【文献】
#1
Barbara J. Stephenson et al.: Is This Patient Taking the Treatment as Prescribed? JAMA & ARCHIVES JOURNALS, Chapter 15, p173-182, McGrawHill Medical.
#2
なぜ、患者は薬を飲まないのか?「コンプライアンス」から「コンコーダンス」へ クリスティーヌ・ボンド編集、岩堀禎廣/ラリー・フラムソン翻訳、薬事日報社.
【要約】
臨床評価の重要性
コンプライアンス不良は多く、臨床医はそれを改善する手助けが出来、患者の有益性を高めることが出来るため、臨床医は患者の服薬コンプライアンスを評価すべきである。長期にわたる自己管理薬治療の平均的なコンプライアンスは、治療継続中の患者でおよそ50%である。
コンプライアンス不良の本質
投 薬内容を患者はしばしば、複雑、不便、厄介(embarrassing)、あるいは高価と感じる。特に慢性疾患では、長期の利益より短期の不都合の方が重 視される。コンプライアンスの「規定因子」に関して、年齢、性別、人種、教養、学歴といった社会統計学的因子との関連はわずかである。その一方で、コンプ ライアンスは精神疾患を有する患者は低くなりがちで、疾患に伴う機能障害をもつ患者で高くなる傾向にある。外来待ち時間が長く、再診間隔が長いと、予約時 に受診せずケアから脱落する。複雑で、コストがかかる治療内容だったりその治療期間が長くなったりするほどコンプライアンスは低くなる。
コンプライアンス不良の評価
次の3つのステップで、ほとんどのコンプライアンス不良の患者が同定できるだろう。
1.予約日に受診しない。
2.十分な量の治療に対する反応が乏しい(あるいはなくなる)
3.コンプライアンスが疑わしい患者に対しては、より適した方法をTable15-2から選んで用いる。
患 者への質問が最も幅広く適応できるコンプライアンス評価法である。注意深く質問することで半数以上を同定できるだろう。実際にどのような薬剤を服用してい るか、いつそれらを服用しているのかを助言を与えずに尋ねるべきである。治療内容への異なった理解やアドヒアランスが明らかになるかもしれない。自己申告 について調べた研究では、質問の前に「多くの人々がいくつかの理由により自分の薬を服用するのにしばしば困難を感じています」と前置きし、予断を与えず、 威嚇しない方法で「あなたは今までに自分の薬のどれかをふくようしわすれたことがありますか?」と尋ねている。その際、患者が前日や前の週に薬を服用し忘 れたことを認めたとしても、依然として実際のコンプライアンス率を過大評価しやすい。(ある研究では17%にも及ぶ)
コンプライアンスの臨床的評価の正確性
Gilbert らの研究によると、プライマリケア医が自分の良く知っている患者のみに対してコンプライアンスの推定を行ったところ、不良なコンプライアンスを検出する臨 床的判断の感度は10%に過ぎなかった。Richardsonらの研究では、受診は服薬コンプライアンスを保証するものではないことと、コンプライアンス は非受診者の方がずっと悪いことを確認した。自己申告に関するコンプライアンス不良(75-100%)未満の錠剤服用と定義)の感度は55%、特異度は 87%(LR+4.4)であった。しかし、陰性尤度比は0.5であり、服薬を順守しているという自己申告については、コンプライアンス不良があるかもしれ ない。(Table15-3)
Original Review:まとめ
患者のコンプライアンスに関する情報はコンプライアンスを高める効果的な方法を効率的に適用することにつながる。
~以下、UPTODATEより~
新たな知見
アドヒアランス評価のため、「あなたは先週、いずれかの薬を飲み忘れましたか?」という質問は錠剤数の計測を参照標準として、コンプライアンス不良(100%未満の服薬)の患者の55%を検出し、特異度は87%になる。(LR+4.3)
最新情報の詳細
ア ドヒアランス不良は医学的、社会的、経済的な重要性に加え、有害な健康アウトカムとも関係する。一般的に患者は自身の服薬アドヒアランスを過大評価しがち で、患者が治療に反応していない限り、アドヒアランス不良を同定することは難しいかもしれない。アドヒアランスを患者が過大報告しないためには次の4つの ことが必要となる。1.服薬方法に関する明確な指示を与えること、2.患者が社会的に望ましい回答をしないようにアドヒアランスを正しく報告することの必 要性を指導および推奨すること、3.予断を与えず、威嚇をしないように現在の服薬状況について質問すること、4.正確な申告への障壁を突きとめること。こ れらの手段はルーチンに行われるべきである。
結果(MEMSの説明については省略)
患者自身が薬剤を服用していないという場合には正 確である傾向を示している。(=患者が自身の薬剤を処方通りに服用するのが難しいという場合は、真実を話している。)(Table15-4) 患者に自身 の薬について、名称、服用目的、いくつの錠剤を服用しているかなど、既に知っていることと信じているところを尋ねることは有用である。最も一般的な副作用 について尋ねることで、より開かれた議論を患者に促すことができる。これらを尋ねる前後で、処方薬について既に知っていることや薬に対する信条を尋ねるこ とは有用である。
UPTODATE:まとめ
<事前確立>
およそ50%の患者が処方通りに服用していない
<服薬アドヒアランス不良が考慮されるべき群>
・「全ての」患者が評価されるべき
・薬剤に期待される反応をしめさない患者
・複数または複雑な投薬内容をうけている患者
・高齢者
・思春期
・認知症の患者
・精神疾患のある患者
・無症状の疾患(例えば高コレステロール血症や高血圧など)に対する治療を受けている患者
<服薬アドヒアランス不良の可能性の検出>
「あなたは先週、いずれかの薬を飲み忘れましたか?」と尋ね、「はい」と答えた全ての患者はアドヒアランス不良について考慮すべき。(LR+4.3)
Morisky質問票「1.あなたは今までに服薬をわすれたことがあるか?2.あなたは服薬時間にこだわらないか?3.調子がいい時は薬をやめるか?4. 調子が悪い時に薬をやめるか?」について、どの質問にも「いいえ」であればアドヒアランスが良好である可能性が高くなる。(LR-0.36)
【開催日】
2010年8月18日(水)