【文献】
Recent developments in secondary prevention and cardiac rehabilitation after acute myocardial infarction. BMJ Mar 2004; 328: 693 – 697; doi:10.1136/bmj.328.7441.693
【要約】
心筋梗塞後の患者では、(1)抗血小板薬、(2)ACE阻害薬、(3)スタチン、(4)βブロッカー のルーチンの使用が大規模臨床試験にて推奨されている。
(1)抗血小板薬
・ 最近のある無作為試験において、アスピリン低用量(75-150mg/日)の使用は二次予防に有効であることが示された。500-1500mg/日の高用量使用はより有効というわけではなく、副作用である胃腸障害をきたす。
・ Clopidogrel 75mg/日はアスピリンアレルギーや胃腸障害のある患者の代替療法として有効であるが、高価である。
・ Clopidogrelをアスピリンに9ヶ月追加する治療は急性冠症候群の患者においてさらに心血管イベントを下げるが、出血のリスクが増加するためルーチンで用いるべきでない。
(2)ACE阻害薬
・ 心筋梗塞後のACE阻害薬使用は、心機能低下症状のある患者や左室機能障害をきたしている患者に推奨されているが、最近の2つの無作為試験では全ての患者において突然死や心血管イベントを優位に減らしたという結果であった。
(3)スタチン
・ スタチンは、心筋梗塞後の患者において心血管イベントや突然死のリスクを減少させる。これは女性や65歳以上の患者に適応となるが、ある無作為試験では性別、年齢、治療前のコレステロール値に無関係という結果であった。
(4)βブロッカー
・ βブロッカーは死亡率、心筋梗塞再発率を減少させる。2つの研究ではβブロッカーを使用することによって心機能を維持されることが確認されている。
・ 最近のある大規模なシステマティックレビューでは、うつ病のリスクを著明に増やすわけではなく、倦怠感や性機能障害のリスクを軽度上昇させるにとどまった。
・ コクランレビューでは軽症から中等度の呼吸器疾患をもつ患者において、短期間の治療の間は呼吸器状態を悪化させないと結論づけており、喘息やCOPD患者 におけるβブロッカーの禁忌について疑問がでてきている。そして、心不全や高血圧、不整脈の患者においてβブロッカーを使用する利点は欠点よりも大きいと 結論づけた。
・ ある研究では喘息やCOPDをもつ心筋梗塞後の患者において、βブロッカーを使用している患者では40%の死亡率の減少が報告され、心不全の患者や80歳以上の患者で有益であることが示された。
・ 最近のある研究では、重度の末梢動脈疾患をもつ患者にβブロッカーを使用すべきであるが、重度ではない末梢動脈疾患においてはあまり有効ではないと示している。
組織的ケア
・ 最近の研究では、心血管疾患の二次予防において組織的ケアが有効であるという結果がでている。プライマリケアと病院の良いコミュニケーション、多面的な業務が一般的に成功するテーマである。
・ 診療所での看護師による心筋梗塞の二次予防も予後の改善を認める可能性がある。
心臓リハビリテーション
・ 心臓リハビリテーションの目的は、患者の機能を適切なものにすることと生活の質を上げること、心血管イベントの再発を防ぐことである。
・ 包括的なリハビリテーションプログラムには、運動トレーニング、行動変容、精神的サポートが含まれる。
・ 最近のコクランレビューでは、心臓リハビリテーションを行った場合に致死率において27%の減少を認めた(オッズ比0.73)。
心理社会的介入
(1)禁煙
・ 冠動脈疾患を持つ患者が禁煙した場合、心血管イベントの再発を50%減少されるという研究がなされているが、禁煙する利点のでるタイミングやリスク減少 の割合は、現在議論されているところである。最近のシステマティックレビューでは、冠血管疾患を持つ患者が禁煙した場合、致死率を0.64に減少させた。
・ 禁煙は、冠血管因子を持つ全ての患者において最優先事項である。プライマリケア医にとって、生活習慣の改善、とくに禁煙を成功させることは挑戦である。
(2) 心理学的プログラム
・ 心筋梗塞後、うつ病は一般に生じやすい。大うつ病は15-20%の患者で生じ、大うつ病にならなくとも同様のうつ症状をきたすことも多い。
・ 心筋梗塞後のうつ病や社会的サポートの欠如は致死率を上昇させるが、その正確なメカニズムは知られていない。
・ 最近の研究において冠血管疾患を持つ患者に対して認知行動療法や抗うつ薬を使用したが、29ヶ月後のfollow upにおいても心筋梗塞の2次予防に対して有意な改善を認めなかった。
【開催日】
2010年4月28日(水)