【文献名】
辻野元祥,これで決まり!おすすめ処方 糖尿病編,日本医事新報,2011年4月9日;No.4537:42-46
【要約】
糖尿病患者をⅠ~Ⅳの4つのグループに分けて初めて薬物治療を開始する場合および、そこからステップアップする場合の代表的な処方例をあげる。
Ⅰ.痩せ型かつ軽中等症 このグループに入る患者は、中等度のインスリン分泌不全、特にインスリン初期分泌障害に伴い空腹時血糖以上に食後高血糖が目立つという特徴を持つ方が多い。したがって、まずは、食後高血糖を是正する目的で最初の薬剤が選択される。 <処方例>(2~3ヶ月毎に見直し)
Ⅱ.痩せ型かつ重症 グループⅠよりもインスリン分泌不全がより進んだ病態。まず、HbA1cが10%以上あるいは尿ケトン体強陽性の患者はインスリンを導入すべき。HbA1cが8~10%でも可能な限りインスリン導入が勧められる。しかし、最初からインスリン導入の話をすると逃げ出してしまう患者も少なくない。インスリン導入が困難な場合の処方例を示す。 <処方例>(1~2ヶ月毎に見直し)
Ⅲ.中肉~肥満型かつ軽中等症 若干あるいは高度のインスリン抵抗性があり、グループⅠ同様にインスリン初期分泌障害があるとしても高度ではない病態。ターゲットはインスリン抵抗性、次いでインスリン初期分泌障害となる。 <処方例>(2~3ヶ月毎に見直し)
Ⅳ.中肉~肥満型かつ重症 HbA1cが10%以上あるいは尿ケトン体陽性の患者は痩せ型でなくてもインスリンを導入すべき。HbA1cが8~10%の患者では、尿ケトン体陰性であることを確認してメトホルミンを、食事療法が可能であれば、早期からピオグリタゾンを併用するか、DPP4阻害薬を併用する。 <処方例>(1~2ヶ月毎に見直し)
【考察とディスカッション】 糖尿病患者を4つのグループに分け、グループ毎にStepを踏んで治療を組み立てていくという考え方はこれまでも何気なくやってきたことではあったが、今回の記事を読んで、頭の中を整理する事ができた。しかも、DPP4阻害薬などインクレチン製剤も組み合わせた形で整理する事ができた。しかし、DPP4阻害薬とSU薬の併用で重篤な低血糖が起きるなど危険性も把握したうえで治療を組み立てる必要がある。 以下全体でのディスカッション。 現時点ではDPP4阻害薬に関するエビデンスは乏しく、また多くの症例が長期で服薬した場合の副作用なども明らかにはなっていない。今回の文献はエキスパートオピニオンとして参考にすべきものであろう。 ビグアナイド製材やSU剤が経口血糖降下薬の主役であることは当面変わらないだろう。その他の今後のエビデンスの出現に期待したい。 ビグアナイド製剤であるメトホルミンはこれまで1日750mgまでの使用が限度であったが、2250mgまで使用可能な製剤が発売され1年が経過、長期処方が可能になったところである。こちらも注目すべき情報である。
【開催日】
2011年6月15日