【文献名】
Wei Zheng, et al.: Association between Body-Mass Index and Risk of Death in More Than 1 Million Asians. N Engl J Med 2011; 364: 719-29.
【要約】
【背景】
BMIと死亡リスクの関連を評価した研究は、ほとんどがヨーロッパ人を対象としている。
【方法】
アジアで19のコホートで集められた110万人以上の人々を対象に、BMIと死亡リスクとの関連を評価した。9.2年間で約120700人の死亡が確認された。
交絡因子の調整はCox回帰モデルを用いた。
【結果】
中国・日本・韓国を含む東アジアのコホートでは、最も死亡リスクが低いのはBMI 22.6-27.5の人々だった。それよりもBMIが高くても低くても死亡リスクの上昇がみられた。BMI≧35の場合は1.5倍、BMI≦15の場合は2.8倍であった。このようなU型の現象は、癌や心血管疾患やその他の原因による死亡のリスクとBMIとの関連にもみられた。インドとバングラデシュを比べたコホートでは、全ての、または癌か心血管疾患以外の原因からくる死亡のリスクはBMI 22.6-25.0の人々より20以下の人々で上昇していた。また一方で、BMIが高くなることで全てのまたは特異的な原因からなる死亡のリスクが過度になることはなかった。
【結論】
アジア人では、標準以下の体重が死亡リスクの増大と関連していた。BMI高値による死亡リスクの上昇は、東アジアではみられたが、インドとバングラデシュではみられなかった。
【考察とディスカッション】
中国・日本・韓国といった東アジアではBMI 22.6~27.5の人が最も死亡リスクが少ないという結果であり、
今後の外来診療における患者に対する指導が影響を受ける可能性がある。
理想体重(BMI=22)を基準とした保健指導がなされやすい昨今であるが、見直す必要があるのかも知れない。
データは対象者の年齢、性、教育レベル、居住地(都市部か郡部か)、婚姻関係、基礎疾患に関する状態といった交絡因子について調整されたものであり、BMI22.6~27.5の範囲を超える肥満、やせについても注意は必要であろう。(論文のdiscussionでは喫煙歴が交絡因子として取り上げられていないことが述べられている)
ただし、この範囲を超える肥満、やせの人に対して減量や太ることを指導すると結果を改善するかどうかについては今後の研究が必要である。
【開催日】
2011年3月2日(水)