【文献名】
大浦武彦,見て・考える褥瘡ケア 創面をみればすべてがわかる ここで差がつくテクニック,
中山書店:p106,2010年9月
【要約】
褥瘡の発生要因でもあり、治癒阻害要因であるものが「圧」と「ズレ」である。これらは治療で排除できる種類のものではなく、ケアこそがその役割を担うことになる。このために、褥瘡においてはケアが非常に重要で、ケアと治療が車の両輪のようにうまく機能してこそ、褥瘡は予防でき、また治癒させることができるのである。
すなわち、褥瘡ケアの質は、いかに「圧」と「ズレ」を排除できるかにかかってくる。
○想像以上に大きい「圧」と「ズレ」
背上げや体位変換時に生じた「圧」と「ズレ」は、想像以上に大きい。背上げをしただけでも「圧」と「ズレ」は背中と殿部に滞留する。そこで、背上げや体位交換時には必ず「背抜き」を行わなければならない。
○背抜き
健常者が姿勢を変えた時、例えば椅子で座位姿勢を変える時、無意識ながら、最後に必ず少し腰を浮かして姿勢を整えるが、背抜きでは、その動作をケアで行うことをイメージすればよい。健常者が無意識に行うその動作が障害をもつと容易にできなくなるので、それを支援するということである。
姿勢を変えた時、「圧」と「ズレ」が過剰にかかる部分を少し浮かせるようにして、そこに手のひらをさっと通す。この時’マルチグローブ’などを用いると、適切に確実に「圧」と「ズレ」を排除できる。
○褥瘡と患者に優しい体位交換
背抜きを行うことは前述の通りであるが、体位交換の方法そのものを工夫することも必要である。’マルチグローブ’をはめた両腕を、患者の身体の下(特に仙骨部の突出した部分)をくぐらせるようにして、そのまま患者の身体(特に褥瘡部位)を両上腕にのせたままスライドさせるように体位交換を行うと、「圧」と「ズレ」の発生を大幅に減らすことができる。
この場合、両腕をスライドさせるのであって、患者をもち上げない。
参考動画:http://www.youtube.com/watch?v=yYAG4AE7ys8
【開催日】
2011年8月3日