ACP話し合い開始のタイミングに影響する患者の好みと要因:異文化間のmixed-method study

-文献名-
Jun Miyashita1,2 , Ayako Kohno3, Shao-Yi Cheng4, Su-Hsuan Hsu5, Yosuke Yamamoto2, Sayaka Shimizu2, Wei-Sheng Huang4 , Motohiro Kashiwazaki6, Noriki Kamihiro6, Kaoru Okawa7,
Masami Fujisaki8, Jaw-Shiun Tsai4 and Shunichi Fukuhara1,2

-要約-
<背景>
 ACPの話し合いは世界的に受け入れられつつあるが、その理想的なタイミングは不明であり、文化的な要因も関係していると考えられる。

<目的>
 日本と台湾の成人患者を対象に、事前ケア計画の話し合いを開始する時期とそれに影響する要因を評価する。

<デザイン>
 混合法による質問紙調査により、健康な状態から病気であることが明らかな状態までの4つの段階において、事前のケアプランに関する話し合いを開始したいと考えている患者の割合を定量的に測定し、望ましいタイミングの基盤となる質的な認識を明らかにした。

<セッティング/参加者>
 日本の4つの病院と台湾の2つの病院の外来を訪れる40~75歳の患者を無作為に募集した。

<結果>
 全体(700人中)では、日本では72%(365人中)、台湾では84%(335人中)が病前の話し合いを受け入れた(p<0.001)。病前の話し合いに積極的な要因は、日本では若年層、生命維持治療の拒否、台湾では高齢層、社会的支援の強さ、生命維持治療の拒否であった。考え方は大きく4つに分類され、最も多かったのは「賢明な予防策として話し合いを歓迎する」で、「終末期が近づくまで話し合いを延期する」「死は普遍的に避けられないものと受け止める」「医療者主導で話し合いを行う」を上回った。

<結論>
大多数の患者は、健康状態が著しく悪化する前に話し合いを開始することを望んでいるが、約5人に1人の患者は、明らかに死に直面するまで話し合いを開始したくないと考えている。事前介護計画を促進するためには、医療従事者は患者の嗜好や、事前介護計画の開始を受け入れるか否かに関連する要因に留意しなければならない。

<既知のこと>
・A C P話し合いに対して予想される、または実際にある、患者のネガティブな反応を考えると、医療従事者はその話題に触れることに躊躇いを感じる。患者は希望を失うかもしれないし、時期を誤ったACPは医師患者関係を悪化させるかもしれないからである。
・患者がいつACP話し合いへの心理的な準備ができるのかを知る手がかりとなる研究はほとんどない。

<この論文で追加されたもの>
・日本では72%、台湾では84%の回答者が、健康状態が悪化する前にACP話し合いを始めたいと考えている
・しかし、少数派だが20%の人々は、このような議論を人生の終わりが近づくまで延期したいと考えている
・アジア人の意識は均一ではなく、日本人よりも台湾人の方が、死は避けられないものであり、ACP話し合いは常識であると考える患者が多い。日本の患者は台湾の患者よりもACP話し合いに対して受動的な態度をとり、医療者主導でACP話し合いが行われることを好む

<実践、理論、政策への示唆>
・日本や台湾の患者の多くは、健康状態が大きく損なわれる前に話し合いを始めようとするが、明らかに終末期を迎えるまで話し合いに応じない人もいる
・したがって、ACPを推進するためには、医療従事者は、患者の好みの多様性やACPを受け入れるか否かに関連する文化的要因に留意する必要がある。

転ばぬ先の杖(賢明な予防策)
 将来、体が不自由になった時に備えて自分の意思を伝えておくべきだ
終末期までのACPの延期
 終末期が近づいていることを受け入れるまで、話し合いを始めるべきではない
終末期の普遍的な必然性
 人は誰でも死を免れないので、将来の医療について話し合う必要がある
医療従事者主導でのACP話し合い
 医療従事者が主導権を握れば、患者は迷わず話し合いに応じる

【開催日】
2021年12月8日(水)