―文献名―
ジョン・P・コッター,ローン・A・ホワイトヘッド,庭田よう子 訳.「ハーバード流企画実現力」.2011.日経BP社.221p.
―要約―
優れたアイディアを守る、通説と一件相反する5つの原則
i. 攻撃させることによって周囲の関心を引き付ける
反対意見を閉出すと、企画を進行させるために十分な共感や賛同が聴衆の中で高まるだけの注意を集められないため。
ii. 簡潔明瞭で良識にあふれた対応をする
膨大なデータや論理を駆使して反対者をやり込めない。聴衆の関心が離れてしまう。
iii. 敬意を持って接する姿勢を聴衆に示す
聴衆から反感を買わないようにすることが重要。
iv. 少数の攻撃者よりも聴衆の反応を観察する
攻撃に対峙する際、真の問題の核心となるのは大多数の人々の反応である。
v. 事前に準備する
企画に対する攻撃の基本戦略は「混乱」、「遅延」、「嘲り」、「不安をあおる」である。24の攻撃とその対応について準備しておく。
<24の攻撃とその対応(抜粋)>
1.「これまでうまくやってきたのに、どうして変える必要があるのか?」
対応:確かにそうかもしれないが、状況に適応しなかった者がやがて滅びた例を誰もが知っているはずだ。
4.「わたしたちが失敗したと行っているも同然だ!」
対応:あなたがたは必要なツールもない状態で、本当に素晴らしい仕事をしていると言っているのだ。(どちらか一方が正しいではなく、どちらも正しいという方向に導く)
6.「これについてはどうか、あれについては?これは、あれは・・・・・・・・?」
対応:よいアイデアでも、それが新しいアイデアであれば、確実に答えられない多くの疑問が提起されるものだ。(確実に答えられない質問を反対者に多く語らせず、やんわり遮る)
7.「その提案は度を超している」「十分とは言えない」
対応:これからこのアイデアより正しい方向へ踏み出せるし、これ以上遅れることなく進めるはずだ。(方向性の一致を利用して遅延の企てに対抗する)
10.中核をなす価値観を捨て去ろうとしている」
対応:このプランは、わたしたちの伝統的価値観を守るために絶対的に必要なものだ。
14.「どうだ!これは否定できまい!(提案者が知らない厄介ごと)」
対応:その重要性は誰も否定できない。確かにわたしたちはその問題を詳しく調べていない。だが、これまで見つけた潜在的な問題は容易に解決できた。それを踏まえると、新たな問題も、これまでの問題と同様に対処可能という自信がある。(その場で答えようとするのは得策ではない)
16.「かつて試したことがあるが、うまくいかなかった」
対応:過去はそうだったかもしれない。しかし、状況は変化すると、わたしたちの提案はその内容とまったく同じものでもない。(シンプルに対応すべし、違う点を詳細に示す必要はない、新たな反撃を生む)
18.「よいアイデアだが、今はふさわしいタイミングではない」
対応:絶好のタイミングというのは、気分が盛り上がり、何かを実現するために全力を注ぎたいと大勢の人が思うときであり、まさに今がそのときだ。
20.「ここではうまくいくはずがない。わたしたちはほかとはちがうのだから!」
対応:わたしたちはみんなちがうが、一方でまったく同じところもある。
―考察とディスカッション―
本書は反対者を駆逐する方法ではなく、反対者がいるなかで、その他大勢をどのように巻き込んでいくかについての方法を説いている。ともすれば反対者を論理でねじ伏せるような対応がとられがちだが、本書は企画実現のための効果的な立ち振る舞いとはどのようなものなのかを考える一つの視点を提供している。
<ディスカッションポイント>
皆さんは反対意見にあった際にどのような行動をとっていることが多いだろうか?
そしてその行動は果たして効果的に機能しているのだろうか?
【開催日】
2015年1月21日(水)