【文献名】
Villareal DT et al.Weight Loss, Exercise, or Both and Physical Function in Obese Older Adults.
The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE 2011 364;13 1218-1229
【要約】
<背景>
肥満は年齢による身体機能の低下を助長する。そうなると高齢者では脆弱性の原因となり、QOLは低下し、老人ホームに入所につながる。しかし肥満高齢者に対する減量のエビデンスはない。
<目的>
食事療法と運動療法で、肥満高齢者の身体機能は改善されるのかを知る。
<デザイン>
randomized controlled trial 観察期間は52週間(1年間)
<対象>
志願したBMI30以上の、65歳以上の高齢者107人
<介入>
全ての参加者にカルシウム1500mg/日、ビタミンD1000IU/日を投与。
①コントロール(毎月のフォローの際に健康的な食事の一般的な情報提供のみ)
②食事療法のみ(500?750kcal減。毎週集まり、食事療法、行動療法を受ける。)
③運動療法のみ(PTによる毎週90分のエアロビ、負荷訓練、柔軟、バランス。)
④食事と運動(②+③)
<アウトカム>
・Primary outcome:modified Physical Performance Test(以下PPT)= 9つの作業
・Secondary outcome:VO2peak 、Functional Status Questionnaire、体格(体重、脂肪重量、大腿の筋量、大腿脂肪重量)、骨塩濃度、強度/バランス/歩容specific physical function、QOL(36-item short-form health survey)
<解析>
ITT解析されている(Figure 1. p1222)
<結果>
参加者のcharacteristicsは有意差なし(Table 1 p1223)
追跡率93人/107人=87%
○Primary outcome
modified Physical Performance Testの上昇
・PPTでは④>②、③。更に②、③、④>①
○Secondary outcome
・VO2peak ④>②、③
・Functional Status Questionnaireでは④>②
・減量:②食事で10%、④で9%、①と③は減らなかった。
・減量と骨塩密度(骨盤)の低下:④<②
・強度/バランス/歩容の改善は④>①②③
・副作用は、運動による筋骨格系の怪我を含め、少数。
<discussion>
・まとめ:肥満高齢者に対し、食事療法、運動療法は単独でも身体機能を改善し、前弱性を改善させる。しかし減量と一般的な運動を組み合わせることで、単独よりもさらに身体機能が改善されるかもしれない。
・副作用:食事療法で骨塩量低下。
運動療法で怪我。事前に評価することで防げる。
・強み :randomized controlled trial、介入期間が長い、主観的/客観的身体機能評価を使用
高い追跡率
・limitation:志願者による研究なので、一般的な肥満高齢者に適応できないかもしれない
サンプルサイズが小さいため、高い教育を受けた白人女性が多いため、一般的な肥満高齢者に適応できないかもしれない。脆弱性が高い高齢者に、今回の介入が安全かは述べていない
【考察とディスカッション】
日本でも65歳以上の肥満者は、ある程度散見される印象である。この論文から、高齢者においても食事療法、運動療法はQOLの改善において有効である可能性がある事がわかった。外来でであう患者をこの論文に適応できるかは、人種が当てはまらない。また患者の身体機能を詳細に評価しなければ今回の研究の参加者と同程度なのかは分からない。
若年者でも特定健診を行って、肥満患者を中心に食事療法、運動療法にて介入される事がある。若年者では生活習慣病からの脳梗塞、心筋梗塞などの主要臓器の致死的な疾患の予防が目的だが、この論文では高齢者では身体機能、QOLの改善が目的である。
以下、全体でのディスカッション。
日本の保険診療の枠で同様の運動を作り出す(理学療法士)のは難しい。コミュニティの力を利用したい。
【開催日】
2011年5月25日