【文献】
Roger C, Paul S: Will This Patient Develop Persistent Disabling Low Back Pain? JAMA; 303(13) 129501302, 2010. (Rational Clinical Examination)
【要約】
(この文献の目的)
腰痛が長引いてこじれやすい患者を予想できるここのリスクファクターの有用性とリスク予想ツールをシステマティックにレビューすること。
(データソース)
MEDLINE,EMBASE。
(文献のInclusion Criteria)
発症して8週以内の腰痛患者をProspectiveに経過を追い、長引いてこじれてしまう腰痛の予測因子をlikelihood ratios(LRs)を計算できる形で評価しているもの。
(結果)
20の文献、10842人の患者が今回のsystematic reviewに含まれた。
<検査前確率>
過去のプライマリ・ケアセッティングにおけるリサーチでは急性の腰痛の
休職や失業保険に対する検査前確率: 11%(3~6か月後),11%(1年後)
長引く疼痛や生活機能低下,複合アウトカムに対する検査前確率: 26%(3~6か月後),21%(1年後)
<個々のリスク因子>
①人口統計的な因子(年齢、性、教育レベル、喫煙、体重)はそれぞれLRは1前後であり有用とは言えない。
②職業関連の因子
初診時にすでに失業保険を受け取っている患者では1年後のLRは1.4。
初診時に仕事に対する満足の低い患者では1年後のLRは1.5。
身体的にハードな仕事の患者では1年後のLRは1.4。
③健康状態
全体的な健康度の低い患者ではLR 1.6(3~6か月後),1.8(1年後)
精神疾患を持つ患者ではLR 1.9(3~6か月後),2.2(1年後)
過去の腰痛のエピソードではLRは1前後であり、有用ではない。
④診察所見
初診時の強い痛み LR1.7(3~6か月後),1.3(1年後)
初診時の生活機能低下 LR1.4(3~6か月後),2.1(1年後)
不適切な対処行動(痛みに対する不安を避けるような行動パターン) LR2.2(3~6か月後),2.5(1年後)
初診時神経根の症状 3~6か月後,1年後ともにLRは1.4
Nonorganic sign(身体的な痛みとは思えない身体所見)が認められる患者 LR2.5(3~6か月後),3.0(1年後)
<リスク予想ツール>
いくつかの文献は独自にリスク予測ツールを提案していたが、利用を推奨するほどの十分なエビデンスは得られなかった。
(限界)
それぞれの文献がそれぞれにリスク因子を定義し、「こじれた腰痛」とういものを定義していること。
LRを計算できない多くの研究が解析から除かれていること
腰痛の真の原因については言及していないため、そのうちのいずれかが「長引く、こじれた腰痛」と関連している可能性があること。(実際には痛みの原因を特定することは難しいため非現実的な話ではある)
解析法がそれぞれの文献でずれがある。
【開催日】
2010年5月26日