変形性膝関節症に対する高浸透圧ブドウ糖関節内注射の効果

-文献名-
Shan RW et al. Efficacy of Intra-Articular Hypertonic Dextrose (Prolotherapy) for Knee Osteoarthritis: A Randomized Controlled Trial. Ann Fam Med 2020; 18:235-242.

-要約-
【Introduction】
高浸透圧ブドウ糖によるprolotherapy(DPT)は炎症により誘発される組織浸潤を通じて治癒と疼痛の緩和を得るための伝統的な治療法.標準的な方法は関節内外に注射を実施するものであり,過去のRCTやシステマティックレビューにおいて有効性が示されているが,関節内外どちらのアプローチが有効なのかは分かっていない.手技は患者にとっては侵襲的であり,関節外への注射は専用のトレーニングを要するものであり普及していない.手技が簡便で臨床的に広く安全に実施されている関節内注射のみの有効性はこれまで質の高い研究がなかった.
【Purpose】
変形性膝関節症に対する高浸透圧ブドウ糖関節内注射(DPT)が生理食塩水(NS)と比較して有効か調べる.
【Method】
(セッティング)
香港の大学付属のプライマリ・ケアクリニック 1施設
(患者)
45−75歳の変形性膝関節症患者
(デザイン)
ランダム化比較試験
(その他の内的妥当性について)
ランダム化割り付けは隠蔽化されており,研究者,患者,治療者,解析者ともに盲検化されている.ITT解析が実施されている.サンプルサイズの計算法についても記載あり妥当と思われる.
(介入方法)
DPT群は2.5MLの50%グルコースと2.5MLの精製水を混合し25%のグルコース液5MLを作成し,NS群は生理食塩水.25Gの針で膝関節内にエコー下に注入.各群ともに0週,4週,8週,16週で注射を実施した.
(アウトカム)
一次: the Western Ontario McMaster University Osteoarthritis Index (WOMAC 0−100点) pain score
二次: WOMAC composite, WOMAC stiffness, WOMAC function, いくつかの客観的に測定できる身体機能,痛みのVAS, EuroQol−5D score.
全てのアウトカムはベースラインと16週後,26週後,52週後に評価された.
【Results】
両群のBaseline characteristicsに違いはなかった.
52週後時点での差分の差分(difference in difference)は
WOMAC pain scoreは −10.34(95%CI −19.20 – -1.49, p=0.022)
WOMAC composite score は -9.65(95%CI −17.77 – -1.53, p=0.020)
WOMAC function score は -9.55(95%CI -17.72 – -1.39, p=0.022)
VASは −10.98(95%CI −21.36 – -0.61, p=0.038)
EuroQol-5D は 8.64(95% CI 1.36 – 5.92, p=0.020)
有害事象の報告はなかった.
【Conclusion】
関節内ブドウ糖注射によるprolotherapyは生理食塩水と比較して変形性膝関節症患者の疼痛を緩和し,機能とQOLを改善することが示された.手技は簡便で安全であり,患者のアドヒアランス,満足度も高いものであった.

【開催日】2020年6月10日(水)

レボチロキシンは80歳以上の潜在性甲状腺機能低下症のQOLを改善しない

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。

-文献名-
Association Between Levothyroxine Treatment and Thyroid-Related Symptoms Among Adults Aged 80 Years and Older With Subclinical Hypothyroidism.
JAMA. 2019;322(20):1977-1986. doi:10.1001/jama.2019.17274

-要約-
Introduction:
潜在性甲状腺機能低下症の患者の一部から、便秘・精神遅滞・疲労・抑うつ症状などの症状の報告がある。また、潜在性甲状腺機能低下症は心血管疾患のリスクの増加と関連しているという報告もある。65歳以上の患者を対象とした2017年のRCTレボチロキシン治療による甲状腺関連QOLの改善は示されなかった。
しかし、レボチロキシン治療が80歳以上の高齢者の潜在性甲状腺低下症に重要な利益があるかどうかは不明であった。今回の調査では、潜在性甲状腺機能低下症に対するレボチロキシン治療と、80歳以上の高齢者のQOLの関連を決定する。

Method:
80歳以上の潜在性甲状腺機能低下症が関与するデータの組み合わせ分析を計画し、2つのRCTで80歳以上の参加者のサブグループと組み合わせた。最初の試験ではオランダ・スイスで2014年5月から2017年5月、2つ目の試験はオランダ。スイス。アイルランド・イギリスで2013年4月から2018年5月の間に行われた。フォローアップは最短で12ヶ月、最長で36ヶ月追跡した。参加者はレボチロキシン(112人。最初の試験から52人、2回目の試験から60人)またはプラセボ群(139人。最初の試験から53人、2回目の試験から86人)にランダムに割り当てられた。
治験薬は、レボチロキシンナトリウムタブレットと1日1回経口摂取される対応するプラセボタブレットを使用。レボチロキシン群は1日50 µg(体重が50 kg未満の参加者または冠状動脈性心臓病の病歴がある場合は25 µg)で開始、プラセボ群は6〜8週間、一致するプラセボで開始した。レボチロキシンの投与量は、介入開始後6〜8週間、各投与量調整後6〜8週間、および目標達成のための12か月および24か月の追跡調査で測定。TSHに応じて25 µgずつ増加して調整した。

JC大西1

<除外基準>
レボチロキシン、抗甲状腺薬、アミオダロン、
リチウムの使用。
最近の甲状腺手術、放射性ヨウ素療法、NYHAclass4の心不全、認知症、最近の入院、ACS、心筋炎、終末期疾患。

JC大西2

プラセボ群で虚血性心疾患が27.3%(vs20.5%)
TSHはレボチロキシン群6.4で、プラセボ群で6.3。

Results:
プライマリアウトカムは1年間の甲状腺機能低下症状と疲労感をアンケートスコアでとった甲状腺関連のQOLとした。251人の参加者(平均年齢85歳、47%が女性)のうち、105人は最初の試験に含まれ、146人は2回目の試験で含まれた。
計212人の参加者(84%)が調査を完了。甲状腺機能低下症状スコアは12ヶ月の時点でレボチロキシン群ではベースラインの21.7から19.3に減量したのに対し、プラセボ群では19.8から17.4に減少した(グループ間調整 1.3 [95%CI、-2.7〜5.2] ; P  = .53)。疲労スコアは、レボチロキシン群のベースラインでの25.5から28.2に増加したのに対し、プラセボ群ではベースラインでの25.1から28.7に増加した(グループ間調整 −0.1 [95% CI, −4.5 to 4.3]; P = .96)。

JC大西3

12か月後の変化とは有意に関連していなかった。
・レボチロキシン治療は、ベースラインからEuroQol-5Dインデックスで測定された一般的なQOLの(レボチロキシン群:0.785→0.754、プラセボ群:0.811→0.785。-0.012 [ 95%CI、−0.063 to 0.039])。
・12か月の握力で測定した身体機能(レボチロキシン群:25.4 kg→23.4 kg、プラセボ群の24.7 kg→23.0 kg。−0.27 kg [95%CI、-1.79 to 1.25])
・BMI(0.38 [95%CI、0.08-0.68]; P  = .01)
・腹囲(1.52 cm [95 %CI、0.09-2.95]; P  = .04)

JC大西4

甲状腺特異的または全体的なQOLと有意に関連していなかった。
バーサルインデックスを用いて測定したレボチロキシン治療とADLとの有意な関連はなかった(レボチロキシン群:19.3→19.0、プラセボ群:19.4→19.1。0.09 [95%CI、-0.33〜0.52])
調査終了時に文字数字コーディングテストで測定された実行認知機能(1.24 [95%CI、-0.30〜2.78])

JC大西5

80歳以上の潜在性甲状腺機能低下症における
レボチロキシン治療と甲状腺関連症状の関連の参加者のTSH値

JC大西6

レボチロキシンは、致命的または非致命的な心血管イベントの発生率の増加と関連していなかった(0.61 [95%CI、0.24-1.50])。
17か月の平均追跡期間(追跡期間中央値、13か月)中に、9人の参加者(3.6%)が死亡(1人の心血管死)。100人年あたりのイベント率は、レボチロキシン群:4.2、プラセボ群:7.64)。
全死亡率(1.39 [95%CI、0.37-5.19]、レボチロキシン群:2.99、プラセボ群:2.02)。
少なくとも1つの有害事象が、合計73人:レボチロキシン群の33人(29.5%)プラセボ群の40人(28.8%)に発生した。
有害事象は、新規発症心房細動10人(4.5%)、心不全9人(4.1%)、骨折9人 (4.1%)が含まれていた。甲状腺機能低下症は、参加者のいずれにも発生しなかった。レボチロキシン群で、最も一般的な有害事象は、脳卒中3人(2.2%)、貧血2人(1.4%)、および肺炎2人(1.4%)であった。
プラセボ群では、最も一般的な有害事象は肺炎4人(3.6%)、心不全2人(1.8%)、および呼吸不全2人(1.8%)であった。研究の終わりに、フォローアップ中に81人(32%)で治療の中止が発生したのに対し、研究の総中止は19人(8%)であった。

潜在性甲状腺機能低下症のある80歳以上の高齢者を対象として2つの臨床試験からのこの前向きに計画されたデータ分析では、プラセボと比較したレボチロキシンでの治療は、甲状腺機能低下症の疲労の改善と有意に関連していなかった。これらの調査結果は、80歳以上の高齢者における潜在性甲状腺機能低下の治療のためのレボチロキシンの日常的な投薬は支持しなかった。

Discussion:
BMIと腹囲をのぞいて有害事象または二次転帰のリスクとの関連はなかったが、比較の数が多いことから偶然によると思われる。治療群間に差はなく、偶然によると思われる。治療群間での脱落率に差はなく、レボチロキシン治療が有害事象に関連していなかったことを示唆している。今回の試験で報告された結果は、ヨーロッパと米国のガイドラインにある「潜在性甲状腺機能低下症の80歳以上の高齢者に対する治療を推奨しない」と一致している。いずれのガイドラインもTSHが10mIU/Lを超えたら治療することが推奨されている(年齢は記載されていない)。レボチロキシン治療は、甲状腺関連の症状、QOL、認知機能、身体機能に有益な影響を及ぼさないことが判明していた65歳以上の成人を対象とした試験の結果と一致しており、日常生活スコアや有害事象の増加はなかった。この研究にはいくつかの制限がある。第一に、交感神経系の負担が高いか、またはベースライン時のTSH値が高い参加者については、事前に計画されたサブグループ解析が行われていない。結果はこれらの参加者には適用されないかもしれない。第二に、明らかな甲状腺機能低下症への進行リスクが高い人を識別する可能性のある抗甲状腺抗体の状態は利用できなかった。第三に、研究集団は同種の人種であった。第四に、治療を継続しなかった参加者(32%)がおり、これが結果に偏りを与えている可能性がある。しかし、治療を中止した者の数とその理由は治療群間で同程度であった。

【開催日】2020年6月10日(水)

長期療養施設においてCovid-19が発症した場合の影響

-文献名-
T.M. McMichael and Others Epidemiology of Covid-19 in a Long-Term Care Facility in King County, Washington n engl j med 382;21 nejm.org May 21, 2020

-要約-
Introduction:
長期療養施設は,入居者が高齢で慢性基礎疾患を有する割合が高く,またヘルスケア従事者が地域の施設間を移動するため,Covid-19 集団発生によって重篤な転帰をとるリスクが高い環境である.
Method:
ワシントン州キング郡の高度看護施設で Covid-19 の確定例 1 例(2.19から発熱と呼吸器症状、2.24入院、2.28確定、3.2に死亡)が確認された 2020 年 2 月 28 日以降,シアトル・キング郡公衆衛生局は,米国疾病対策予防センターの支援のもと,症例調査,接触者の追跡,曝露者の検疫,確定例・疑い例の隔離,現場での感染予防・制御の強化を開始した.
Results:
3 月 18 日の時点で,入居者 101 例,ヘルスケア従事者 50 例,訪問者 16 例の計 167 例の Covid-19 確定例が,この施設と疫学的に関連していることが明らかになった.入居者の症例の大部分が Covid-19 に一致する呼吸器疾患を有していたが,7 例には症状が確認されなかった.入院率は施設入居者 54.5%,訪問者 50.0%,スタッフ 6.0%であった.入居者の致死率は 33.7%(101 例中 34 例)であった.3 月 18 日の時点で,キング郡では 30 ヵ所の長期療養施設で Covid-19 の確定例が 1 例以上同定されている.
conclusion
Covid-19 集団発生が急速に拡大する状況において,長期療養施設では,あらかじめ行う措置として感染している可能性のあるスタッフと訪問者を同定・除外し,感染している可能性のある患者を積極的に監視し,適切な感染予防対策を講じることが,Covid-19 の持ち込みを防ぐために必要である.
Discussion:
施設から1人のCOVID19が発症し累計167例の発症と34例の死亡例が認められた。インフルエンザなどの感染と同様にCOVID19に対する施設の感染に対する脆弱性が認められた。症状がある間、複数施設で働くスタッフとある施設から別の施設への患者の移動は感染を複数の施設へ広げる可能性がある。施設内外への入居者の移動は医学的脆弱性を持つ集団にとって深刻な脅威となる。高齢者施設においてインフルエンザワクチンと抗ウイルス薬投与がインフルエンザ拡散防止に効果的であるが、このような介入はCOVID19には利用できないため、患者の移動に関しては慎重に対応するべきだ。
施設でのCOVID19の早期発見と予防のため入居者、ケアワーカー、訪問者の体温や症状のスクリーニング、社会的距離、移動やグループ活動の制限、スタッフに対する感染予防と個人防護具使用の教育、個人防護具を確保するための計画が重要である。スタッフ教育に加えて実践的なトレーニング、感染防止に対する職員のアドヒアランスを強化する監査システムを作る必要がある。スタッフの欠勤や過重労働などの大きな混乱があるとこれらのシステムに影響が出る可能性がある。

JC村井1

JC村井2

JC村井3

【開催日】2020年6月3日(水)

Time of day for taking warfarin (January 2020)/ワーファリンを服用する時間帯

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。

-文献名-
Garrison SR, Green L, Kolber MR, Korownyk CS, Olivier NM, Heran BS, Flesher ME, Allan GM. The Effect of Warfarin Administration Time on Anticoagulation Stability (INRange): A Pragmatic Randomized Controlled Trial. Annals of family medicine. 2020; vol.18, no.1:42-49.

-要約-
Introduction:
ワーファリンの安全性と有効性は、血液検査のINRの治療範囲内の時間(TTR)の割合に大きく依存する。
この戦略は、用量調整の必要性を知ってから(通常、午前中の血液検査後の午後遅くに患者に伝達される)、その用量変更が可能になるまでの時間を短縮するものである。
したがって、夜間のワーファリン使用が迅速な用量調整を意味するならば、それはより良いTTRにつながる可能性がある。
この仮説は妥当であるが、この実践を支持する証拠はなく、他の要因が最適投与時間に意味のある影響を与える可能性がある。
例えば、食事性ビタミンK(ワーファリンと相互作用する)は半減期が2.5時間と非常に短く、摂取量が変動しやすい食品(緑葉野菜)に多く含まれており、
朝に摂取することはほとんどない。ワーファリンは夕方に摂取することが一般的であるが、投与時間が重要かどうか、
また、重要であるとすればどの時間帯に摂取するのがよいかは不明である。
そこで、ワーファリンの抗凝固作用の安定性に及ぼす投与時間(朝 vs 夕方)の影響を評価するために、無作為化比較試験を実施した。
Method:
カナダ西部の54のコミュニティに勤務する236人のプライマリケア医が、ワーファリン使用患者全員に招待状を郵送した。
対象としたのは、地域に居住するワーファリン使用者(適応は問わない)で、少なくとも3ヶ月間の夜間ワーファリン使用歴があり、中止の予定がない患者であった。
参加者は、ウェブベースの割り付けにより、朝のワーファリン摂取と夕方のワーファリン摂取の継続に無作為に割り付けられた。
Rosendaal法(線形補間 ※)を用いて、無作為化後2~7ヶ月間の血液検査における国際標準化比(INR)の治療範囲内の時間(TTR)の割合を、無作為化前6ヶ月間と比較して決定した。
主要アウトカムは、目標INR範囲外の時間の割合の変化率であった(臨床的に重要な差は±20%であることを前提とした)。解析はすべてITT解析とした。
Results:
2015年3月8日から2016年9月30日までの間に、109人の参加者を朝のワーファリン使用に、108人の参加者を夜のワーファリン使用に無作為に割り付けた。

JC黒木1

JC黒木2

JC黒木3

JC黒木4

TTRは朝群で71.8%(Table1)から74.7%、夜群で72.6%(Table1)から75.6%に上昇し、前者では2.9%、後者では3.0%の変化を示した(Table2:差、-0.1%;P=0.97;差の95%CIは-6.1%から5.9%)。
治療上のINR範囲外の時間の割合の変化率の差(中央値の差のHodges-Lehmann推定を介して得られた)は4.4%(P = 0.62;差の95%CI、-17.6%~27.3%)であった。
Discussion:
本研究の参加者(およびその臨床医)が地理的に幅広いプライマリケア集団から募集されたことは強みであるが、グループ全体のベースラインTTRは、カナダのプライマリケア診療所の全国代表的なサンプル(平均67.8%)よりもわずかに高かった(平均72.2%)。主要アウトカムは、ベースラインのコントロールが優れている患者が不均衡に牽引するという点でも限界がある。しかし、TTRの絶対的変化は両群ともほぼ同じであり、文献から得られた臨床的に重要な最小差は、我々の主要アウトカム(観察変化率4.4%、臨床的に重要な最小差±20%)とTTRの絶対的変化(観察変化率-0.1%、臨床的に重要な最小差±6%)の両方のポイント推定値よりも実質的に大きいことがわかった。TTRは代替アウトカムであるという点でも限界がある。我々の研究では、臨床的イベントの違いを調査するための力はなかった。これまで、ワーファリン投与時間の影響を検討したものはなかった。本研究は、この問題に取り組んだ最初の研究であると考えている。
結論:
投与時間は、ワーファリンの抗凝固作用の安定性に統計的にも臨床的にも重要な影響を与えない。患者は規則的なコンプライアンスが最も容易になると思われるときにワーファリンを服用すべきである。

※Rosendaal法;INR値の2点間線形関係があるとして、個々の患者の検査間で日毎に治療域内にINR値に位置したと仮定。

【開催日】2020年6月3日(水)

愛着理論で、家庭医療における医師・患者関係の新しい理解を付け加える

-文献名-
Darren Thompson and Paul S. Ciechanowski
The Journal of the American Board of Family Practice May 2003, 16 (3) 219-226; DOI: https://doi.org/10.3122/jabfm.16.3.219

-要約-
<背景>
家庭医は、患者とその家族のケアの継続性の結果として、患者との永く続く臨床上の関係を形成する独自の姿勢を備えている。患者と医療提供者の同盟に対する協力度と満足度は、さまざまな医学的問題にわたる治療アウトカムに重要な意味を持つことが示されている。最適なケアを提供するには、家庭医が、患者と自分自身の両方で、ヘルスケアの関係に過去の関係の臨床的に関連する側面が現れるという後遺症を理解する必要があります。これらの重要な側面の認識を支援するには、概念モデルが不可欠です。
<方法>
MEDLINEを使用して文献検索を実施した。キーワードは「illness」と「愛着理論」とした。 35件の英語のみの記事があり、そこからさらに関連記事を収集した。
<結果>愛着理論は、医師と患者の関係の重要な特徴を強調するための有用なモデルとして機能する。これは、家庭医療のセッティングで治療結果に影響を与える可能性がある。愛着理論では、誰もが初期の養育者に強い愛着の絆を形成する生来の欲求を持っていると仮定する。確実に生き抜くために、子供はその絆を介護者の愛着スタイルに適合させる。時間が経ち成熟していく過程で、人は、これらの初期の、そしてある程度はその後の、密接な人間関係に基づいて、その後の人間関係(ケアを受ける関係)に関連するスタイルを作り上げる。回避型、とらわれ型、恐怖型などに至りうる不安定な愛着スタイルは、臨床上の関係と治療結果にしばしば重要で予測可能な影響を及ぼすことが示されている。
<結論>
家庭医は、患者の個別の愛着パターンを認識することにより、患者を理解し、思いやりのある、柔軟な治療スタンスをより簡単に選択することができ、それによって治療結果を改善することができる。

<不安定型愛着の要約>
Book1

医師の愛着タイプも、患者との関係構築に影響を与える。

【開催日】2020年3月4日(水)

言語コミュニケーションと患者の安全性について

-文献名-
Rick Iedema, Trish Greenhalgh,et al.Spoken communication and patient safety: a new direction for healthcare communication policy, research, education and practice? BMJ open quality.2019.8.16.

-要約-
背景:NHS(イギリスの国民健康サービス)では36時間毎に約100万人の患者に医療サービスを提供しています。この過程において、数百万以上の口頭でのやり取りが行われます。これらの数字を考えると、話し言葉のコミュニケーションの失敗による事故が壊滅的な影響を与える可能性は十分にあります。実際、世界中のインシデント調査では、不適切または効果のないコミュニケーションが予期しないケアイベントや望ましくないケアの結果に最も関わる要因であることを示しています。
2017年NHS改善委員会は、患者の安全のため医療従事者のスタッフ-患者コミュニケーションをどのように改善するかを明確化するため、医療専門家の外部ワーキンググループに委託し、問題と課題の概念マップを作成し、これを基にレポートを作成しました。その結果は6つの重要なコミュニケーションドメインを示していました。
方法:ワーキンググループは10ヶ月かけて、ヘルスケア環境での音声コミュニケーションに関する既存の学術文献および非市販文献の調査をしたこと、定期的に収集されたNHSデータ(苦情通知および重大なインシデントレポートの代表数)を調査し、そのオンラインリソース(患者のフィードバックなど)のウェブサイトにアクセスしました。私達はこれらの二次情報源に、4つのフォーカスグループの患者と、合計100人のNHS患者とスタッフで行われた2つの半日相談イベント(NHSIが組織し、ワーキンググループのメンバーが共同進行)から得た情報を加えています。データはテーマ別に分析され、合成されました。以下の6つのドメインが発見されました。
①コミュニケーション環境
音声コミュニケーションの理想的な環境は、「思いやりのある環境」によって特徴付けられます。良い例としては外観がキレイでスタッフも親切で、清掃が行き届いている環境です。悪い例としては発電機が診察室のすぐ外にあり騒音があるなどの環境です。良い環境はケアの安全性と患者の心理的および生理学的安全感に貢献し、臨床医と患者とのコミュニケーションをサポートします。
②情報交換
音声コミュニケーションは、適切な人が適切なタイミングで正確かつ適切な情報を交換するときに効果的です。専門用語の使用など明瞭性の欠如がある場合、情報が過度にスクリプト化(漠然とわかる状況)されている場合、技術的でその場のコミュニケーション相手に十分に適合していない場合、競合する情報が混在する場合、情報が不十分またはない場合に問題が発生します。
良い例としては手術室でオペ室の看護師に「私の右手にステッチとはさみをお願いします」とその場にあって明瞭であること。悪い例としてはBIPAPで救急室から病棟へ移動する際に、事前の報告もなく準備についても確認しないまま移動し、酸素が用意されていないなど。
③聞き取りと態度
文献では、効果的なコミュニケーションを、敬意、コミットメント、前向きな考え、共感、信頼、受容性、誠実さ、およびケアに関する継続的かつ協力的な焦点に関連付けています。親切で援助的であれば良い一方で、配慮がないことは悪く働きます。患者の期待と理解は、より多様で明確になりつつあります。患者が自身のケアに寄与すべきことに積極的かつ敬意を持って耳を傾けることは、ケアの質と安全性にとって重要です。
④調整と対応
情報のネゴシエーションを最適化するには聞き取りと態度が重要ですが、この4番目の領域である調整と対応は、臨床医と患者の関係を育む上で重要です。臨床医は患者の気分やユーモアに合わせてコミュニケーションを調整する必要があります。これは、相互の信頼、およびデリケートでプライベートな問題の議論のための「共通基盤」を開発します。 この育成は1回限りの「チェック」ではなく、継続的なプロセスとなります。患者に対する発話を調整することにより、GPは関係を育み、それによってケアの質と安全性を向上させます。信頼関係が相互理解とオープン性を必要とする状況では、関係を構築することが最重要です。病気や治療がより長期的で複雑になり、不確実性にさらされつつある今、これは特に当てはまります。
⑤効果的なチームコミュニケーションのための前提条件の作成
チームは上記の①~④を実現することで効果的にコミュニケーションを取ります。それは「心理的に安全」であると感じ、懸念を提起したり問題を指摘したりすることが十分に価値があり、恐れずに言って良いとメンバーが感じるからです。
チームのコミュニケーションは、チームのすべてのメンバーの知識、感情、洞察を尊重する必要があることは明らかです。
⑥特徴のあるグループとのコミュニケーション
子どもや若者、話し言葉の英語を理解できない人(例:英語が話せない人、聴覚障害、学習障害、認知障害など)や苦しんでいる人、精神疾患がある人などのグループとのコミュニケーションには、通常よりも注意が必要です。このような特徴のある患者とコミュニケーションをとるためには病院のパスポート(名前、民族、宗教などの患者に関する基本的な詳細と、患者や介護者が「やりたいことや話したいこと」をリストできるセクションがある。また、写真、ポイントボード、読みやすい文書などの理解に役立つ「コミュニケーション方法」に関するセクションも含まれている)を作ることを推奨します。
結論:これらの6つのドメインは、安全なコミュニケーションのいくつかの側面を確認し、情報交換を超えた医療コミュニケーションの理解を拡大し、一般的なケア環境の質、聴力、対人関係を追求する関係のダイナミクスを含んでいます。さらに、チームコミュニケーションの多次元性、および患者のユニークなグループとのコミュニケーションの特徴を強調しています。適切な条件を作成する上で組織のリーダーシップの重要な役割を認識し、安全性が重視されるコミュニケーションをするためにすべきことは、上記の各ドメインに対処し、スタッフをさらに理解する必要があります。3つのせめぎ合いに対処する必要があります。(1)良好なコミュニケーションの狭い定義(正確、関連する情報の交換)およびより広い定義(状況認識、感情を必要とする社会的、感情的、文化的行為)の間(2)理想的なコミュニケーションビジョン(冷静、プライベート、中断なし)と、NHSで話されたコミュニケーションが行われる実際の、そしてしばしば準最適な状況の間(3)ツール、テクノロジー、チェックリストによってサポートされる構造化、スクリプト化、標準化されたアプローチと、複雑な状況の中で働く個々の臨床医の適応性、創造性、コミットメントを称賛しサポートするアプローチの間。
会話によるコミュニケーションを改善するという挑戦は簡単ではありません。少なくとも、このような改善には、ケアの複雑さのレベルの上昇を管理するための専門家の学習能力と反射能力の強化に役立つ行動的介入が必要になります。

【開催日】2020年3月4日(水)

慢性的な呼吸困難感に対するモルヒネ徐放製剤の多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化比較試験

-文献名-
Currow D, Louw S, McCloud P, Fazekas B, Plummer J, McDonald CF, Agar M, Clark K, McCaffery N, Ekstrom MP; Australian National Palliative Care Clinical Studies Collaborative (PaCCSC).
Regular, sustained-release morphine for chronic breathlessness: a multicentre, double-blind, randomised, placebo-controlled trial.
Thorax. 2020 Jan;75(1):50-56. doi: 10.1136/thoraxjnl-2019-213681. Epub 2019 Sep 26.

-要約-
【目的】
 モルヒネは慢性的な呼吸困難感を緩和すると考えられるが、大きなRCTによるデータが不足している。慢性的な呼吸困難感に対する低用量のモルヒネ徐放製剤の有効性と安全性をプラセボ対照無作為化比較試験により検証する。
【方法】
 オーストラリアの呼吸器・循環器・緩和ケアの入院・外来サービス14施設で二重盲検の無作為化比較試験を行った。修正版MRC息切れスケールで2以上の呼吸困難感を有する成人を対象とした。介入群は経口モルヒネ徐放製剤20mg/日と下剤、対照群はプラセボと下剤をそれぞれ7日間服薬した。両群とも必要時にモルヒネ速放製剤2.5mg/回を1日6回まで使用可とした。主要エンドポイントは現在の呼吸困難感のVAS評価の前後での変化とした。二次エンドポイントは24時間前と今における呼吸困難感の最低・最高・平均強度と患者のQOL、介護者のQOL、患者の治療への好みを評価した。
【結果】
 介入群に145名、対照群に139名が無作為に割り付けられた。主要評価項目である現在の呼吸困難評価の変化に有意差はみられなかった(変化の差-0.15 mm, 95%信頼区間 -4.59 to 4.29; p=0.95)。副次評価項目でも介入効果は認められなかった(24時間で最悪の呼吸困難感, p=0.064; 24時間で最良の呼吸困難感, p=0.207; 24時間の平均的な呼吸困難感, p=0.355; 現在の呼吸困難の不快感, p=0.338; 倦怠感, p<0.001, 介入群の方が倦怠感増悪; QOL, p=0.880; 全身状態, p=0.260)。介入群は便秘(p=0.001)、疲労(p<0.001)、悪心・嘔吐(p=0.008)が有意に多かった。モルヒネのレスキュー使用は対照群でより多かった(介入群, 平均5.8回, 対照群, 8.7回; p=0.001)。 【結論】  慢性的な呼吸困難感に対するモルヒネ徐放製剤の定期服用の介入効果は認められなかったが、レスキュー使用は対照群より少なかった。 【開催日】2020年3月11日(水)

儀式としての身体診察

-文献名-
Costanzo, Cari, and Abraham Verghese. “The physical examination as ritual: social sciences and embodiment in the context of the physical examination.” Medical Clinics 102.3 (2018): 425-431.

-要約-
Introduction:
検査技術の発達により、身体診察は軽視されている潮流にあり、診察時の見逃しによる不必要であった医療過誤に対するコストも指摘されている。身体診察は医師患者関係を維持するものとしての位置付けもあるが、これについての研究は乏しい。しかし患者の不満として「私の主治医は触ってすらくれなかった」と言った事はよく話題になる。

医学と社会科学における身体診察
2016年に身体診察と医師患者関係のレビュー文献があるが、その肯定的な評価については質的研究結果よりもむしろ持論を元にしたものが殆どであった。またエスノグラフィーによる報告では、身体診察はむしろ侵襲的であるという否定的な評価であった。

Embodiment:
身体とは、mind/bodyの2つから成り立つのではなく、歴史・文化・政治的力も不可分であるという考え方。個人の歴史だけではなく、社会や政治背景が身体的な差異に対してプラスやマイナスの評価を与え位置付けている事も含まれる(例:植民地政策における皮膚の色によるヒエラルキー)。

儀式としての身体診察
筆者の考える儀式性)
a.特異で象徴的な場所で身体診察は行われる(診察室は非日常的な空間である)
b.聴診器や打腱器など象徴的な道具が用いられる
c.上記場所や道具を用いた独自性や実践は、普遍的である
衣服を脱いだり、触ったりすることを許容することは、患者本人が脆弱性を示す(患者役割を身にまといそれを保持したい事を暗に意味している)ことであり、臨床医が注意深く思いやりを持って身体診察に取り組むことが強く求められている。

プラセボ効果と身体診察
well-administered身体診察はinferior身体診察と比べて、患者の気持ちを安らかにさせて、神経生物学的効果が、研究されている。

診療の喜びと身体診察の意味
臨床医の燃え尽き予防として、身体診察のような医師患者関係を強めるプロセスになるような儀式を意識する事も1つであろう。

【開催日】2020年3月11日(水)

医学生と家庭医療のキャリアについて話すときに考慮するべき12の論点

-文献名-
Kathleen Horrey. et al. Twelve points to consider when talking to a medical student about a career in family medicine. Canadian Family Physician. 1 January 2020; 66 (1): 74-76.

-要約-
背景;カナダ家庭医の大学(CFPC)の学部教育委員会(UGEC)は、医学生の家庭医療に対する認識と、彼らが私たちの専門分野について受け取るメッセージを調査している。この洞察を収集するために、UGECはメンバーの多様なグループからの意見を求めた。
まず、家庭医療のキャリアのやりがいと課題に関する彼らの見解について学ぶため、医学生のセクションを通じて共有される医学生向けの調査を開発した。これらのデータは、過去の家庭医療フォーラムのフォーカスグループスタイルのワークショップで発表された。ワークショップの出席者は、新卒者から40年以上の都市部と農村部の包括的な診療を含む40年以上の診療経験を持つ家庭医の幅広いグループを代表していた。医学生の認識に関する豊富な議論の後、私たちは居住者と最近の卒業生からより多くを聞く必要があることに気づいた。追加の調査は、居住者のセクションおよび家庭医療実践委員会の最初の5年間を通じて、選択したキャリアのやりがいと課題に対する認識を決定するために広められた。入力を提供したすべての人からの応答を捉えた概念的なテーマを開発した。家庭医療に関連するやりがいと課題の認識に関するこれらの概念的アイデアは、その後の家庭医療フォーラムの別のフォーカスグループスタイルのワークショップで発表され、参加者は反復的に出現した概念をさらに微調整した。UGECのメンバーとCFPCのアカデミック家庭医療部門の同僚は、これらのメッセージをさらに洗練させた。
「家庭医療でのキャリアについての12の論点」は、多数の異なる意見や経験の収集から生まれたものであり、家庭医が医学生と日常診療やその間に起こったことに役立てることができ、家庭医療のキャリアのやりがいと課題に関する医学生との議論において焦点を合わせるのに役立つ。以下に示すこれらの12の論点は、文書「家庭医療のキャリアについて医学生と話をする際に考慮すべき12の点」からのものであり、それはwww.cfpc.ca/uploadedFiles/Education/Twelve-Talking-Tipsからダウンロードできる(フランス語版もあり)。
話すポイント
1.家庭医療は専門であることを強調する
特に、かかりつけ医はジェネラリストの専門知識を持つ熟練した臨床医であることを説明する。家庭医療は、知的に刺激的で、挑戦的であり、非常にやりがいのある職業である。患者とその家族に奉仕することがどんな特権かを話す。これらの有意義な縦断的関係は、医師としての私たち自身の回復力と幸福を高める。かかりつけのポイントとして、家庭医療の4つの原則(www.cfpc.ca/Principles)を強調すると役立つ場合がある。その4つの原則とは、かかりつけ医は熟練した臨床医、家庭医療は地域に根ざした学問、かかりつけ医は、定義された診療集団のリソース、患者と医師の関係は、かかりつけ医の役割の中核であるというものだ。
2.彼らとの包括性の概念を調べ、これが圧倒的と思われるかどうか尋ねる
患者のプレゼンテーションの謎を受け入れ、「多くのことを少し知っている」という認識を拒否する。これは、家庭医療に必要な知的厳格さを低く評価する。
3.地域および新興のニーズを満たすために、コミュニティに適応したケアを提供するための訓練方法について話し合う
医学生は社会的説明責任に強い関心を持っている。かかりつけ医が包括的実践、特別な利益を伴う実践、および集中的実践のすべてを共同で私たちのコミュニティのニーズを満たす方法を調査することにより、この素因を構築する。
4.この仕事は、単独ではなくチームで行うことを指摘する
私たちは、他のかかりつけ医や他の医療提供者とチームで協力し、患者のケアを互いに支援する。
5.家庭医療がいかに多様性を提供し、決して退屈しないかを祝う。毎日が新しい経験をもたらす
私たちの仕事には、すべての人々、年齢、ライフステージ、プレゼンテーションの包括的で継続的な医療が含まれる。リーダーシップ、アドボカシー、奨学金、研究、品質改善が含まれる。
6.家庭医療が、このような多様な実践機会を持つ唯一の医療専門分野である方法を説明する
コミュニティのニーズよりも個人の利益に集中していると解釈されるため、柔軟性の概念よりも汎用性を強調する。
7.家庭医療は私たちと共に適応し成長するキャリアであることを強調する
私たちは自分の人生の段階と実践の段階に合わせて調整することができ、個人や私たちが奉仕するコミュニティとして私たちに最適なものを見つける。
8.この汎用性により、ワークライフの統合を達成するためにどのように努力できるかを説明する
医学生は誤って家庭医療を専門分野の「ライフスタイル」選択であると誤解しているため、ワークライフバランスなどの用語は避けてください。
9.「プラス1」年間の強化されたスキルトレーニングに関する神話を払拭する
学生がこれについて尋ねている理由を調べてください。一部の学生は誤解されており、家庭医療の訓練にさらされる前であっても、家庭医として患者に緩和ケア、産科ケア、緊急ケアなどを提供できるように強化されたトレーニングが必要であると考えている。他の学生は、包括的な実践の考えが圧倒的であることに気づき、より集中したいと考えている。この場合、家庭医療が彼らにふさわしいのか、それとも道筋なのかを探ってください。私たちは、生徒が地域のニーズを満たすために強化されたスキルプログラムを選択し、個人の利益を達成するためだけでなく、最良の結果が得られるように利益を達成することを奨励する。
10.家庭医療を「バックアップ」計画と見なしているかどうかを尋ねる
一部の学生にとっては、カナダのレジデントマッチングサービスでの一致で家庭医療を選択することが適切かもしれないが、家庭医療はすべての人のバックアップと見なされるべきではない。生徒が自分にぴったりだと思う分野を選択し、それに応じてランク付けすることを生徒に奨励する。
11.将来の診療条件の不確実性について懸念がある場合は、対処する
認識について率直に話してください。政治的風潮と家庭医療への支援は、時々変わる。物事が今日不確実に見える場合、それらは将来より良くなるだろう。すべての医療専門職に不確実性があることを認める。しかし、他の多くの専門分野よりも家庭医療の雇用機会に関してはるかに確実性が残っている。
12.患者があなたの仕事をどのように評価しているかについてのストーリーを共有する
かかりつけの医師に対する全身的圧力の背景と、私たちの職業は価値がないという印象に反して、患者が私たちの仕事をどれほど大切にしているのか、患者が私たちとの信頼関係を重視していることを忘れてしまうかもしれない。
結論:医学生の家庭医療に対する認識と、彼らが私たちの専門分野について受け取るメッセージを調査した後、医学生に伝えようとするメッセージは、いつも彼らから聞くメッセージとは違うことがわかった。「12の論点」は、家庭医療のキャリアに関するメッセージを改善し、メリットを強調し、神話を払拭し、課題に正直になり、医学生自身に家庭医療が適切かどうかを振り返るのを促すための推奨事項として浮上した。

【開催日】2020年2月12日(水)

在宅における新生児緩和ケア

-文献名-
Kuhlen, M., Höll, J. I., Sabir, H., Borkhardt, A., & Janßen, G. Experiences in palliative home care of infants with life-limiting conditions. European journal of pediatrics. 2016;175(3):321-327.

-要約-
研究の目的:予後の限られている疾患を持った新生児およびその家族が在宅緩和ケアにおいて直面する問題点を同定し、医師・支援者がそのニーズを理解することを目指す
背景:これまでに在宅緩和ケアを受ける新生児についての実態調査研究は2013年のポーランドのものをのぞいてほとんどない。同研究では37.7%(20人)が緩和ケアから通常のケアに安定して脱していることが報告されている。
デザイン:ドイツ・デュッセルドルフの子供病院の小児緩和ケアチーム(PPCT)に紹介され、自宅ケアを受けた事例を2007-2014年の期間で記述的研究を行った。生後365日を超えた事例は除外した。なお、同都市では5820人の子供が1年あたり生まれている。
結果(Table1, 2, 3参照):31人の患児が該当した。そのほとんど(17人)が先天性奇形または染色体異常だった。21人が死亡し、そのうち5人は入院中の死亡だった。64.5%が自宅でお看取りとなった。83.9%が嚥下機能障害を持ち、NGチューブあるいはPEGを受けていた。1/5の子供がPEG造設のために再入院したが、その周術期に死亡していた。71%が鎮痛薬による治療を受け(そのうち16人72.7%がNSAID、2人9.1%がトラマドール、17人77.3%が強オピオイド)、45.2%が酸素療法が必要で、9.7%が人工呼吸器を要していた。
死亡率が最も高かったのは、周産期合併症を持っていた場合(75%)であった。4人の患者においては、状態が劇的に改善し、緩和ケアから通常ケアに脱することができた。

JC20200212みやち1

JC20200212みやち2

JC20200212みやち3

【開催日】2020年2月12日(水)