【文献】
Philip D Sloane, et al. Effect of Person-Centered Showering and the Towel Bath on Bathing-Associated Aggression, Agitation, and Discomfort in Nursing Home Residents with Dementia: A Randomized, Controlled Trial. J Am Geriatr Soc;52:1795-1804. 2004.
【要約】
《導入》
(認知症の)パーソンセンタードケアとは?
おおもとは、イギリスの心理学者のJ. キットウッドが提唱。
● パーソンセンタードケアのコンポーネント (参考文献より)
•人間性が失われたのではなくて、見えなくなっているだけとみなす。
•全てのケアの場面で、その人の人間らしい側面を重視する。
•環境やケアを個別化したものとする
•意志決定の共有(Shared-decision making)を提案する
•認知症の方の行動を、その方の視点にたって解釈する
•ケアのルーチンタスク(清拭など)と同等に、認知症の方との関係性に重きを置く。
● 今回の文献の中では以下の一連のアプローチを指している。
・居住者の快適さと好みを尊重する
・行動的症状は、ニーズが満たされていないため起こるとみなす
・居住者の認知機能に合わせたレベルのコミュニケーションを行う
・問題解決的アプローチを用いる
・居住者の快適さのために、環境の調節を図る
《目的》
●介護施設入所中の認知症患者の興奮状態や攻撃的行動を減らすための非薬物的介入(Person-centered showingまたは、Towel-bath)の効果を評価する。
【研究デザイン】
ランダム化比較試験
【セッティング】
15の高齢者福祉施設(Nursing home)
【論文のPECO】
P;入浴介助時に興奮したり、攻撃的行動がみられた認知症利用者69人と介助する介護者37人
E;①person-centered showering
②the towel bath (a person-centered, in-bed bag-bath with no-rinse soap) ①と②はクロスオーバー
C;通常通りのケア
O;AgitationとAggression、入浴時間・入浴が終えられるか、皮膚の状態、皮膚常在菌叢
AgitationとAggressionは Care Recipient Behavior Assessment(CAREBA)というスコアで測定された。
利用者の不快感についても、Discomfort Scale for Dementia of the Alzheimer Typeというスコアで測定された。
《結果》
Primary endopoint
興奮や攻撃的行動
Person centered showering: 53%減少(P<0.001)
Towel bath: 60%減少 (P<0.001)
Control: 減少なし
不快感スコア
Person centered showering: (P<0.001)
Towel bath: (P<0.001)
Control: 減少なし
Secondary endpoint
平均入浴時間は、Person-centered showeringのグループの方が、Towel bathのグループより有意に長かった。(3.3分)
体を洗った部分の多さや皮膚状態、皮膚細菌叢については差は見られなかった。
参 考;David Edvardsson, Bengt Winblad, PO Sandman. Person-centred care of people with severe Alzheimer's disease: current status and ways forward: Lancet Neurol 2008; 7: 362-67
【開催日】
2010年9月15日(水)