非小細胞性肺がん患者の食欲不振におけるミルタザピンの効果

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。
-文献名-
Arrieta O, Cárdenas-Fernández D, Rodriguez-Mayoral O, et al. Mirtazapine as Appetite Stimulant in Patients With Non-Small Cell Lung Cancer and Anorexia: A Randomized Clinical Trial. JAMA Oncol. 2024;10(3):305-314.

-要約-
・メキシコの3次がんセンターでのランダム化比較試験
・がん性食欲不振の標準治療はなく、ミルタザピンは一つの選択肢として示唆されている。
・先行論文では食欲を評価されていたが、今回は摂取エネルギー及びサルコペニアの割合も評価した
・対象者は、進行したNSCLCで癌治療薬を使用、Anorexia Cachexia Scale(ACS)スコアが32以下の患者
・プラセボvsミルタザピン。ミルタザピン群は15日間15mg投与したのち、30mgに増量した。両群とも栄養指導を行った
・追跡期間は8週間で、4週目と8週目に評価を行った。評価はanorexia cachexia scaleとエネルギー摂取量

・2018年8月から2022年5月に134人をスクリーニングし、条件を満たした86例をミルタザピン群とプラセボ群にランダムに割り付け。
・食欲スコアは、4週目と8週目に両群で有意に増加し、 両群間に有意差は認められなかった。
・4週後、ミルタザピンはタンパク質(22.5g;95%CI、11.5-33.4;P = 0.001)、炭水化物(43.4g;95%CI、13.1-73.8;P = 0.006)、脂肪(13.2g;95%CI、6.0-20.4;P = 0.006)を含むエネルギー摂取量(379.3kcal;95%CI、1382.6-576.1;P < 0.001)を有意に増加させた。脂肪摂取量は8週後、ミルタザピン群の患者で有意に多かった(14.5g vs 0.7g;P=0.02)。ミルタザピン群では、8週後にサルコペニアを示す患者の割合が有意に減少した(82.8% vs 57.1%、P = 0.03)。 ・対象者はうつ病と診断されない人であったが、抑うつを測るHADS-スコアはミルタザピン群で有意な改善を認めた
・悪夢が上昇した、疲労は改善 傾眠はなかった

ディスカッション:
・これまでの研究は15mg投与に留まり、食欲のみを評価していた
・ミルタザピン30mgに増量したが、うつ病のスコア改善もあり、安全性に問題はなかったと考える。傾眠などの有害事象も出現しなかった。
・今回は体重に差が出なかった。対象患者は「食欲不振があるか」であり「体重減少しているかどうか」は考慮しなかった。またサンプルサイズが少なかった。
これらのことから体重変化には差がなかったのでは

・がんの食思不振の標準治療はまだない
例えばオランザピンの低容量の報告はあるが、それらは低体重患者での研究報告だった。今回は正常体重患者が対象である。

リミテーション:
・単一施設での研究
・サンプルの少なさ
・治療中の患者 嘔気に対して少量ステロイドが入っていたケースもあった

【開催日】2024年9月4日