~意欲の低下した認知症患者にどう関わるか~

【文献名】
折茂賢一郎、安藤繁、新井健五 共著 廃用症候群とコミュニティケア  医歯薬出版株式会社 p187-195, 

【要約】
Tさん 82歳女性 認知症
・ADLは誘導と指示などの軽介助があればほぼ自立。
・意欲・活動性が低く放っておくとすぐに横になって居眠りする。→自宅で転倒し大腿骨頚部骨折で入院加療
・家族が話しかけても開眼すらしない。
・体を他動的に起こそうとしても、全身に全く力が入らない。

このように、認知症高齢者は「どうせ、何もできないから・・・」、「また、失敗するから・・・」、「何を言ってもわからないから・・・」、「聞こえないから・・・」と放置されやすい。また、問題点(できないこと)を探すとできないことだらけになってしまい、「これはよくなる見込みはない」と判断して放置してしまう。

そこで、「残存能力(できること)」を発見しようとする視点をもち、評価することが大切。
・過去の生活史や仕事、趣味などの「個人」の情報から残存能力を見つけ出す、「昔とった杵柄によるアプローチ」。
・Tさんは東京の女学校を優秀な成績で卒業、読書が趣味だったという話から「昔取った杵柄」は「読書」「活字」「文字」に関連する能力ではないかとアプローチして、「声を出して文章(活字)を読むことができる」という能力が残っていたことがわかった。
・Mさんは和裁の先生をしていたという生活史から、周囲の「危ない!」という反対の声もあったが、「針と糸とタオル」を渡したところ、みごとに雑巾を縫い上げた。

いずれのケースも、発見したアプローチを継続的に実施し、発展させていくことで着実に認知症状は改善をみせた。このように、認知症の高齢者に対するアプローチは、個別に行っていくことが大切である。

【開催日】
2010年12月29日(水)