-文献名-
M Hertel. Real-world evidence from over one million COVID-19 vaccinations is consistent with reactivation of the varicella-zoster virus. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2022 Apr 26;10.1111
-要約-
Abstract
背景
帯状疱疹の原因となるVZVの再活性化は、ワクチンの副反応として稀に認められることがある。最近、COVID-19ワクチン接種後の帯状疱疹が報告されている。
目的
本研究の目的は、COVID-19ワクチン接種後に帯状疱疹の頻度が増加することが認められるかどうかを、大規模コホートにおいて実測データに基づき評価することであった。仮説として、COVID-19ワクチンを接種した対象者(コホートI)の方が、未接種者(コホートII)よりも帯状疱疹の発生率が有意に高くなると仮定した。
方法
TriNetXデータベースからワクチン接種者1,095,086人とワクチン非接種者16,966,018人を検索し、交絡因子バイアスを軽減するために年齢と性別をマッチングさせた。
結果
マッチング後、各コホートは1,095,086人となった。ワクチン接種群(コホートI)では、COVID-19ワクチン接種後60日以内に2204名が帯状疱疹を発症し、ワクチン未接種群(コホートII)では、その他の理由(ワクチン接種以外)で受診後60日以内に1223名が帯状疱疹と診断された。帯状疱疹の発症リスクは、コホートIが0.20%、コホートIIが0.11%と算出された。その差は統計学的に極めて有意であった(P < 0.0001; log-rank検定)。リスク比は1.802(95%CI=1.680;1.932)、オッズ比は1.804(95%CI=1.682;1.934)であった。
結論
COVID-19ワクチン接種後、帯状疱疹の発症率が高くなることが統計的に検出された。したがって、帯状疱疹の発疹はCOVID-19ワクチンのまれな副作用であると考えられる。VZV再活性化の分子的根拠はまだ不明であるが,VZV特異的T細胞媒介免疫の一時的な低下がワクチン接種後の病態形成にメカニズム的に関与している可能性がある。なお、VZVの再活性化は、感染症でも他のワクチンでも確立された現象であり、COVID-19に特異的なものではない。
Introduction:著者たちがなぜこの研究を行ったのか、これまでに分かっていること、分かっていないことなど前提となった事柄を記載する。
VZVを含むヘルペスウイルス科の再活性化は、黄熱病、A型肝炎、狂犬病、インフルエンザなどのワクチンが引き金となる可能性が報告されている。COVID-19ワクチン接種と帯状疱疹の関連は、症例報告やケースシリーズおよびBNT162b2(Pfizer/BioNTech)の安全性に焦点を当てたレトロスペクティブスタディで世界的に報告されている。
本研究では、実世界データの統計解析に基づいて、大規模な国際コホートにおいてCOVID-19ワクチン接種と帯状疱疹の間に関連性が見られるかどうかを判断することを目的としている。仮説として、帯状疱疹の発生率は、COVID-19を接種した人では接種していない人に比べて有意に高くなると考えた。被験者データの収集には、TriNetX Global Health Research Networkを使用し、COVID-19ワクチンと帯状疱疹との関係性を統計学的に調査した。
Method:どのような方法を用いたのか、特殊な方法であれば適宜解説を入れる。
データベースへのアクセスは2021年11月25日であり、対象期間はアクセス日から2年間を遡った期間に限定した。この期間内に医療機関を訪れたすべての患者を対象とした。主要評価項目は、臨床的に診断された「帯状疱疹」であり、その条件は、①COVID-19接種後1~60日以内(コホートI)または②その他の理由で患者が医療機関を受診してから1~60日以内(コホートII)と定義した。次に、この枠組みを用いてKaplan-Meier解析を行い、リスク比(RR)およびオッズ比(OR)を算出した。
Results:表やグラフがあれば適宜紹介する。
コホートIおよびIIを構成する1,095,086人および16,966,018人の患者が対象とされ、マッチングプロセスの結果、各コホートは1,095,086人となった。コホートIのうち,2204人がCOVID-19接種後60日以内に帯状疱疹を発症した。一方、コホートIIでは、1223人が他の理由で医療機関を受診した後、60日以内に帯状疱疹と診断されたことがわかった。
帯状疱疹の発症リスクは、コホートIとIIでそれぞれ0.20% vs. 0.11%と算出された。0.09%のリスク差は統計的に非常に有意であった(P < 0.0001;95%CI= 0.079%;0.100%)。
RRとORの計算値はそれぞれ1.802(95%CI = 1.680; 1.932)、1.804(95%CI = 1.682; 1.934)であった。
【開催日】2022年7月6日(水)