【文献】
アイリーン・モロフ・ラブキンら著.”第三章:スティグマ”.クロニックイルネス.医学書院,2007,p43-64
【要約】
《イントロダクション》
スティグマは社会的な”烙印”であり、負の価値判断を与え社会的アイデンテンティを損なわせるものである。
この概念に関して、私たち一人一人が自分の思いと行動を注意深く検討する必要がある
「正常な人々」は誰でも、故意にまたは別の方法で異なる人々をスティグマ化し、社会の中での自分の安定感を最大限に確保しながら自分たちの不安を最小限にする傾向を持つ
<社会的アイデンティティ>
社会的アイデンティティは以下の3つを含む ①身体活動②仕事上の役割③自己の概念
これらのどれかを変化させるものが個人のアイデンティティを変化させ、スティグマが生じる
<乖離としてのスティグマ>
期待される社会的アイデンティティと、現実の社会的アイデンティティの乖離や差異がスティグマとして定義される
・損なわれたアイデンティティ
病気だけでなく、その病気が与える脅威、それに伴う罪や恥の意識がスティグマとなる
例:アルコール依存症、AIDS患者、てんかん、ダウン症、高齢者でさえも
スティグマの存在下では個人の価値がスティグマの影響を強く受けるため、その疾患の持つ多様性も無視されてしまい、またその他の個人的な特徴も覆い隠されてしまう
・顕在型と潜在型
顕在型は目に見える手掛かりを伴う 潜在型ははっきりと欠陥が見えない
<スティグマの類型>
① 身体的相違(身体障害者、高齢者など) ・・・期待と現実の身体的状態の差異
② 特徴的な欠点(AIDS、同性愛など)・・・社会的認識や文化からの派生
③ 偏見(女性、国籍など)・・・別カテゴリー・グループの特徴への歪んだ認識
これら3つは重複し、それぞれが強化される。また一度スティグマが付与されると、その原因が取り除かれたとしても、その歴史のみで永久にアイデンティティが損なわれる。
<スティグマとしての慢性疾患>
スティグマは社会の価値観と慢性疾患の現実の衝突から生じる。
また病因を特定できないという特徴は、多くの慢性疾患においてスティグマの一因になる。
スティグマは本人とその家族の不公平な治療に結びつく可能性がある。
《スティグマのインパクト》
<スティグマを付与されている人による他者への反応>
無視、孤立、二次的利得、抵抗、素通り、偽装工作
<スティグマを付与されていない人々への、スティグマを付与されれている人々への反応>
価値の値引き、ステレオタイプ、レッテル貼り
<保健医療職者のスティグマへの反応と態度>
スティグマは学生時代の教員やスタッフに感化されやすく、また実際に出会ったクライエント
との出会いや相互作用で変化する
また医学生は自分の健康問題に付与される社会的スティグマを過度に認知し、それを開示する
ことで自分の専門職としての立場が危ぶまれるのではという深い懸念を持つ
《スティグマを付与された人へのインタベンション》
<自己への反応:態度を変えること>新たなイデオロギーで認識信念パターンを変化させる
<スティグマとサポートグループ>”同類”の人々に生き方とコミュニティを提供する
<支援者グループの創出>”事情通”による繊細な理解と、恥を感じさせられることのない関係
<アドボカシイ>権利擁護によるサポートと代理人機能はスティグマ払しょくの手段となる
<障害の定義の変化>かけがえのない人として対応されたり、重要他者によって受け入れられたりすることで、スティグマを付与された人が自分の価値について認識を変える
<専門職者の姿勢:治療とケア> スティグマの管理において①能動受動モデル、②指導協力モデル、③相互参加モデルのどれが適切かを決定することが重要。また医療職者に意識化されていないカテゴリー化やステレオタイプを明確にして修正するプログラムが必要。
公衆の意識を高めるために”こんなことにならないように”というメッセージはスティグマを増強する作用を持つことを認識する
《スティグマに関するクライエントの望ましいアウトカム》
心理社会的影響(例:孤立、自尊心の低下、関係の低下、落ち込み・引き籠り)を被らないこと
【開催日】
2010年9月8日(水)