-文献名-
Klodian Dhana, et al. Healthy lifestyle and life expectancy with and without Alzheimer’s dementia: population based cohort study. BMJ. 2022; 377:e068390. (doi: 10.1136/bmj-2021-068390)
-要約-
Introduction:
近年、生活習慣の改善によるアルツハイマー型認知症(AD )の予防が注目されているが、これは生活習慣が認知機能の低下を遅らせ、ADのリスクを低減する可能性があるデータが増えてきたことに起因する
しかし、良い生活習慣は認知症リスクの低減だけでなく寿命の延長にもつながり、寿命が延びれば高齢者が増える。認知症のリスクは年齢が上がるにつれて指数関数的に増加する
ライフスタイルへの介入によって、ADを遅らせることは可能かもしれないが、全体の有病率や認知症とともに生きる年数は変わらないか、むしろ増えるかもしれない
そうであれば、医療専門家、政策立案者等は将来の医療費とニーズを十分に計画する必要がある
Method
<研究デザイン、セッティング、ポピュレーション>
本研究は、一般集団におけるアルツハイマー型認知症の危険因子を評価するためにデザインされた前向き集団ベースコホート研 究 で あるChicago Health and Aging Project(CHAP)内で行われた
– 1993年から2012年の間に、シカゴ南部に住む65歳以上全員が対象になり、全対象者の約78.7%の6,157名がenrollされ、2000年にsuccessive cohortsで4,645名が追加。Totalで10,802名がenrollされた
認知機能評価は3年毎に最大6回実施され、AD freeはin homeインタビューと臨床評価の結果認定された
今回の解析では2,110名のAD freeと339名のAD患者のtotal 2449名が対象となった。
<生活習慣因子のアセスメント>
5つの生活習慣因子(①食事(Mediterranean-DASH Diet Intervention for Neurodegenerative Delay[MIND]食事スコア)、②認知的活動、③中~強度の身体活動、④禁煙、⑤中程度以下の飲酒)について、有する場合は1点, 有しない場合は0点でtotal 5点でスコアリング
– ①食事は、MIND score 上位40%(概ねMIND score >7.5)を1点とした
– ②認知活動は、過去~現在の読書、美術館訪問、カードゲーム、ボードゲーム(checkers)、クロスワード、パズルからなるcognitive activity scoreに基づいて、上位40%以上を1点とした
– ③身体活動はウォーキング、ガーデニング、体操、自転車、水泳である。週150分以上で1点
– ④喫煙については、今吸っていなければ1点
– ⑤飲酒は、男性は30g /日以下、女性は15g /日以下で1点(缶ビールなら2本or 1本)
<統計学的分析>
Multistate life tableを用いた分析を行った
– AD free→AD、AD free→death、AD→deathの3つのそれぞれのtransitionパターンについて、生活習慣毎の男女別ハザード比を生存分析で分析
– 回帰モデルは年齢、人種、配偶者の有無、教育、APOE ε4変異の有無、併存疾患で調整
– 全人口に対する生命表と 、健康的な生活習慣因子の数(0~1、2~3、4~5点)ごとに3つの生命表を作成
<アルツハイマー型認知症の診断>
Cognitive performance testの 2つ以上の機能の障害と、神経科医が判断する認知機能の低下がADの診断に必要とした
AD診断は、NINCDS(National institute of Neurological and Communicative Disorders and Stroke)およびADRDA(the Alzheimer’s Disease and Related Disorders Association)のprobable Alzheimer’s diseaseの基準により判定
アルツハイマー型認知症がある場合とない 場合の女性および男性の平均余命
(Martha C.M. et al., Alzheimers Dement. 2015 Sep; 11(9): 1015–1022. doi: 10.1016/j.jalz.2015.04.011)
Result
Discussion
本研究は、生活習慣因子の余命だけでなく非認知症余命に与える影響を考慮するための定量的データを供給するという意味で価値がある
既存研究で教育レベルの高い人の非認知症余命が長いというstudyもあるが、今回は教育レベルで調整を行った上で、生活習慣等のリスクファクターの非認知症余命への影響に言及した論文であることも特徴
Limitationとしては、①生活習慣因子の評価がbaselineしかできておらず、フォローアップ中には行われていないため、生活習慣のその後の変化や、認知症による生活習慣の変化を捉えられていない、②不健康な人はstudyに参加しなかったり参加までに死亡している頻度が多いと考えられ、不健康な生活習慣をもつ人々のpopulationを過小評価している可能性、③生活習慣の評価は自己申告制であること、等がある
【開催日】2022年10月12日(水)