-文献名-
Costanzo, Cari, and Abraham Verghese. “The physical examination as ritual: social sciences and embodiment in the context of the physical examination.” Medical Clinics 102.3 (2018): 425-431.
-要約-
Introduction:
検査技術の発達により、身体診察は軽視されている潮流にあり、診察時の見逃しによる不必要であった医療過誤に対するコストも指摘されている。身体診察は医師患者関係を維持するものとしての位置付けもあるが、これについての研究は乏しい。しかし患者の不満として「私の主治医は触ってすらくれなかった」と言った事はよく話題になる。
医学と社会科学における身体診察
2016年に身体診察と医師患者関係のレビュー文献があるが、その肯定的な評価については質的研究結果よりもむしろ持論を元にしたものが殆どであった。またエスノグラフィーによる報告では、身体診察はむしろ侵襲的であるという否定的な評価であった。
Embodiment:
身体とは、mind/bodyの2つから成り立つのではなく、歴史・文化・政治的力も不可分であるという考え方。個人の歴史だけではなく、社会や政治背景が身体的な差異に対してプラスやマイナスの評価を与え位置付けている事も含まれる(例:植民地政策における皮膚の色によるヒエラルキー)。
儀式としての身体診察
筆者の考える儀式性)
a.特異で象徴的な場所で身体診察は行われる(診察室は非日常的な空間である)
b.聴診器や打腱器など象徴的な道具が用いられる
c.上記場所や道具を用いた独自性や実践は、普遍的である
衣服を脱いだり、触ったりすることを許容することは、患者本人が脆弱性を示す(患者役割を身にまといそれを保持したい事を暗に意味している)ことであり、臨床医が注意深く思いやりを持って身体診察に取り組むことが強く求められている。
プラセボ効果と身体診察
well-administered身体診察はinferior身体診察と比べて、患者の気持ちを安らかにさせて、神経生物学的効果が、研究されている。
診療の喜びと身体診察の意味
臨床医の燃え尽き予防として、身体診察のような医師患者関係を強めるプロセスになるような儀式を意識する事も1つであろう。
【開催日】2020年3月11日(水)