【文献名】
Prostate-Cancer Mortality at 11 Years of Follow-up
F.H. Schroder and others(N Engl J Med 2012; 366 : 981 – 90.)
【背景】
PSA検診は男性のがん検診として、一般的に用いられているが、USPSTFでは「死亡率の減少は期待できない」として推奨されている検査ではない。調べてみるとその根拠として米国のProstate,Lung,Colorectal,and Ovarian Cancer Screening Trial(PLCO)と、欧州のEuropean Randomized Study of Screening for Prostate Cancer(ERSPC)の2つの無作為化比較対照試験における結果が相反する結果となったため、USPSTFはPSA検診後の過剰治療などの不利益を問題視すべきだと判断し「推奨しない」という判断になったようだった。今回そのERSPCのさらに2年追跡した論文が出ていたので読んでみることとした。
【要約】
<背景>
前立腺癌の死亡率に対するPSA検査の効果を評価したいくつかの研究は異なる結果を示している。
欧州前立腺癌スクリーニング無作為化試験(European Randomized Study of Screening for Prostate Cancer)において,さらに 2 年間の追跡調査による最新の前立腺癌死亡率を報告する。
<方法>
研究はエントリー時に 50~74 歳であった男性 182,160 例で,事前に規定した 55~69 歳のコアな年齢群の162,388 例で行われた.この試験は欧州 8 ヵ国で行われた.スクリーニング群に無作為に割り付けられた男性には PSA スクリーニング検査を施行し,対照群の男性にはそのようなスクリーニングは施行しなかった.転帰は前立腺癌死亡率とした.
<結果>
コアな年齢における11年の追跡調査では、スクリーニング群における前立腺癌死亡リスクの相対的減少は 21%(rate ratio,0.79; 95% confidence interval [CI], 0.68 to 0.91; P = 0.001)であり、コンプライアンスの悪い人を補正すると29%であった。死亡数のARは1,000 人年あたり 0.10 例で,無作為化された男性 1,000 例あたり 1.07 例であった.追跡調査 10 年目・11 年目における前立腺癌死亡のRRは 0.62(95% CI 0.45~0.85,P=0.003)であった.追跡調査 11 年の時点での前立腺癌死亡を 1 例予防するには,1,055 例にスクリーニングへの参加を呼びかけ(the number of men who would need to be invited (NNI)),前立腺癌 37 個を発見する必要がある(the number of prostate cancers that would needed to be detected (NND))と考えられる.全死因死亡率に群間で有意差は認められなかった.
<結論>
さらに 2 年間の追跡調査の解析により,PSA 検査に基づくスクリーニングを行うことで前立腺癌死亡は有意に減少するが,全死因死亡への影響はないという以前の結果が裏付けられた.
【開催日】
2012年3月21日