緩和ケア病棟に入院している癌患者が自宅に退院できるかどうかを予測するためのスコアリングツールの作成と検証

―文献名
Diagnostic accuracy of a predictive scoring tool for patients who are eligible for home discharge from a palliative care unit. Nakajima K, Murakami N, Kajiura S, Morita T, Hayashi R.
Ann Palliat Med. 2023;12(2):291-300.

―要約
Introduction:死期が迫った患者にとって、希望する場所(主に自宅)で過ごすことは大きな価値があり、緩和ケア病棟(PCU)は、患者が退院して自宅に帰ることができるように十分なサポートを提供する重要な役割を担っている。PCUに入院しているがん患者が自宅に退院できるかどうかを予測するためのスコアリングツールの作成と検証を試みた。

Method:2016年10月から2019年10月までに日本の533床の総合病院のPCUに入院した全がん患者369名を登録した。アウトカムとして、患者が自宅へ退院したか、病院で死亡したか、他の病院へ退院したかを記録した。主治医は入院時に、(I)人口統計学的変数、(II)患者の一般状態、(III)バイタルサイン、(IV)投薬、(V)患者の症状など、22項目の潜在的尺度項目を記録した。

Results:患者369名の中で死亡場所が特定できない10例を除外した359例を対象とし、モデル開発のために180例、モデルの検証のために179例を分析した。多変量ロジスティック回帰分析により、自宅退院に関連する独立因子として5項目を特定し、予測式を作成した。
性別(女性だと4点)、摂取カロリー(520kcal以上だと19点)、日中介護者(いれば11点)、家族の希望する介護場所が自宅だと139点、入院に至った症状が疲労ではないと7点
★オッズ比7 =7点は、「疲労のない患者は疲労のある患者に比べ在宅退院する可能性が7倍であること」を意味します

カットオフポイント155点を用いた場合、曲線下面積(AUC)値は0.949、95%信頼区間は0.918〜0.981と十分なモデルになった。
検証では、感度、特異度、陰性的中率、陽性的中率、エラー率は75.3%、86.3%、82.2%、80.6%、18.4%であった。

Discussion:PCUに入院している患者が自宅へ退院できるかどうかは、簡単な臨床ツールを用いて予測することができた。このスコアは、医療従事者が自宅への退院を計画するために必要な患者を簡単に特定するための有用なツールとして利用できると考えられる。

《開催日》2023年6月14日(水)