耳鳴りのマネジメントのメタアナリシス

【文献名】
著者名:Derek J. Hoare, PhD et al.  
文献タイトル:Systematic Review and Meta-Analyses of Randomized Controlled Trials Examining Tinnitus Management.
雑誌名・書籍名:Laryngoscope
発行年:121:1555?1564, 2011

【要約】
<はじめに>
・耳鳴りは英国の10~15%の人が経験する
・騒音や加齢と関連し、不眠・難聴・引きこもり・不安や抑うつなどの陰性感情のいくつかの組み合わせで起こりうる
・英国の健康省は耳鳴りの評価とマネジメントのためのGood Practice Guideを作成
・このレビューではその評価とマネジメントについて、どれくらいのエビデンスが集積されているのかの評価を行った

<資料と方法>
・PRISMA声明(RCTのメタアナリシスの報告質向上のためのQUOROM声明の改訂版)に沿ったシステマティックレビューを進めそのガイドに沿って報告をする

<探索方法と論文選択>
以下のPICOSクライテリアで独立した二名の評価者によって研究を検索した。
P:耳鳴りのあるの成人 
I:健康省のGPGに沿ったマネジメント戦略を行った群 
C:未治療グループもしくは適切なセカンドグループ?の群 
O:妥当性のある耳鳴り(剰音性、不安、抑うつ)ついての質問紙評価 
S:RCTのみ

検索に用いたデータベースは、PubMed、Cambridge Science Abstract ( Medline等含む )、EMBASE
更に追加で手検索で、鍵となるジャーナルやコクランデータベース、参考文献リストの全ての研究を検索した。

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<データの抽出>
独立した二名の評価者によって、対象者数、耳鳴りの重症度、年齢層、介入とコントロールなどで研究を抽出した。

<質の評価>
有る一つの先行文献に沿って、独立した二名の評価者がそれぞれ質の評価を行った

<データー統合とメタアナリシス>
RのRmetaを用いて集められた研究の同質性・異質性を評価した。

<各研究の効果量計算>
Cohen’s d*を用いて効果量を計算した。
*negligible effect:-0.15 =120813_5

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<情報提供/患者教育>
 3つのRCTがあり冊子や教育セッションによって実施され自助には十分な効果はなかったが、自助のための冊子と臨床家の面談は、自助の冊子単独よりもより大きな効果があった。

<補聴器>
 RCTなし

<カウンセリングや精神的支援>
 RCTなし *情報提供/患者教育、リラクゼーション、CBT、TRTとして提供されている

<リラクゼーション>
 3つのRCTがあり、耳鳴りの剰音性の改善に効果があった。抑うつへの効果は存在したものの、不安の改善についてはエビデンスを認めず、分析からメタアナリシスとしては検討できなかった

<認知行動療法*;CBT>
*耳鳴りそのものは有害でなく、それを患者がどう認知・評価するかで惹起される感情・気分が決まるとし、耳鳴りの認知・評価を修正することで気分を改善するアプローチ
11のRCTがあり、その多くに中等度のエビデンスを認めた。
10のRCTのうちの9つに著しい剰音性の改善を認めた。内7つの研究では抑うつについて測定され、2つにのみ改善が認められた。内3つでは不安が測定され、1つでのみ改善が報告されていた。
CBTは自記式の耳鳴り重症度の軽減と関連し、関連する抑うつと不安の軽減については小さなエビデンスのみであった。また対人でのCBTはネットを介したCBTよりも効果量が大きかった。
分析では研究の量と均質性からメタアナリシスが可能であり、いずれも中等度の効果量であった。

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<睡眠調整>
RCTなし

<音治療>
3つのRCTあり、英国に普及している治療であるが、驚くほどその効果は小さく、分析からメタアナリシスとしては検討できなかった

<耳鳴り順応療法 (音治療とカウンセリング);TRT>
過去に一つ研究があったが、今回さらに2つ研究が加わった
TRTの効果は、固定されたプロトコールによるものよりも、その介入(6時間以上の耳鳴りが消えない大きさのワイドバンドノイズへの暴露)への適応性で決まる
また加わった2つのRCTはメタアナリシスとしては検討できなかった

<抗うつ薬>
3つのRCTがあり、3つそれぞれが異なる結果であった。分析からRCTはメタアナリシスとしては検討できなかった

<抗不安薬>
一つのRCTがあり、不安や抑うつの変化は報告されなかった

<夜間鎮静>
2つのRCTがあったが、メタアナリシスとしては検討できなかった

【ディスカッション】
・典型的なプラセボ効果が認められなかった
・TRQが最も利用されていた質問紙調査であった
・抑うつや不安が十分評価されていなかった

【開催日】
2012年7月11日