家庭医はDVとどう対峙するか

―文献名―
O’Doherty LJ1, Taft A, Hegarty K, Ramsay J.Screening women for intimate partner violence in healthcare settings: abridged Cochrane systematic review and meta-analysis.BMJ 2014;348:g2913  PMID:24821132

―要約―
1)目的
医療機関のセッティングでパートナーからの暴力についてスクリーニングすることの効果を検証する事で、その意義を高め、女性の幸福に寄与し、今以上の暴力や害悪の原因を減少させるため

2)研究デザイン
スクリーニングの有用性を評価するためにシステマティックレビューおよびメタ分析を行なった。研究評価、データの抽出、質的評価は著者ら二人が独立して行なった。リスク比および95%信頼区間の設定については標準化された方式を用いて求めた。

3)データ
2012年7月までに、9つのデータベース(CENTRAL, Medline, Medline(R), Embase, DARE, CINAHL, PsycINFO, Sociological Abstracts, ASSIA)で検索され、2010年までに5つのトライアルが登録された

4)研究の選択における加入クライテリア
医療機関において16歳以上の全ての女性に対して、パートナーからの暴力を受けているかのスクリーニングプログラムがあることが、ランダム化もしくは準ランダム化試験が組み入れ基準である。スクリーニングだけを目的として介入したものと、普段のケア(スクリーニングをしない)との比較した研究だけを選定し、権利擁護や治療的介入のような構造的な介入を目的としたスクリーニングプログラムは除外した。

5)結果

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11のトライアル(n=13027)が同定され組み入れられた。(figure1)
6つの研究(n=3564)のメタ分析では、パートナーからの暴力を同定する割合が(通常のスクリーニングを行なわないケアに比して)上昇した(リスク比2.33、95%信頼区間1.39~3.89)。(figure2)とりわけ、出産前においては、リスク比4.26、95%信頼区間1.76~10.31となっていた。

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3つの研究(n=1400)のメタ分析では、スクリーニングプログラムは、DVの専門機関への紹介につながるエビデンスがないことが証明された。(リスク比2.67、95%信頼区間0.99~7.20)。(figure3)

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2つの研究だけのメタ分析では、スクリーニング後(3~18ヶ月)の暴力の経験を調査しているが、パートナーからの暴力は減っていない事を証明した。1つの研究から、スクリーニングに害悪はないと報告があった。

6)結論
医療機関におけるスクリーニングによりパートナーからの暴力が同定されるケースは増えているが、こうした暴力の潜在的な確率と比較すると、まだ低い状態である。また、スクリーニングが、効果的な専門家への紹介につながっているかどうかは不明である。短期間では、スクリーニングは、害悪がないとされているが、医療機関でスクリーニングを行なう上では十分なエビデンスはない。女性の長い期間の幸福において、スクリーニング法と、事例発見法、治療的介入を織り交ぜたスクリーニング法の有用性を比較する研究が必要である事を、医療機関におけるDV発見政策を施行しようとする政府に知らしめなければならない。

【開催日】
2014年10月1日(水)