【文献名】
著者名:尾形和男
文献タイトル:父親の心理学
雑誌名・書籍名:編著 北大路書房
発行年:2011年
【背景】
家族志向型ケアを考えるにあたり、経験しているライフサイクルを想像することは比較的可能である。しかし未経験のライフサイクルを想像することは、経験すみのものよりも難しく、また源家族や現家族のイメージにも大きく影響され、多様なイメージを想像することは難しい。今回、家族療法学会の書籍販売コーナーにて興味深いテキストを見つけ、多角的な「父親」を考える視点を得たので共有する。
【要約】
P34:表3-1
欧米では少なくとも日本以上に、家庭関与を行っている。日本は韓国に次いで二番目
に、父親が子どもと過ごす時間が短い。しかも父親として家事・育児にかかわる時間についての調査でも、日本は低値を示している。
P35:図3-4
国全体としての取り組み①保育の充実度②児童給付の水準③育児休業の有給度。男性の役割の変化軸①女性に対する男性の家事・育児の時間割合②父親による育児休暇の所得率③男性保育者の割合 これらをもとに点数化している。日本はどちらも低く、母親の孤立した育児が進行していることが推測される。
P43:図3-6
親子でどのような行動を一緒に行うかについてみている。アメリカの父親は睡眠・入浴以外はすべての行動において子どもと共有する時間が長い。日本は逆に睡眠・入浴が3国の中で一番長く共有しており、親子で積極的に行動することは比較的短く、休憩する場合は時間が長くなっているのが特色である。アメリカではコミュニケーションを中心とする共同行動が豊富に行われており、子どもはダイナミックな父親とのかかわりを通じ、父親として、人間として多くのことを吸収する機会に恵まれており、日本とは違った存在感であることが推測される。
P77:図5-5
「父性」の発達を促進するであろう要因をモデル化した図である。男性は誕生以来、さまざまな要因の影響をうけながら少しずつ「父性」を発達させていく。
P87 図6-2
家族システムのライフサイクルという考え方があるようなので紹介する。図の見方はステージ1
「結婚して第1子誕生まで」を例にすると、この段階のネガティブな家族のライフタスクは、配偶者との親密感よりも配偶者に対する「幻滅感」を強く抱いてしまうことである。ステージ2は「子ども誕生から小学校に入学するまで」である。ここで問題になるのは、個人・夫婦・親としてのバランスである。この時期のネガティブな家族のライフタスクは閉塞感である。初めての育児で不慣れな上、家事や夫の身のまわりのことなどあれば、母親の心身の疲労は蓄積し、育児不安や育児ストレスへ移行し、閉塞感を抱くことになる。
P133 図10-1
父親に期待される子育ての役割は「権威としての父親(稼ぎ手・子どもの社会化・しつけ)」から近代社会の「父親不在(稼ぎ手)」の時代への移行し、現在では「新しい父親(稼ぎ手・子どもの社会化・子どもの世話)」の模索がされている。そして父親の役割として①扶養者②子どもの社会化の担い手③子どもを世話するもの、の3点をあげて新しい父親とはトータルな存在であるとしている。
【開催日】
2012年7月18日