-文献名-
Olaisen RH, Schluchter MD et al. Assessing the Longitudinal Impact of Physician-Patient Relationship on Functional Health. Ann Fam Med. 2020; 18: 422-429.
-要約-
【目的】
日常的なケアリソース(プライマリ・ケア)へのアクセスは、健康アウトカムの改善と関連しているが、医師-患者関係が患者の健康にどのように影響するかについて,特に長期な研究は限られた数しか存在しない。本研究の目的は、医師-患者関係の変化が機能的健康に及ぼす長期的な影響を調べることである。
【方法】
(研究デザイン)
Medical Expenditure Panel Survey(MEPS〜 米国国民の代表的な健康支出,利用,支払い現,健康状態,健康保険範囲の推定を提供することを目的とした一連の調査、AHRQが運営.2015-2016年)を用いた2年間のプロスペクティブコホート研究。
(対象)
18歳以上で2015年,2016年の双方で1回以上医療機関を受診した住民が解析の対象とした.
(アウトカム)
アウトカムは機能的健康の1年間の変化(12項目のShort-Form Survey: SF-12 https://www.qualitest.jp/qol/sf12.html).
(予測因子)
予測因子は医師-患者の関係の質、医師と患者の関係の変化であり、MEPSのデータから抽出し作成し既に信頼性と妥当性が過去の研究から評価を受けている,MEPS Primary Care (MEPS-PC) Relationship subscaleを用いて利用した。
参加者は研究開始時にMEPS-PCのスコアが人口のmedianをカットオフにlowとhighの2群に分けられ,2年後のスコアの変化を3群に分けて評価した(変化なし,悪化,改善).
(交絡因子)
年齢、性別、人種/民族、学歴、保険の有無、米国の地域、multi morbidity
(解析)
我々は、調査による重み付け、共変量の調整を行い、予測限界平均解析を行い,群間の違いを測定するために,効果推定値としてCohen dを利用した.
MEPS-PC Relationship subscaleの軌跡(例:high⇒same, low ⇒ betterなど)の違いによるSF-12については、multiple pairwise comparisons with Tukey contrastを用いて検証した。
【結果】
(demographic characteristics)
Table 1の右のカラム.
(サブグループごとの医師-患者関係)
Multimorbidityの高いグループは低いグループと比較して優位に医師・患者関係のスコアが低かった.(Table 2)
無保険の患者は健康保険加入患者と比較してスコアが低かった.
ベースラインの機能的健康が低い患者は高い患者と比較して医師-患者関係のスコアも低かった.
(ベースラインの医師-患者関係とフォロー後の機能的健康)
ベースラインの医師-患者関係とフォローアップ後(2016年)の機能的健康の間の survey-weighted correlation は0.20(P<0.01)であった.
(医師-患者関係の軌跡と機能的健康) Table 3
患者のベースラインの医師・患者関係のhigh, lowに関わらず,2015年から2016年の間に医師-患者関係が改善している場合,機能的健康は改善していた.医師・患者関係に変化がない場合,悪化した場合は,機能的健康が悪化する傾向にあった.
【結論】
医師と患者の関係の質は、機能的健康と正の関連がある。これらの知見は、患者中心の健康アウトカムの改善を目的とした医療戦略と医療政策に情報を与える可能性がある。
【開催日】2021年2月10日(水)