COVID-19の母体の経過(2020年6月)

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。

-文献名-
Sascha Ellington, et al.
Characteristics of Women of Reproductive Age with Laboratory-Confirmed SARS-CoV-2 Infection by Pregnancy Status — United States, January 22–June 7, 2020
Centers for Disease Control and Prevention MMWR June 26, 2020;Vol.69 :No.25

-要約-
Introduction:
2020年6月16日現在、COVID-19のパンデミックにより、米国では2,104,346人発症し、116,140人が死亡している。妊娠中、女性は免疫学的・生理的な変化を経験する。その変化により、呼吸器感染症による重症化のリスクを高める可能性がある(1,2)。これまでのところ、米国の妊娠中の女性におけるCOVID-19の有病率と重症度を評価するためのデータや、妊婦と非妊婦の間で徴候や症状が異なるかどうかを判断するためのデータは限られている。
Objective:
2020年1月22日から6月7日までに、COVID-19のサーベイランスの一環として、CDCに届け出られた、生殖可能年齢(15~44歳)の女性326,335人を対象とした。全員、COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2の検査結果が陽性であった。妊娠に関するデータを得られた人を対象とした。
Method:
観察研究。検査で陽性または疑いとなったCOVID-19患者は電子的にCDCに届け出られる。2020年1月22日から6月7日までに届け出られたものを解析した。50の州とコロンビア、ニューヨークからの報告が含まれる。データとして、人口統計学的特徴、妊娠状態、基礎疾患、臨床的徴候と症状、および転帰(入院、ICU 入院、機械的人工呼吸器の使用、死亡)を収集した。 データが欠落しているアウトカムは、起こっていないアウトカムであると仮定した。
Results:
 妊娠状況に関するデータは、91,412人(28.0%)で得られた。妊婦は8,207人(9.0%)であった(Table 1)。
 症状は、妊婦の65.2%、非妊婦の90.0%で報告された。症状の報告があったもののうち、妊婦の97.1%、非妊婦の96.9%で症状を認めた。妊婦と非妊婦の間で、咳嗽(51.8%、53.7%)、呼吸苦(30.1%、30.3%)は同頻度であった。妊婦は、頭痛(40.6%、52.2%)、筋肉痛(38.1%、47.2%)発熱(34.3%、42.1%)、悪寒(28.5%、35.6%%)、下痢(14.3%、23.1%)が少なかった。
 慢性の基礎疾患があるのは、妊婦で22.9%、非妊婦で35.0%であった。慢性肺疾患(21.8%、10.3%),糖尿病(15.3%、6.4%), 心血管疾患(14.0%、7.1%)が多かった。
 入院は、妊婦31.5%、非妊婦5.8%だった。ICU入室は1.5%、0.9%、人工呼吸は0.5%、0.3%。死亡は0.2%、0.2%であった。

JC柏﨑1

JC柏﨑2

Discussion:
 15~44歳の方の5%が妊娠していたことになるが、この割合は予想以上に高くなっている。これは、以下のような可能性がある。
病気のリスク増加に関連しているとも考えられるが、妊婦は非妊婦と比較して医療機関に頻繁に受診するため、検査を受ける割合が高かったかもしれない。 ヒスパニック系および黒人の女性は,妊娠中に SARS-CoV-2 感染の影響を不均衡に受ける可能性がある。さらに、妊娠による入院の違いは、妊婦であるがために入院の閾値が低くなっているだけかもしれない。
 最近のスウェーデンでの研究では、COVID-19を持つ妊婦は、5倍の確率でICUに入院し、4倍の確率で人工呼吸管理を行われていた。死亡リスクは妊娠中と非妊娠中で同じであった。
生殖年齢の女性のインフルエンザ感染における妊婦・非妊婦の違いをみた最近のメタアナリシスでは、妊娠は入院のリスクが7倍高いが、ICU入院のリスクは低く、死亡リスクの増加はなかった。
 この報告書の所見には、少なくとも4つの制限がある。第一に、4分の3の患者で妊娠の有無が不明であったこと。妊娠状態、人種/民族、症状に関するデータ、基礎となる条件、およびアウトカムがかなりの割合で欠損していた。このような状況は、いくつかの特性の過大評価または過小評価につながる可能性がある。第二に、情報を確認して報告するためには、追加の時間が必要かもしれない。ICU 入院、機械的人工呼吸などのアウトカムの有病率を過小評価している可能性がある。第三に、妊娠週数は感染した時期や入院に関連しているかどうかがわからない。COVID-19の病気のためではなく、妊娠中の状態のために入院した可能性がある。最後に、ルーチンの症例サーベイランスでは、妊娠や出産のアウトカムは確認できていない。

【開催日】2020年8月12日(水)