犯罪被害者の心理とその援助について

―文献名
前田真比子, and マエダマイコ. “犯罪被害者の心理とその援助について.” 大阪大学教育学年報 4 (1999): 115-126.

―要約
【要 旨 】
犯罪は、被害者に対して身体的、経済的、社会的に様々な被害を与え、とりわけ精神面での被害は極めて大きく、深刻な問題を生じている。更に周囲の不適切な対応で、被害者は事件後も二重三重の被害にさらされ続けることになる。このような犯罪被害者に対する援助、特に心理的援助を行なうための研究や実践は、欧米に比べて日本は立ち後れている。                                                                 本論文では、第一に犯罪被害者の心理について、被害者のこうむる二次的被害と被害後の心理的反応を中心に述べ、第二に犯罪被害者に対する心理的援助について、まず被害者の回復過程を説明した上で、心理的援助の方法や自助グループの役割について論じている。今後被害者を取り巻く司法、医療、報道などの機関や被害者支援のボランティア組織など、様々な機関において、二次的被害を防ぎ、被害者の回復を援助するための活動が、十分に展開されていくことが望まれる。        

【被害者の心理】
A被害者化-
第一次被害者化、
第二次被害者化(周囲の誤った対応で精神的、社会的に傷つけられること)
第三次被害者化(事件を契機に社会生活を送るのに精神的、物質的に支障をきたすこと)             
B精神的被害―
PTSD、恥、自責、服従(無力となり卑小になってしまった感覚)、加害者に対する病的な増悪、
逆説的な感謝(加害者に向けられる愛情・同一化)、汚れてしまった感じ、性的抑制、諦め、二次受傷、社会経済状況の低下     

【被害者の心理的援助】

A回復の過程 
・知的認識と喪失の説明 → 情緒的受容 → 新しいアイデンティティーの獲得
・安全(身体の統御、ついで環境の統御)→ 想起と服喪追悼(外傷ストーリーを十分語り、その作業によって外相記憶が形を変え、被害者の生活史に統合される段階) →  再結合   
・社会対処モデル:対処レパートリー、問題状況の定義、対処過程、結果、フィードバック過程

B心理的援助の方法
   *被害者の方のニーズによる:経済的援助、精神的援助、情報提供なのか・・・
   ・理不尽な出来事について、繰り返し繰り返し話すことができる(ただし、話したいという時と、触れられたくないという時がある)
   ・悲しみ、怒り、苦しみ、憤りなど、すべての感情を否定されることなく、受け入れてもらえること
    ・同じ境遇や苦痛を切り抜けてきた人と一緒に、心置きなく感情を分かち合い、話し合えること 

C自助グループの役割 

《開催日》2023年6月14日(水)