EFの保たれた心不全患者(HFpEF)に対するSGLT2阻害薬の効果

―文献名―
Empagliflozin in Heart Failure with a Preserved Ejection Fraction Stefan D. Anker N Engl J Med 2021; 385:1451-1461

―要約―
【背景】
SGLT2阻害剤は、駆出率低下を伴う患者の心不全による入院のリスクを低下させるが、心不全と駆出率の保持を伴う患者への影響は不明である。
【方法】
この二重盲検試験では、NYHAクラス II ~ IV のEF40% を超える心不全患者 5,988 人を、通常の治療に加えてエンパグリフロジン (商品名ジャディアンス1 日1 回 10 mg) またはプラセボに無作為に割り付けた。主要アウトカムは、心血管死または心不全による入院の複合アウトカムである。
【結果】figure1,figure3,table2
中央値 26.2 ヶ月で、エンパグリフロジン群の患者 2997 人中 415 人 (13.8%)、プラセボ群の患者 2991 人中 511 人 (17.1%) で主要転帰イベントが発生した (ハザード比 0.79:95% 信頼区間 0.69 ~ 0.90:P < 0.001)。この効果は主に、エンパグリフロジン群の心不全による入院リスク低下に関連していた。エンパグリフロジンの効果は、糖尿病の有無にかかわらず患者で一貫しているように見えた。心不全による入院総数は、プラセボ群よりもエンパグリフロジン群の方が少なかった (エンパグリフロジンで 407 人、プラセボで 541 人; ハザード比 0.73:95% 信頼区間 0.61 ~ 0.88: P<0.001)。合併症のない生殖器および尿路感染症と低血圧が、エンパグリフロジンでより頻繁に報告された。 【結論】 エンパグリフロジンは、糖尿病の有無にかかわらず、駆出率が保持されている心不全患者の心血管死または心不全による入院リスクを低下させた。 【limitation】 ・心血管死亡や全死亡には有意差がない ・以前のARNIのHFpEF患者に対する試験(患者集団・観察期間が同等)でも心血管死と心不全入院の結果に差がある ・死亡以外の中断例が全体の23%あり、有意差をなくしている可能性がある

【開催日】2022年11月9日(水)