~BNPに基づいて治療を行っていくことは心不全管理に有用か?~

【文献】
Pfisterer M et al. BNP-guided vs symptom-guided heart failure therapy: the Trial of Intensified vs Standard Medical Therapy in Elderly Patients With Congestive Heart Failure (TIME-CHF) randomized trial. JAMA. 2009 Jan 28;301(4):383-92.

【要約】
背景
心 不全の治療において、Nt-BNPに基づいて行う治療が症状に基づいて行う治療よりも優れているかどうかは定かではない。種々の研究があるようだが、どれ もサイズが小さかったり、フォローアップ期間が不十分であったり、詳細が論文に記載されていなかったりと問題があった。
さらに高齢者は心不全の症状も顕在化しにくくあてにならない。それにもかかわらず薬に対しての有害事象なども多いため非常に治療が難しいが、高齢者に対する心不全管理に対してのエビデンスも乏しい。

目的
心不全において、Nt-BNPに基づく治療と症状に基づく治療の結果を18か月で比較すること。

デザイン,セッティング,患者
randomised controlled multicenter trial
対象者…収縮障害性心不全(EF<45%)であり、NYHA2度以上で1年以内に心不全で入院歴があり、Nt-BNPが正常上限の2倍以上である60歳以上の患者499人。Baselineに差はない。
(強いて言えば、年齢別の比較で75歳以上のほうが
症状が重症であり、BNPも高値であるにもかかわらず、EFが良いくらい)
追跡期間…18カ月
場所…スイスとドイツの15か所の外来診療センター
期間…2003年1月~2008年6月

介入
NYHA2度以下の症状に抑えるように治療していく群(症状に基づいた治療群)
BNPが正常上限の2倍以内とNYHA2度以下に保つよう治療していく群(BNPに基づいた治療群)
(75歳未満では 400pg/ml以下、75歳以上では、800pg/ml以下)

結果
Primary end point
・Hospital free survival(在宅生存率)はBNPに基づく心不全治療群と症状に基づく治療群とで同等(41% vs 40%;HR,0.91[95% CI,0.72-1.14];P=0.39)
・18か月にわたる追跡期間中のQOL測定基準は改善したが、2群間の改善は同等であった。
Secondary end point
全年齢における比較
・HF Hospital free survival(心不全に関する在宅生存率)で両群間に差があった
(72% vs 62%;HR,0.68[95% CI,0.50-0.92];P=0.01)
年齢別(60-75歳、75歳以上の2群)における比較(Figure6,7.)
・60~75歳においてBNPに基づく治療群で結果が改善したが、75歳以上では改善しなかった。(P<0.02)   結果とは...在宅生存率,死亡率、心不全に関する在宅生存率 <参考> 心不全に対する治療的介入率  Baseline1カ月3か月6か月 sympton-guided group77%61%53%52% BNP-guided group86%95%91%90% しかし、症状の改善も、BNP値も両群とも有意差がなかった。(Figure3.) 症状の程度(NYHA分類)とBNP値との関係性についてFigure4.に記載があるが、かなり幅があることが分かる。これによりBNPに基づく治療群では薬物の利用される率が増えてしまうことを示唆する。 有害事象に関して 両群間に有意差なし。(腎機能障害、低血圧も有意差なし。)  しかし、年齢を加味すると、 75歳以上の患者で10.5% vs 5.5%; P=0.12 60-75歳の患者で3.7% vs 4.9%; P=0.74 結論 BNPに基づく心不全治療群は症状に基づく治療群と比較し、臨床的なアウトカムやQOLを改善しなかった。 【開催日】 2010年6月9日