―文献名―
Phillips SM,at el.Frequency and prioritization of patient health risks from a structured health risk assessment.Ann Fam Med. 2014 Nov-Dec;12(6):505-13.
―この文献を選んだ背景―
我々は日々時間がない中で外来診療をしているが、なかなか行動変容にまで結びつけることができないで不全感を抱いてはいないだろうか?効率よくアプローチする手段はないだろうか?今回、それに関するアイデアの一つとなりうる論文を紹介したい。
―要約―
【目的】
頻度と患者が記述した変化への受け入れを記述し、プライマリケアでの13の健康リスク因子の重要性を議論すること。
【方法】
9つのプライマリケア診療所の患者1707人がMOHR(My Own Health Report) trialの一環でgeneral(一般的な)、behavioral(行動上の)、psychosocial(心理社会的な)リスク因子を報告した。BMI、健康の状態、食事、身体活動、睡眠、薬物使用、ストレス、不安または心配、抑うつである。我々はそれぞれの回答をat riskかhealthyに分類した。また、患者が変化するための準備ができているか、かつ/もしくは、ケア提供者と同定されたリスク因子について議論したいと思っているかを示した。患者が最も重要と考えている変える備えがあるリスク因子を1つ選んでもらった。因子ごとや因子間の回答された頻度の解析や患者背景ごとや施設間での多様性を検討した。
【結果】
患者は平均5.8個(SD=2.12;rage,0-13)の不健康な行動と心理的なリスク因子を持っていた。約55%の患者が6個以上リスク因子を有していた。患者は1.2個について変えたいと考えており、0.7個議論したいと考えていた。最も一般的なリスク因子は不適切な「果物/野菜摂取」(84.5%)、「過体重/肥満」(79.6%)であった。患者は「BMI」を改善したいと考えている人が最も多く(33%)、次いで「抑うつ」(30.7%)であり、議論したがってたのは「抑うつ」(41.9%)、「不安、もしくは心配」(35.2%)であった。結論として、患者は最も重要視していたのは「健康状態」であった。
【結論】
プライマリケアにおけるルーチンの包括的健康リスク評価でおそらく行動と心理社会的な健康リスクの多くを同定できる。患者の優先度を確認することによって、ケア提供者と患者とが診療をより良くマネジメントでき、行動変容につなげていけるものと考える。
【限界】
・ランダム化されていない。一般化可能性も限界がある。(様々な診療圏、患者規模など診療所選択には
配慮しているが)
・その後、医師などへ情報が行き、ケアに活かされるなどの流れが十分患者に伝わっておらず、回答が
不十分になった可能性がある。
・既往歴、通院歴、患者医師関係などを確認していない。
・横断研究であるが故、日々の生活を含んだコンテクストや患者医師関係等のリスクを把握できて
いない。
・時間変化、最終的なMOHRを用いた結果を評価できていない。
・リスクの数が多すぎた可能性がある。
―考察とディスカッション―
家庭医の外来は扱うプロブレムの多さもあり十分な時間はない。その中で患者の関心事、潜在的な問題にしっかりと効率よくアプローチする必要性は大きい。今回、この文献では彼らが健康リスクと考えている事項をピックアップすることができ、かつ改善したいと考えているリスクや、医療者と相談したいと考えているリスクが浮き彫りになった。これは米国の研究であり、全てを目の前の患者にあてはめることは難しいが、一考に値する。また、これらの質問を診療所だけで施行し、介入を行うだけではなく、保健師や他の団体と協力しながら活用することも考えると良いと思われる。
みなさんならこの情報をどのように活用できそうですか?
【開催日】
2015年7月22日(水)