小児の急性中耳炎に対する抗生剤は1〜2回/日で良いのか?

―文献名―
Thanaviratananich, S., Laopaiboon, M., & Vatanasapt, P. Once or twice daily versus three times daily amoxicillin with or without clavulanate for the treatment of acute otitis media. The Cochrane Library.2013.

―要約―
【Introduction】
 急性中耳炎は小児の良くある問題である。CVAの有無に関わらずAMPCは頻繁に選択される治療として処方される。従来の推奨は1日に3回あるいは4回である。しかしながら、今日1日に1回あるいは2回投与がなされている。
 もし、1日1回あるいは2回投与が3回あるいは4回投与と同等の効果であれば、便利でコンプライアンスを向上するかもしれない。

【Method】
 5つのランダム化比較試験のメタ分析。

 ●参加者:12歳以下の急性中耳炎患者。急性中耳炎は急性の耳痛と、鼓膜穿刺あるいはティンパノグラムのB型C型で診断されたもの。
     (B型は中耳のfluidを示唆し、C型は中耳内の圧力が大気圧より低い事を示唆している)
 ●介入のタイプ:CVAの有無に関わらずAMPC1〜2回/日と3〜4回/日と比較する。
 ●Primary outcomes:データがある場合、耳痛の改善・解熱・細菌学的治癒による、抗生剤終了(7〜15日目)の臨床的治療率。
 ●Secondary outcomes:耳痛の改善と解熱による臨床的治癒率。再発性中耳炎のないAOM治療後患者のみにおいて評価された、
            治癒後(1〜3ヶ月後)、ティンパノメトリーによる中耳浸出液の改善。AOMの合併症(再発、乳様突起炎)。
            投薬への有害事象。

 2人の著者は独立してそれぞれの試験から治療アウトカムに関するデータを抽出し、選択バイアス、施行バイアス、検出バイアス、症例減少バイアス、報告バイアス、及びその他のバイアスについて評価した。
 バイアスの低リスク・高リスク・不確実なリスクとして、質の格付けを定義した。その結果を95%信頼区間のRRとしてまとめた。

【Main Results】
 1601人の小児を含む5つの研究が含まれた。

 治療終了時(RR1.03,95%信頼区間 0.99〜1.07) Fig.3

貴島先生図1
  Figure 3. Forest plot of comparison: Clinical cure rate at the end of therapy.

 治療中   (RR 1.06, 95%信頼区間 0.85 to 1.33) Fig.4

貴島先生図2
  Figure 4. Forest plot of comparison: Clinical cure rate during therapy.

 フォローアップ期間 (1〜3ヶ月)(RR 1.02, 95%信頼区間 0.95 to 1.09) Fig.5

貴島先生図3
  Figure 5. Forest plot of comparison: Clinical cure at post-treatment (one to three months).

 再発性中耳炎(RR 1.21, 95%信頼区間 0.52 to 2.81)Fig.6

貴島先生図4
  Figure 6. Forest plot of comparison: AOM complications: Recurrent AOM after completion of therapy.

 AMPCのみ、またはAMPC/CVAでサブグループ解析を別々に行った結果、すべての重要なアウトカムにおいて1日1〜2回と1日3回の群で差がなかった。
 また、内服遵守率(RR 1.04, 95%信頼区間 0.98 to 1.10)、下痢や皮膚障害などの全有害事象 (RR 0.92, 95%信頼区間 0.52 to 1.63)と有意差はなかった。(経口抗生物質の1日1回または2回の投与は、1日3回の投与より高い遵守率を有する報告がある(Kardas 2007; Pechere 2007))

【著者らの結論】
 本レビューでは、CVAの有無に関わらずAMPCの1日1回or2回の用量を使用した結果は、AOMの治療で3回投与の結果に匹敵する事が示された。これらの結果は、両方の投薬が同じ有効性を有すること、または複雑でないAOMが自然治癒できることを示し得る。

【開催日】
 2017年8月23日(水)

自閉症スペクトラム障害 プライマリ・ケアでの原則

―文献名―
Kristian E. Sanchack, Craig A. Thomas. Autism Spectrum Disorder: Primary Care Principles. AFP, December 15, 2016

―要約―
【概要】
 自閉症スペクトラム障害(ASD)は、コミュニケーションの難しさと、反復行動、興味、活動で特徴づけられる障害である。早期の介入により、認知能力、言語、適応能力を改善させられるというエビデンスが増えており、そのため早期の診断が重要となっている。専門家は、18ヶ月および24ヶ月の幼児の訪問時にスクリーニングツールの使用を推奨している。薬物療法は、不適応行動や精神状態の問題に対して補助的に使用されるが、ASDで単一の有効な薬はない。予後は診断の重症度と知的障害の有無に大きく影響される。より早期に、より集中的な行動介入を受け、薬物治療は少ない子供が最も良い転機をたどる。

【疫学】
 ASDの遺伝的影響は約50%。
 環境因子の影響も受ける。出生前の母体の年齢や代謝性疾患(糖尿病、高血圧、肥満など)、バルプロ酸、母体感染、大気汚染、農薬暴露、低出生体重児、早産。

【臨床症状】
 ASDの診断上の特徴には、社会的コミュニケーションの欠損と限られた反復パターン(行動、関心、活動)が認められる。ASDの診断基準と重症度レベルはTable 1,2参照。いくつかの徴候・症状は月齢6~12ヶ月で出現している。多くのケースでは、信頼性のある診断は24ヶ月で可能となる。
 共同注意(興味を共有するために自分の注意を調整する能力) 月齢12~14ヶ月までに始まる。15ヶ月までに共同注意を示さない場合はASDの評価をするべき。子供が名前を呼ばれても反応しないので、「難聴じゃないか」と心配して来院することがある。
 言語の遅れ 18~24ヶ月で、指さしや身振りのない言語遅延は、ASDと表現のある言語遅延の鑑別に役立つ。
 限られた関心領域、反復的な行動 ASDの診断上必須の症状。小さい頃には目立たないこともある。ルーチンの行動パターンを変えるのは大変。常同運動(手を振る、つま先立ち歩行、目の近くで指をはじくなど)が見られることも。

【スクリーニング】
 スクリーニングツールは、精査が必要な子供を特定するのに役立つ。長期的なアウトカムに基づいた3歳以下の小児におけるASDスクリーニングの有効性を評価するRCTはない。定期的な発達スクリーニングは、9ヶ月、18ヶ月、24ヶ月または30ヶ月児で提案される。
 幼児自閉症修正チェックリスト(Modified Checklist for Autism in Toddlers;M-CHAT)は、最も広く使用されているスクリーニングツールだが、単独で使用した場合は偽陽性率が高い。ツールの作者は、その後にフォローアップ改訂版幼児自閉症修正チェックリスト(Modified Checklist for Autism in Toddlers-Revised, with Follow-Up;M-CHAT-R/F)を公開した。無料ダウンロード可能(http://mchatscreen.com/wp-content/uploads/2015/09/M-CHAT-R_F.pdf

【紹介と診断】
 ASDの評価には、包括的なアセスメントが含まれていることが望ましい。ASDを確実に診断し、ASDを模倣する状態を除外し、併存疾患を特定し、子供のレベルを決定することを目指す。
 学際的なチームへの紹介が良いが、該当するチームがない場合は専門知識をもつ個々の専門医(児童心理学者、発達小児科医)が良い。
 診断はDSM-5のASDの診断基準に基づく。

【治療】
●行動療法
 早期集中的行動介入:就学前~低学年児童 望ましい行動を強化し、スキルの一般化を促し、望ましくない行動を減らすことによって、新しいスキルを教えることを目指す。
 ・認知行動療法
 ・Targeted play
 ・ソーシャルスキルトレーニング
 ・ペイシャントトレーニング

●薬物療法
 ASD自体に効果のある薬物はない。不安障害、ADHD、睡眠障害などの治療に。頭痛、副鼻腔炎、胃腸障害はASDに似た症状が出たり、ASDの行動症状を悪化させることもある。

【開催日】
 2017年8月16日(水)

うつ、不安、行動医学的問題に対応する家庭医に役立つ6つの5-minuteツール

―文献名―
MICHELLE D. SHERMAN, et al. MANAGING BEHAVIORAL HEALTH ISSUES IN PRIMARY CARE: 6 FIVE-MINUTE TOOLS. FAMILY PRACTICE MANAGEMENT. 2017; 24(2): 30-35.

―要約―
※タイトルのBehavioral healthの意味については下記リンク参照
http://www.yuzuwords.com/2013/09/05/behavioral-health/

 家庭医の診る予約患者の3/4は精神的・行動医学的問題を抱えている。そして彼らの多くは精神科専門医ではなくプライマリ・ケア医に助けを求める。患者の精神状態を良好に保つことは、USのTop15の死因となる病気を予防し診断し治療することに寄与する。薬物治療が行われることが多いが、重症うつの場合を除いて効果はcontroversyであり、患者側も薬を望まないことがある。心理士のような人と協同することが増えているが、家庭医も対応のためのツールを知っておくべきである。これらのつーるによって患者が抱える苦悩やストレス源がすぐになくなるわけではないが、何かしらのよい影響はある。6つのうち、患者にあったものを選んで行うと良い。

松島先生図1

1. 患者が社会的サポートに頼れるよう勇気づける
 まずはsocial supportにつなげることが大事。「これまでの人生で、◯○(今回困っていること)について対応するのを助けてくれた人は誰かいましたか?」と聞いてみる。social supportには、家族、友人、サポートグループ、宗教グループ、12-step program(依存症治療のための自助グループなど)が含まれる。極度に孤立した人では効果的ではないかもしれないが、ネットワークを広げようとする気持ちがあるようなら、診察中に一緒にOn-lineで検索し、ボランティアの機会やソーシャルグループ、なんとか教室、faith-based resourcesなどにつなげると良い。

2. 診察の機会を増やす
 心理士につながらないような人では、家庭医が頻繁に会うことがサポートになる。しばしば家庭医は自分のできることは少ないと思いがちだが、もしかしたら患者にとっては苦難を共有したり、支持的に傾聴をしたりしてくれる唯一の存在かもしれない。頻回に会うことで、信頼や尊敬、安心感がdoctor-patient relationshipの中で強まり、将来的により強い介入(薬剤や紹介など)を受け入れやすくなるかもしれない。

3. 患者が感謝の気持ちに焦点を当てるよう支持する
 大小に限らず、人生のポジティブなイベントに焦点を当てることは、容易でとても有効な手段である。ある専門科は、「感謝の日記」をつけることを推奨している。週に1回でもいいと言っている人もいる。頻度に関わらず、感謝の気持ちを書いたり記録したりすることは、一種の説明責任となったり振り返りの機会を作ることになることから有用であると考えられる。小さなことでもポジティブな出来事(知らない人からの笑顔、子どもの笑い声、美味しいご飯など)から振り返りを始めるとよい。その記録を定期的に受け取ることで、患者の価値観やゴールがわかる。それをもとに動機づけ面接を使って次の行動変容につなげることができる。

4. 呼吸法やマインドフルネスを教える
 4秒呼吸法:4秒吸って、4秒止めて、4秒吐いて、4秒止める。寝室で行うと不眠症にも効果的。
マインドフルネス・祈り・瞑想:「目を閉じて。4回大きく息を吸いましょう。自分の呼吸に耳を傾けてください。穏やかで安心できる場所にいると想像して下さい。どんな気持ちでしょうか」
 1回きりではなく、続けられているかフォローもしましょう。

5. 運動を処方する
 定期的な運動の利益は多くの報告がある。難しさを感じる患者に対しては、オープンに彼らの懸念を聞き、現実的で適切で到達可能な運動目標をたてる。例えば、ジムの会員費は高いのでウォーキングや自転車、家での静止運動、ヨガのDVDといった代替案を出す。処方として記載することで重みが増す。これも外来のたびに確認する。できたことを賞賛し新たな壁を取り払う。

6. ルーチン化やスケジューリングで、行動を促す
 うつ病ではしばしば、抑うつ→無気力→好ましい行動や人々からの回避→社会的孤立→抑うつといった悪循環(下図)に入ることがある。行動療法は回避や孤立を減らすアプローチである。医師はこのサイクルを患者に説明し、たとえ気が乗らなくても何らかの活動に参加することを推奨する。行動を起こす前と後の気分を記録しておき、あとで見直すのもよい。

松島先生図2

参加への抵抗
 多くの患者はこれらのツールに最初は抵抗感を示す。多くの医師は、「きっとよくなるから頑張りましょう」と反射的に告げるが、大事なのは両価性や障壁を予想し、敬意を払い、探索することである。動機づけ面接法を用いると変化への準備度が推測できる。他にもcofidence ruler(重要度-自信度モデルみたいなもの)がある。さらに学びたい人は下記参照。
 ■Encouraging Patients to Change Unhealthy Behaviors With Motivational Interviewing, FPM, May/June 2011,
  http://www.aafp.org/fpm/2011/0500/p21.html

より強力な治療への準備
 多くの患者はこの6つのツールで十分に改善するが、重度のストレスやトラウマ、薬物依存、パーソナリティ障害、家族の問題(虐待など)をもつ場合は専門科への紹介が必要となる。またそれだけでなく、ピアサポートや12-step program、カップル/家族セラピー、オンライン教室、アプリなど多様なオプションを把握しておくと役立つだろう。そのための5つのTipsがある。

 1. 観察した特定の出来事にフォーカスをあてる。ただしラベリングや精神医学的診断は避ける
 「仕事を失ってから食欲がおちて眠れないのですね」
 2. 感情的反応を整えて共感・心配を示す
 「お母さんが亡くなり、怒りやとまどい、悲しみ、喪失感などの強い感情を持つのはもっともです。
  あなたはお母さんととても仲が良かったですから、本当に悲しく辛いお気持ちだろうと思います。」
 3. メンタルヘルスが身体症状に影響を与えることを説明する
 「あなたのストレスが頭痛(吐き気、背部痛などなど)をより強くしていると思います。あなたはどう思われますか?」
 4. 医師患者関係やチームアプローチの力を協調する
 「一人で乗り切る必要はありません。私もサポートしたいと思っています」
 5. 追加の治療は役に立つという希望をじわじわ伝える
 「あなたと同じような方がカウンセラーと話してよくなっていましたよ。あなたもいかがですか?」

【開催日】
 2017年8月16日(水)

A Placebo-Controlled Trial of Antibiotics for Smaller Skin Abscesses.

―文献名―
Daum RS. A Placebo-Controlled Trial of Antibiotics for Smaller Skin Abscesses. N Engl J Med. 2017 Jun 29; 376(26): 2545-2555.

―要約―
Introduction:
 皮下膿瘍はcommonな問題であり、起因菌としてMRSAを含むS.aureusが主であることがわかっているが、その治療方法については確立されたものがない。先行研究では、5cm以上の膿瘍もしくは蜂窩織炎に対してCLDMとSTでの比較試験を行なったが、両者に差はみられなかった。しかしプラセボとの比較はなされていないことと、より小さな膿瘍での評価はされていなかったため、今回の研究に至った。

Method:
 他施設共同の前向き二重盲検試験
 外来を受診した5cm以下の皮膚膿瘍の患者を対象
 切開排膿後にランダムにCLDM群、ST群、プラセボ群に振り分ける
 (CLDM150mg 6T3x, ST 4T2x, プラセボ 10日間)
 治療終了後7-10日目のtest-of-cure visitでの臨床的治癒の有無を評価

Results:
佐野先生図1

佐野先生図2

佐野先生図3

佐野先生図4

 CLDM群、ST群はプラセボ群と比較して治癒率が高かった。(ST群とプラセボ群とのITT解析では有意差は生じなかったが)
CLDM群とST群との比較では差は生じなかった。
 培養結果で分けると、S.aureusが検出された群(MRSA、MSSAいずれも)でCLDM群、ST群とプラセボ群とで差を生じた。ただしCLDM群とST 群とでは差を生じなかった。S.aureusが検出されなかった群では3者での差は生じなかった。
 1ヶ月後のフォローではCLDM群が最も新規(再発)感染の頻度が低かったが、有害事象も最も多いという結果であった。

Discussion:
 本研究ではCLDMとSTの2剤を用いているが、他にも単純性皮下膿瘍の適応のある薬剤(例えばDOXYもMRSAへの効果が認められている)の検討はされていない。
 また、患者の治癒率は高かったため、抗生剤によって得られたメリットは小さいかもしれない。
 患者のフォローアップ期間は1ヶ月であり、それ以降の再発については評価できていない。治療終了から7-10日の時点で治療失敗となっていた群は1ヶ月後のフォローから省いている、といった観察期間に起因する限界もみられた。

【開催日】
 2017年8月4日(水)

White-coat hypertension is a risk factor for cardiovascular diseases and total mortality

―文献名―
Huang, Yuli, et al. “White-coat hypertension is a risk factor for cardiovascular diseases and total mortality.” Journal of hypertension 35.4 (2017): 677.

―要約―
【背景】
白衣高血圧が本当に患者にとって無害かは、まだまだ議論の余地がある。

【方法】
 白衣高血圧と、心血管疾患および全死亡のリスクとの関連性を、ベースラインの降圧治療の状況によって階層化して評価した。データベース(PubMed, EMBASE, CINAHL Plus, Scopus, and Google Scholar)から、白衣高血圧に関連する心血管疾患および全死亡に関する前向き試験を検索した。主要アウトカムは降圧治療の状況によって層別化(未治療集団、降圧治療を受けている集団、混合集団)された白衣高血圧と心血管疾患および全死亡のリスクとした。正常血圧との相対リスクを計算した。

【結果】
 最終的に14の研究(うち8つはベースラインで降圧治療が無いもの、4つは降圧治療が行われているもの、6つは両方が混ざっているもの)が解析対象となった。診療所での収縮期血圧、拡張期血圧は白衣高血圧群が正常血圧群より優位に血圧が高かったが、診療所外の収縮期血圧は白衣高血圧群の方が血圧は有意に高かったもののその差は診療所血圧ほど大きくはなく、診療所外の拡張期血圧は白衣高血圧群と正常血圧群とで有意差はなかった。
 高血圧未治療集団において、白衣高血圧群は正常血圧群より心血管疾患のリスクが38%、全死亡のリスクが20%それぞれ増していた。混合集団においても白衣高血圧群でそれぞれ19%、50%リスクが高かった。しかし降圧治療を受けている集団においては、心血管疾患、全死亡とも白衣高血圧群と正常血圧群とでリスクに有意差がなかった。

川合先生図1

川合先生図2
FIG.6 Forest plot of the comparison: white-coat hypertension vs. normotension and outcome: cardiovascular disease

川合先生図3
FIG.7 Forest plot of the comparison: white-coat hypertension vs. normotension and outcome: all-cause mortality.  (RR 1.20, 95% CI 1.03–1.40)

【開催日】
 2017年8月2日(水)

めまい体操の効果

―文献名―
Adam W. A. Geraghty, PhD, et al. Internet based vestibular rehabilitations for older adults with chronic dizziness: a randomized controlled trial in primary care. Annals of family medicine. 2017; vol. 15, no. 3.

―要約―
Introduction:
 ●めまいは、頻度の高い症状で、アメリカで受診するのは年間およそ700万件。
 ●プライマリ・ケアにおいて、めまいのほとんどの原因はBPPVを含む前庭機能障害である。
 ●高齢者のめまいは、転倒、転倒への恐れ、不安、うつに関連し、運動障害やフレイルさの増大、自立した生活が失われるなどの結果につながる。
 ●放置されためまいは慢性化し、最近のプライマリ・ケアの研究では、症状の持続期間は5.5年間だった。
 ●薬物治療や外科的治療は限定された効果しかないが、めまい体操は前庭機能障害の患者に対して有効だというエビデンスがある。
  簡単な頭の運動をいくつか行うめまい体操によって、中枢神経の補完を促すとされ、研究では自分で行うめまい体操も効果的かもしれないと
  示唆されていた。
 ●インターネットを使う高齢者は増加しており、アメリカでの2013年の調べでは、65歳以上の高齢者の59%がインターネットを利用している。
 ●以上より、インターネット経由でめまい体操を提供することが効果的であると証明されれば、低コストのめまいの治療へのアクセスが増えるのでは
  ないかと考えた。

Method:
■Setting and Participants
 ●single-center, single-blind randomized controlled trial
 ●2013年9月〜2014年6月
 ●イギリス南部の54のプライマリ・ケア・クリニックの患者
 【inclusion criteria】
  ・過去2年間にめまいを主訴にクリニックへ受診しており、現在も頭を動かすとめまいが悪化する
  ・インターネットへのアクセスがある(メールアドレスも持っている)
  ・50歳以上
 【exclusion criteria】
  ・耳性以外のめまいの原因がある
  ・めまい体操をしてはいけない状態にある(頸椎症など)
  ・生命に危険がある状態、進行性の中枢神経疾患など重症な併存疾患がある
 ●対象者へ研究説明書を送り、興味がある人には研究チームへ返信してもらう
 ●電話でめまいの持続、頭位変換で悪化するかを確認。Epley法での治療歴がある患者は除外。

■Randomization and Interventions
 ●インターネットのソフトウェアで、2つのグループ(internet-basedめまい体操・グループとusual care・グループ)
  にランダムに割付
 【internet-basedめまい体操】
  ・Balance Retraining(https://balance.lifeguidehealth.org)
  ・めまいのメカニズムについての説明から始まり、6つのセッションがある
  ・1週間毎に新しいセッションを見られる
  ・個人の症状に基づいてめまい体操が処方される。
  ・体操は、頭を上下・左右に動かす運動(→exercise instruction参照)
  ・リラクゼーションや呼吸法、認知再構成など、認知行動療法の内容も毎週取り入れられている
 【usual care】
  ・制吐剤などの対症療法、教育用パンフレットなど

■Outcome measures
 ●primary outcomeは、6ヶ月後のVSS-SFスコア
 ●ベースライン、3ヶ月後、6ヶ月後に以下の3つの指標を測定
  ①VSS-SF(vertigo symptom scale-short form);めまいに関連する15の症状の頻度についてのスコア
   ・VSS-SF subscale score
   ・VSS-SF autonomic symptom subscale score
  ②DHI(dizziness handicap inventory):めまいによる身体的、感情的、機能的影響を測るスコア
  ③HADA(hospital anxiety and depression scale):不安やうつを測るスコア

■Statistical analysis
 ●Stata/SE version 13.1使用
 ●primary analysisではintention-to-treat解析、secondary per-protocol analysisでは治療アドヒアランスを考慮し、
  少なくとも1回以上セッションを完了した人を対象に解析した。

Results:
●Table1. Baseline characteristics
●Figure1. Patient flow through the trial
 ・介入群で脱落率が高い
●Table2. Primary and secondary outcome measures at 3 and 6 months
 ・多重代入解析を行った結果では、VSS-SFは3ヶ月後に有意な低下を示した(2.57points; 95%CI, 0.85 to 4.28, P=.003)が、
  6ヶ月後には有意な低下は示さなかった(1.86points; 95%CI, -0.59 to 4.32, P=.14)。
 ・per-protocol analysisでは介入群160人のうち99人が該当。Primary outcomeは3ヶ月後ではVSS-SFの有意な低下は見られなかった
  (1.27point; 95%CI, -0.31 to 2.85, P=.12)が、6ヶ月後には有意(2.11points; 95%CI, 0.23 to 3.99, P=.03)となった。
●Table.3 post hoc exploratory analysis of intervention effectiveness by age

Discussion:
●今回の知見は、以前のbooklet-basedめまい体操、face-to-faceめまい体操の結果に匹敵する。
●今回の研究の限界
 ・研究に招待された患者のうち10%以下の参加率
 ・介入群の脱落率が比較的高い。
 ・めまいの原因毎の分析ができていない
 ・有害事象が報告されなかった可能性がある

【開催日】
 2017年6月7日(水)

指示通りに呼吸を行うことが難しい気管支喘息患者に対するスペーサーの有効性

―文献名―
Cates CJ, Welsh EJ, Rowe BH. Holding chambers (spacers) versus nebulisers for beta-agonist treatment of acute asthma (Review). Cochrane Database of Systematic Reviews. 2013; 13(9)

―要約―
【背景】
 喘息発作におけるβ刺激薬吸入にはネブライザーが用いられることが多いが、スペーサー(”Holding chambers”または”spacers”)によるMDI吸入も同等の効果があるという意見もある。またネブライザーは電源や定期メンテナンスが必要だったり、地域で用いるにはより高価であったりする。

【目的】
 喘息発作時のβ刺激薬吸入における、ネブライザーと比較したスペーサーの効果を評価する。

【検索方法】
 the Cochrane Airways Group Trial Register and reference lists of articlesを検索した。詳細について著者らに連絡をとった。

【選択基準】
 喘息を有する成人と小児(2歳以上)に対しβ刺激薬吸入におけるスペーサーとネブライザーを比較したランダム化試験

【データ収集と評価】
 2人の評価者が独立して選択基準を適用し、データを除外し、バイアスのリスクを評価した。失われたデータは評価者によって獲得よび見積もりされた。結果は95%信頼区間にのっとって報告された。

【考察】
 39の研究における1897人の小児と729人の成人を組み入れた。33本の研究は救急救命室と地域のそれに相当する場所で、6本の研究は喘息発作の入院患者で行われた(207人の小児と28人の成人)。β刺激薬の吸入方法は入院率に明らかな影響を及ぼさなかった。スペーサーとネブライザーの入院に対するリスク比(RR)は成人で0.94 (95% CI 0.61 to 1.43)、小児は0.71 (95% CI 0.47 to 1.08, moderate quality evidence)だった。スペーサーを用いた小児において、救急救命室の滞在時間はネブライザーで103分、スペーサーで33分短縮し著明な減少を認めた(95% CI -43 to -24 minutes, moderate quality evidence)。成人では滞在時間、ピークフローと努力肺活量に差を認めなかった。脈拍(mean difference -5% baseline 、95% CI -8% to -2%, moderate quality evidence)や振戦発生率 (RR 0.64; 95% CI 0.44 to 0.95, moderate quality evidence)は小児のスペーサー群で低かった。

【著者の結論】
 成人でも小児でも、参加者の反応性に応じて臨床家が治療を繰り返したり増量したりする方法において、ネブライザー吸入はスペーサーによるMDI吸入に比較して著明な改善を認めなかった。小児の喘息発作ではスペーサーはネブライザーに比べ利点があるかもしれない。しかし本研究では致死的な喘息発作は除外したため、そういった患者に対して適応されてはならない。

佐治先生図①佐治先生図②佐治先生図③佐治先生図④
佐治先生図⑤

【開催日】
 2017年6月7日(水)

便秘 診断と治療の進歩

―文献名―
Arnold Wald, MD. Constipation Advances in Diagnosis and Treatment JAMA. 2016;315(2):185-191.

―要約―
Importance
 慢性特発性便秘(CIC)は米国で少なくとも年間800万人の受診があり、診断のための検査と下剤の処方、非処方下剤のために多額の支出が行われている。

Observations
 刺激性下剤と浸透圧下剤、新たな腸管分泌促進薬と末梢性μオピオイド受容体拮抗薬(後者は、オピオイド誘発性便秘(OIC)と治療に大きな進歩あり)についての有効性について強力なエビデンスが確立された。
 適切に使用されれば、sennaやbisacodylのような刺激性下剤は、長期間使用しても安全で効果的である。
 安価な下剤と他のメカニズムで働く新たな下剤との比較研究は不十分であり、強く望まれている。

Conclusions and Relevance
 CICとOICの治療選択は、費用と有効性に基づいて行われるべきである。
 現在利用可能な下剤に反応しない便秘は、排便障害の検査が行える経験豊富な施設でさらに評価する必要がある。
 近年CICの診断には大きな進歩はなかったが、過去5年間でCICの治療には次のような大きな重要な進展があった。
  ①CICのための新たな確立された下剤、分泌促進薬の出現
  ②オピオイド誘発性便秘の治療に対する新たなアプローチ
  ③従来の下剤に反応しない排便協調障害の診断

Method
 MEDLINE、EMBASE、Cochrane Reviews、AGA、ACG(米国胃腸科学会)、GRADEで検索し、21のpeer-reviewed studiesと12のmeta-analysisのreviewsからまとめた。
 Pathophysiology 便秘の原因としてBoxのようなものがある。

Clinical Presentation and Assessment
 患者の多くは、便秘の症状として「排便回数の少なさ」だけでなく「排便困難」も訴える。
 CICではお腹の張りや腹部不快を訴えるが、排便で改善する。
 他方、IBSでの便秘はお腹の張りや腹部不快感はより強く、排便ではあまり改善されない。
 突然の便通変化、血便、予期せぬ体重減少、大腸癌の家族歴などの大腸癌を示唆する警告症状に注意が必要である。
 この場合、大腸内視鏡検査が必要であり、血液検査としてはTSH、Ca、血糖をみるが、消化器内科学会は鉄欠乏性貧血の発見によって更なる検査を促すためにスクリーニングとしてCBCを推奨している。

Pharmacologic Agents for Constipation
尾崎先生図①

 現在米国で利用できる下剤には上記の4種類がある。(Table 1)
多くの下剤(膨張性、刺激性、浸透圧下剤)は処方なしで手に入り比較的安価であるが、新たな分泌性下剤は処方が必要で比較的高価である。(Table 2)
 Intestinal Secretogogues (腸管分泌促進薬)
 Lubiprostone (アミティーザ)や linaclotide(リンゼス)がある。
 一般の便秘薬は便秘には有効だが腹痛には効かなかった。linaclotide(リンゼス)は腹痛にも有効である。
 LubiprostoneはPGEの誘導体で小腸のapical chloride-2channel に働く。
 無作為化二重盲検プラセボ対照研究では、Lubiproston(1日2回24μg)で治療された患者は、プラセボ投与群よりも自発的な排便が多く、患者評価が有意に高かった。また嘔気、頭痛、下痢などの副作用も少なかった。

Stimulant Laxatives
 SennaとBisacodylのような刺激性下剤は、処方箋がなく一時的な便秘や慢性便秘に長期間利用できる。
 刺激性下剤の効果は確定され、有害の根拠もない。
 Bisacodylは経口と座薬で使用できるが、内服は眠前が良く、坐薬は朝食後に入れて胃腸反射に合わせると良い。

Which Laxatives Are Best for Constipation?           
 従来の下剤(Magnesium saltsとSenna)と新しい下剤との比較試験はなく、利用可能な下剤の間にかなりの価格差がある。
(日本 テレミンソフト:20円/個、アミティーザ:160円/C)             
 CICを治療するための推奨アルゴリズムがFigureに示されている。   
  ①食物繊維(野菜摂取)を増やすか、膨張性下剤(bulk agents)、例えばサイリウム(オオバコの種子の皮から精製した食物繊維)の内服  
  ②非吸収物質(PEG3350、Lactulose、マグネシウム)か刺激性下剤(Bisacodyl、Senna)で治療。一つの刺激性下剤で失敗したら、別の刺激性下剤で            
  ③腸管分泌促進薬のlinaclotideかlubiprostone。一方で失敗したら他方で治療。
  ④精査

Opioid-Induced Constipation
 オピオイド使用患者の40%から90%が便秘をする。オピオイドによる腸管運動抑制、腸管分節化 (segmentation)、通過時間が遷延することで水分吸収が増える、腸管への水分・ 電解質分泌抑制などが原因で便秘が起こる。
 オピオイドは、μ、κ、δの3つのオピオイド受容体に作用するが腸管では特にμ受容体に作用する。
 OIC治療に3つのμオピオイド受容体拮抗薬が有効である。
  ①メチルナルトレキソン (6試験、1610人):皮下注のみ。
  ②ナロキソン(4試験、798人):オピオイドによる便秘に有効。長期使用は許可されていない。
  ③アルビモパン (4試験、1693 人):術後イレウスに短期使用。
 麻薬による酷い便秘はオピオイド受容体拮抗薬であるナロキソンを使用することで、鎮痛作用を減ずることなく便秘だけを抑えることが出来る。日本国内ではナロキソンは注射薬しかない。
 oxycodone/naloxone を、最初10mg/5mgを2回/日か、20mg/10mgを2回/日で開始し最大40mg/20mgまで増量する。Lubiprostoneが非癌患者の麻薬による便秘にプラセボより有効であった。
尾崎先生図②

Discussion
 従来の下剤(Magnesium saltsとSenna)と新しい下剤との比較試験がなく、Magnesium saltsとSennaのRCTがないため、両者とも推奨度がNAであり追加の試験が望まれる。

【開催日】
 2017年5月24日(水)

終末期緩和ケア患者の感染症に対する抗菌薬の使用について

―文献名―
Joseph H. Rosenberg, Jennifer S. Albrecht, Erik K. Fromme, et al. Antimicrobial Use for Symptom Management in Patients Receiving Hospice and Palliative Care: A Systematic Review
J Palliat Med. 2013 Dec 1; 16(12): 1568–1574

―要約―
Introduction
 米国でも高齢化により緩和ケアの必要性が高まっている。終末期患者は高い感染のリスクがあり、約27%の患者が死亡する週に抗菌薬が投与されている。この状況にも関わらず終末期患者における抗菌薬の投与が、予後の延長と症状緩和に寄与するかについては明らかではない。2002年に終末期患者に対する感染のSystematic Reviewがあったが、その中では症状の改善に関する論文は1つだけであった。この10年で終末期患者における抗菌薬の使用を検討するいくつかの論文が発表されている。今回はそれらの文献を体系的にレビューし、症状の改善に対する既存のデータを要約した。これにより今後の終末期患者の抗菌投与の有無の判断について役立てることが目的である。

Method
 PubMedで2001年1月1日~2011年6月30日までの間に発表された終末期患者の抗菌薬使用についての文献のSystematic Reviewであり、palliative care、infection 、antibiotic等の文字で検索した。癌を含む終末期患者における、抗菌薬使用率と使用後の症状の改善を測定した文献に限定して分析した。創傷、口腔ケア、衛生環境、薬物動態に焦点を当てたものは除外としている。対象としている論文は記述研究である。データベース以外の検索はしておらず、funnel plotなし。文献の評価については、1人目の著者は文献が基準を満たしているのかを評価し、2人目、3人目の著者が選ばれた文献をレビューし、4人目の著者が評価者の内容に偏りがないかチェックしている。

Results
 PubMedで984の文献を検索し、基準を満たす文献は11個であった。table1は患者数、主病名、療養環境、国、研究方法、反応性、抗菌薬使用率について記載している。table2は抗菌薬に対する症状の改善について記載されており8個の文献が当てはまっている。全体での抗菌薬による治療の効果については、21.4%(95%CI:13.2%-31.7%)~56.7%(95%CI:52.7%-60.6%)と様々であった。点滴投与のみの研究は2つあり、効果はそれぞれ52.9%(95%Cl27.8~77.0%)、75.9%(95%Cl:52.7~60.6%)であった。また臓器別の抗菌薬の効果について記載された論文が3つあり、その中の2つの文献によると尿路感染症では60~92%、呼吸器感染症では0~53%、菌血症では0%の効果であった。

Discussion
 今回の研究の課題としては、抗菌薬使用群と非使用群との比較対照した研究ではない。抗菌薬の使用状況と症状の改善を同時に測定している事に異質性がある。現時点ではランダム化比較試験の研究はない。症状の改善という点でも有効な症状測定ツールを使用しておらず、主観的な評価を用いている(ただ、症状の評価自体が主観的であり測定が難しい)。解熱剤等の抗菌薬以外の治療の効果が除外されていないので、抗菌薬の独立した効果かは不明。抗菌薬の副作用についても考慮していない。
ホスピスでは感染症の診断自体があいまいな場合が多い。今回の研究では数が限られているため
ファネルプロットを用いた出版バイアスの評価も行わなかった。
今回の研究結果はこの分野における質の高い研究の必要性を再確認するものであった。
今後研究を行う際は、有効な症状測定ツールを活用する。抗菌薬治療群と非治療群とを分けて評価する。感染症を定義付ける。副作用も調査する。他の薬剤使用等の症状管理状況の交絡因子をきちんと除いたプロスペクティブな研究が必要である。

【開催日】
 2017年5月24日(水)

感染を伴った小児湿疹に対する経口および外用抗生剤治療の是非

―文献名―
Francis NA, Ridd MJ, Thomas-Jones E, et al. Oral and Topical Antibiotics for Clinically Infected Eczema in Children: A Pragmatic Randomized Controlled Trial in Ambulatory Care. Ann Fam Med. 2017;15(2):124-130.

―要約―
Introduction
 湿疹のある患者では皮膚から70%に黄色ブドウ球菌が検出され、悪化の際は広く外用抗生剤が処方されている。しかし2010年の湿疹への抗生剤加療についてCochrane reviewでの最新情報では、関連研究の多くは規模が小さく、質に欠けていることが示され、著者は湿疹の悪化へ抗生剤が使用されることに疑問を抱いた。
 そのため臨床的に湿疹に感染を伴ったと判断される小児に対して、標準治療であるステロイド外用に追加して経口や外用抗生剤を投与することが湿疹の主観的な重症度を軽減するうえでより効果的かどうかを判断するため本研究を実施した。

Method
 英国の外来診療のセッティングで3群間の盲検化ランダム化比較試験を行った。感染徴候を伴う湿疹のある3か月から8歳の小児患者に対し、経口と外用の偽薬(対照群)、外用の偽薬と経口抗生剤、外用抗生剤と経口の偽薬のいずれかをそれぞれ無作為に1週間処方を受けた。ただしpotentもしくはvery potent外用ステロイドや抗生剤の最近の服用歴、重症感染の徴候を認める、また重篤な併存疾患をもつ事例は除外された。1次アウトカムを湿疹の主観的重症度尺度であるPatient Oriented Eczema Measure(以下、POEM)とし、2週間後のPOEMスコアを共分散分析を用い比較した。
 サンプルサイズはα=0.025、90%の検出力としたとき、20%が追跡からもれることを想定し517人と設計した。2014年4月時点での解析結果からは225人が必要とされた。

Result
 2013年7月から2014年12月まで94の医療機関が参加し、33か所で1名以上の参加者が得られた。目標のサンプルサイズに満たなかったものの113名の参加者が無作為割り付けされた。3群間で患者背景に有意な違いはなかった(Table1)。研究開始時の平均POEMスコアは対照群で13.4(標準偏差5.1)、経口抗生剤群で14.6(5.3)、外用抗生剤群で16.9(5.5)であり、2週後はそれぞれ6.2(6.0)、8.3(7.3)、9.3(6.2)であり、抗生剤の効果は経口剤で1.5(95%信頼区間:-1.4-4..4)、外用剤で1.5(-1.6-4.5)と有意差を認めなかった(Table2)。
上野先生図1

Discussion
 本研究ではプライマリケアで小児の感染を伴った湿疹はmildからmoderateのステロイド外用で速やかに改善し、経口や外用抗生剤の追加は無益であることがわかった。当初設定したサンプルサイズには満たなかったものの、抗生剤使用の介入効果の信頼区間下限(-1.4と-1.6)でも臨床上重要な最小のPOEMの差に満たず、これらの結果は偶然によるものではないと考える。また2次分析でも一貫して同様の傾向がみられた。
 本研究は感染を伴った湿疹に対して経口および外用抗生剤の効果を評価した最大の研究である。感染を伴った湿疹は明確な定義は存在しないため、実際的な適格基準を設けた。黄色ブドウ球菌は開始時で70%にしか認めなかったが、すべての患者で医師は感染を起こしていると考えており、現在の診療に直接反映される結果ではないだろうか。
上野先生図2

【開催日】
 2017年5月17日(水)