―文献名―
Devan Kansagara, MD et al. Screening for Hepatocellular Carcinoma in Chronic Liver Disease A Systematic Review
―要約―
【Background】
ガイドラインではハイリスク患者の肝細胞癌の定期的なスクリーニングを推奨しているが、そのエビデンスレベルは不透明である。
【Purpose】
慢性肝炎患者のHCCスクリーニングついての有益性と有害性についてレビューすること。
【Data Sources】
MEDLINE, PsycINFO, and ClinicalTrials.gov に関しては検索可能な時期から2014年4月まで
Cochrane databasesに関しては検索可能な時期から2013年6月まで
【Study Selection】
英語の研究で観察研究、スクリーニング群と非スクリーニング群の比較研究、有害事象の研究、スクリーニングの間隔に関する比較研究
【Data Extraction】
最も重視したものは死亡と有害事象である。
個々の研究の質とエビデンスの強さをパブリッシュされているクライテリア(文献16参照)を用いて2人でレビューした。
【Data Synthesis】
13,801から22の研究がinclusionされた。
総じてスクリーニングの効果におけるエビデンスは非常に低かった。
一つの大規模研究で定期的な超音波スクリーニングにおけるHCC死亡率が低い結果であった。 (83.2 vs. 131.5 per 100,000 person-years ;rate ratio, 0.63 [95% CI, 0.41 to 0.98]) しかし、この研究では方法論的限界があった。(baseline characteristicsが不透明、ランダム化作業が不透明、死亡のみがアウトカムであり追跡率に差があるなどの問題あり)
他の研究ではB型肝炎患者の定期的なAFP検査で生存に関する有益性は認めなかった。全死亡/100人年が1.84 vs 1.79 (P=NS)であった。
18個の観察研究ではHCCの診断に至った段階でスクリーニングされていた患者群では、臨床的に診断された群よりも早期のステージであった。しかし、リードタイム・バイアス、レングスタイム・バイアスが交絡していた。
2つのスクリーニングの間隔に関する研究では、短い間隔(3~4か月)と長い間隔(6~12か月)で生存率に差が出なかった。
有害事象に関しては良質な研究がなかった。(確証的検査であるCT、MRI、肝生検のリスクを扱ったものはあった。)
【Limitations】
英語研究のみであったこと。このエビデンスは方法論的な問題と研究数が少ないことで研究限界があった。
【Conclusion】
慢性肝炎患者のHCCスクリーニングによる死亡率に対する効果は非常に弱いエビデンスしかなかった。
スクリーニングは早期肝細胞癌を同定できる可能性はあるが、現段階では臨床的な診断よりもシステム化されたスクリーニングが生存の上で有利かどうかは定かではない。
<参考①>
(lead time bias)
検診発見がんと外来発見がんとの間で生存率を比較する際に問題となる偏り。がんの発生から死亡までの時間が検診発見群と外来発見群の両群で等しい(すなわち検診の効果がない)場合でも、検診で早期診断された時間の分(リードタイム)だけ、検診発見がん患者の生存時間は見かけ上長いことになり、したがって見かけ上の生存率も上がることになるという偏り。生存期間の始点が早期発見の分だけずれるという意味から、ゼロタイム・シフトとも呼ばれる。
(length time bias)
スクリーニングで診断される疾患は、通常の診療で診断される場合よりも緩徐に進行する病変が多いかもしれない。というのも、進行が速い病変はスクリーニング受ける間もなく、症状が顕在化し受診して病変を発見されることになる。緩徐進行性の病変は長く体内に病変が存在しているのでスクリーニングで発見されやすい。スクリーニングが実際よりも有効であるように見えてしまう。
<参考②>
AASLD米国肝臓病学会ガイドライン
recommendation…半年ごとの腹部エコー(1年毎ではなく)
期間として3カ月と6か月でどう違うか?
局所病変の検出に差なし
10㎜以下の病変の検出率は3カ月で有利だが、
HCC発生累積数、代償不全、肝移植、生存率に関して差なし
not recommend…
腹部エコーとAFPの組み合わせ(コスト高と疑陽性↑)
AFP単独(感度、特異度が低い)
CT(疑陽性↑、コスト高、放射線量の問題)
<日本癌治療学会> http://jsco-cpg.jp/item/02/intro_03.html
【開催日】
2014年10月15日(水)