【文献名】
David Price et al. Leukotriene Antagonists as First-Line or Add-on Asthma-controller Therapy. The New England Journal of Medicine,May 5,2011
【要約】
<Background>
喘息治療研究のrandomized trialsa
<Methods>
・喘息治療において
①第一選択である吸入ステロイドとロイコトリエン拮抗薬(LTRA)
②すでに吸入ステロイドを導入している患者へ追加治療として
長時間作動性β刺激薬(LABA)とロイコトリエン拮抗薬(LTRA)
とを比較した。
・12歳~80歳のプライマリケア患者で喘息関連のQOLが低い人(MiniAQLQスコア6点以下)もしくは不適切な喘息コントロール患者(ACQスコア1点以上)を対象。患者をランダムに以下の2年間のopen-label治療に振り分けた。
①治療の第一選択として、LTRA使用148人と吸入ステロイド使用158人
②吸入ステロイドの追加治療として、LTRA追加170人とLABA追加182人
・Outcome
①Primary outcome ;MiniAQLQ score
②Secondary outcome;ACQscore、RCP3、MiniRQLQ、喘息悪化頻度など
<Results>
両研究①②とも2年間でMiniAQLQスコアは平均0.8-1.0点上昇。
治療2か月の時点で①②ともに、2つの治療間では効果同等(95%CI-0.3~0.3)。
治療2年後は、①-0.11(95%CI -0.35~0.13)、②-0.11点(95%CI -0.32~0.11)で同等とは言えず。
悪化率とACQスコアなどsecondary outcomeは①②とも大差なし。
<Conclusions>
治療2か月後での研究結果では、
①治療の第一選択としてLTRAは吸入ステロイドと同等。
②追加治療においてLABAと同等。
しかし治療2年後ではその同等性は証明されなかった。
グループ間の交絡因子とプラセボグループとの比較がないため結果の解釈は限定的である。
【考察とディスカッション】
・患者への治療割り付けがopen-labelでblindではなく、プラセボとの比較がない。
・喘息の診断方法や治療アドヒアランス(吸入手技/内服頻度/金銭問題など)の問題。
・小児(12歳未満)は含まれていない/小児のデータがなく成人への適応のみ。
・治療間の効果の差は小さく、解析方法により解釈結果が異なり結果を十分臨床に適応するには微妙と思われる。
・イギリスでは吸入ステロイドが第一選択で使われており医者によってはLTRAを割り当てられても他の薬剤への切り替えや追加がされやすい可能性がある。
→短期間では、吸入ステロイドとLTRAとは効果は同等でどちらを選んでも差はない。
長期的効果の同等性は証明されていないがその差は小さい可能性がある。
実際の臨床現場では、薬の効果だけでなくコンプライアンスなども複雑にかかわっているため
確実に使用できる薬剤を選択する現在の治療方針で特に問題なさそうと思われる。
【開催日】
2011年6月1日