満たすと、うつ病の診断基準を満たすこととなります。

第二章:正常な悲哀
 正常な悲哀は一時的なものであるとは限らない。夫婦間のごたごた、ストレスの多い仕事、長期にわたる貧困、慢性病などが背景にあれば悲哀も長時間つづく。
 乳幼児は主たる養育者から引き離されると、泣くなど特有の悲哀反応を示す。親密な関係の喪失に対して社会化以前の乳幼児が示す悲哀反応は、人の生得的な本性の一部であり正常な反応と考える。
進化で獲得したメカニズムだとしたら、悲哀は何のためにあるのか?
 ①社会的支援が得られる:うつ反応が助けが必要なことを周囲の人々へ知らせ、社会的支援を引き出すSOSの叫びである。
            絆の喪失後に強い苦痛を伴う悲哀を経験することで、人々は絆の大切さを実感し、結束の維持に努めるようになる。
            遠い祖先の時代には、狩猟などで家族が離れ離れになることがあり、このような環境では、喪失による悲哀は
            社会的な絆を強め、維持する強い動機付けになった。
 ②地位喪失後に身を守る手段となる:敗北や服従という状況に対する適応的な反応として、身を守ることに役立つ。
 ③不毛な努力を断念させる:今までの目標をあきらめて、新しい目標にエネルギーを向けるのは困難な作業だが、今行っている活動を
             中断し、考え込むことで、この作業をよりうまく遂行できる。

第三章:理由の有無という指標-古代から19世紀までのうつの診断史
メランコリー:これといった理由がないのに抑鬱状態になった場合。理由に対して抑うつの度合いが激しい場合。
 問題が解決したのちも鬱がつづくような場合→病的なうつとされていた。症状だけではなかった。

第四章:20世紀のうつ
 1950年代、アメリカでは精神科の治療の中心は重度の患者を扱う州立病院から、比較的軽度な外来患者を扱う精神分析セラピーへシフトした。そのため以前からある重度の障害を定義した統計マニュアルは役立たなくなり、1952年、アメリカ精神医学会は、新マニュアルを作成した(DSM-Ⅰ)
 この反応においては、うつと自己評価の低下によって、不安が軽減され、多少なりとも緩和される。この反応は現在の状況が引き起こしたもので、患者にとっての何らかの喪失が引き金となることが多く、往々にして過去の行為に対する後悔や罪悪感を伴う。このようなケースでは、喪失の現実的な状況だけでなく、喪失したものに対する患者の愛憎入り混じった感情の強さによって反応の強さが変わってくる。抑うつ反応は「反応性うつ」と同義であり、精神病性反応とは区別すべきものである。この区別で考慮すべきポイントは1)患者の生活歴、特に気分が激しく変化したか、人格構造、引き金となるような環境要因があったか。2)悪性の症状(自分は病気ではないかと異常に心配する、興奮、特に身体的な妄想、幻覚、激しい罪悪感、ひどい不眠症、自殺願望、極端な精神運動性の遅滞、深刻な思考の遅滞、麻痺)がないことである。
 うつ状態を意識化に潜む不安から自分を守る手段とみなすだけではなく、罪悪感と愛憎が維持混じる感情がうつの中核にあるという精神分析派の説を採用している。1967年、DSM-Ⅱは「抑うつ神経症」に簡潔な定義を与えている。
 この疾患は、内的な葛藤または愛する対象や大切にしていた所有物を失うなどの出来事による、過剰な抑うつ反応として現れる。これは「退行期うつ病」「躁鬱病」とは区別されるべき疾患である。反応性うつ、または抑うつ反応はこのカテゴリーに含まれる。
この定義は、精神科医がうつの諸症状を知っていることを前提として、その諸症状は列挙せず、病因論を土台としている。
 1970年以降、うつは一つの病気か複数のタイプに分類するべきか調べるために、症状に対する因子分析を統計学的な手法として採用するようになった。また1972年、正確な定義なしに様々な分類が行われる限り、精神医学が科学的な学問分野として認められることは望めないと考える研究チームが現れた→異なる研究グループの結果を比較し、データを蓄積し、統一的な基準を設置することを目指したファイナー基準が作られた。
 診断の信頼性はあがったが、妥当性(診断の有効性)については不確かであった。ではなぜ症状優位の基準へ変化したのか?
 ①1980年代、フロイト派の影響力は低下し、ざまざまな理論の精神医学派が乱立。病因については論じないDSM-Ⅲは多少な考えをもつ臨床家に
  受け入れられた
 ②反精神医学の運動(診断の不一致、幻聴ダミーの入院)が盛りあがり、精神医学の信頼性の回復の必要性
 ③精神疾患に医療保険が適応されるためには、確固とした根拠が必要で、診断基準が特定の病気のみを保険適用とするというものでなければ
  ならない。

第五章:DSM—Ⅳの定義するうつ

第六章:DSMの基準が社会に及ぼした影響
 地域に対しての疫学調査で、臨床家が得るのに相当する診断を得ることが体型的な質問票を使えば可能であるという前提で、一般住民に対して調査が行われた。精神科受診する母集団と有病率が違うという点でも無謀であった。

第七章:悲哀の監視

第八章:DSMとうつの生物学的研究

第九章:抗うつ薬による薬物療法の普及
 費用対効果を重視するマネジドケアは、心理療法より薬物療法を優先する。またマネジドケアは、心理療法よりもSSRIに寛大に医療給付を行う内容になっている。また1997年 FDAが一般向けメディアを通じて直接消費者へ向けた医薬品広告(DTC広告)を認可したためSSRIの使用は拡大。FDAは医薬品広告では、病気の治療に用いるものであることを明確にし、日常的な苦痛を軽減する効用をうたってはならないと定めている。この場合、DSMの定義は、一般人にもわかりやすい病気の定義を示すのにうってつけであった。DSMの定義を採用すれば、ありふれた症状が病気の兆候とされるため人々は合法的に処方箋を手に入れられるし、製薬会社は合法的に一般人向けに製品を宣伝できるのだ。また製薬会社がDTCに投ずる予算は年間20億ドルにもなる。しかし製薬業界は患者と家族の支援団体に多額の寄付を行ったり、うつ病の臨床研究にも巨額な助成金を提供。また全米うつ啓発デーなど教育キャンペーンを大々的に展開し、うつのスクリー二ングを無料で行う自動音声電話やホームページを開設している。https://www.youtube.com/watch?v=pB6_6DlXFoQ(ジェイゾロフト1分間広告例)
→著者の意見:正常な悲哀までうつと診断し、SSRIを処方しているのは行き過ぎでは?
 反対派:出産に伴う正常な陣痛をなくすために麻酔薬を使う無痛分娩に反対する人はほとんどいない。同様にSSRIの服用で感情を制御でき、
     自信をもつことができ、精神的な苦痛が和らぐなら病気でなくても処方すべきでは?
 その反対派:孤独で耐え難い悲哀の場に一定期間とどまることが人の自然な姿であり、その悲哀の場につきものの苦痛を薬で
       軽減してもいいのかという思い。

第十章:社会科学の役割

第十一章:結び
 精神科臨床医によって、症状に基づく基準のメリットは、保険に適用されない可能性のある幅広い患者の治療費が、保険会社から償還されることである。保険会社は疾患の治療費は払うが、生活上の悩みには保険は適応されない。またDSMの診断基準で恩恵をうける最も堅調な利害関係者は、正常な悲哀がうつ病と診断されることで巨額の利益をえる製薬会社であろう。ただ最後に、悲哀を病気と定義することで、恩恵をうけるものとして、苦痛を感じている人々なのかもしれない。心理的な苦痛を治療可能な病気と解釈すれば、抵抗なく医師へ助けを求めることができ、つらい感情をコントロールできる。また病気の犠牲者という自己定義をすれば、自分の抱える問題を社会的に容認される形で説明でき、そうした問題に対する責任をある程度免れることができるため、人々はそうした自己定義を進んで受け入れることもあるかもしれない。

―考察とディスカッション―
 各国のコンテクストの中で、DSMのようなスタンダートが作られたという流れは興味深かった。精神科では上記の内容はもしかしたら常識で、みなさん注意して使っているのかもしれないが、プライマリケアで他分野(だいたいはそう)から輸入して使用する際には、その分野のコンテクストなども把握しないと、製薬会社中心の情報では注意が必要だと改めて認識をし直した( DSMの定義の変遷など興味深い)。
  1) DSMをどのように普段の臨床で位置付けていましたか?
  2) 正常な深い悲哀は見直されるべき意義があるのか、それとも不都合なものとして私たちの生活から排除されるべきなのか
  3) DTC(Direct to consumer)広告について、GERD、リリカ、アリセプトなど患者さんが外来で話をする際に、
    どのように対応をしているか、何か気をつけている点など

【開催日】
 2015年11月4日(水)