伝達的・批判的ヘルスリテラシーの糖尿病治療に対する理解度と自己効力感への影響

– 文献名 –
 Impact of communicative and critical health literacy on understanding of diabetes care and self-efficacy in diabetes management: a cross-sectional study of primary care in Japan
Inoue M, et al. BMC Fam Pract. 2013; 14: 40-48.

– 要約 –

背景
 患者の機能的ヘルスリテラシーの役割は糖尿病教育において注目されているが、特に、プライマリ・ケアにおける伝達的・批判的ヘルスリテラシーの役割については十分に調査されていない。伝達的ヘルスリテラシーとはさまざまな形のコミュニケーションツールから健康情報やその意図を引き出し、その情報を状況変化に応じて適応させるスキルである。批判的ヘルスリテラシーとは情報を批判的に分析し、ライフイベントやその時々の場面をよりコントロールするためにその情報を使うスキルである。我々は、ヘルスリテラシーの中でも、特に、伝達的・批判的ヘルスリテラシーが患者の糖尿病治療に対する理解度や自己効力感とどのくらい関連しているかを調べた。また、患者医師関係がどのくらい影響しているかも調べた。

方法
 対象は、日本国内の17のプライマリ・ケアを行うクリニックで診療経験のある2型糖尿病患者326例。対象者にはヘルスリテラシー(機能的・伝達的・批判的)に関するアンケートに答えてもらい、その結果から糖尿病治療に対する理解度と自己効力感を評価した。また、患者–医師間コミュニケーションを評価するために医師の説明が明確かどうかについても調査した。

結果
 269例を解析した結果、伝達的・批判的ヘルスリテラシーは糖尿病治療に対する患者理解度(β=0.558、0.451、p<0.001)および自己効力感(β=0.365、0.369、p<0.001)と正の相関がみられた。医師の説明の明確さは、糖尿病治療に対する患者理解度(β=0.272、p<0.001)と自己効力感(β=0.255、p<0.001)に相関していた。多変量解析の結果、ヘルスリテラシーと医師の説明の明確さは、糖尿病治療に対する理解度と自己効力感にそれぞれ独立して相関していた。

結論
 伝達的・批判的ヘルスリテラシーと明確な患者–医師間コミュニケーションは糖尿病治療に対する理解度と自己効力感にそれぞれ独立して相関していた。伝達的・批判的ヘルスリテラシーの潜在的効果は糖尿病患者とのコミュニケーションや教育の際に考慮すべきである。

– 考察とディスカッション –

 この研究は、プライマリ・ケアの現場で、初めて、機能的・伝達的・批判的ヘルスリテラシーと患者医師間コミュニケーションについて調べたものである。先行研究には専門医が大学病院で実施されたものがあり、プライマリ・ケアの現場で研究を実施することで、専門医と家庭医の違いが明らかになる可能性もあると思われた。

開催日:2013年5月8日