-文献名-
Bodenheimer Thomas MD; Knox Margae MPH; Kong Marianna MD. Models of Faculty Involvement in Primary Care Residency Teaching Clinics. Academic Medicine. In press.
-要約-
三つのモデルとその具体例
レジデンシーは二つの同等に重要なミッション、つまり、未来のための医師を要請することと今の患者をケアすることがあるが、プライマリ・ケアの教育診療所ではこの二つはよく衝突する。
レジデントは他サイトでの業務があるし、指導医は入院担当、教育業務の準備、管理業務、研究といった他の責務があるので、常に患者の対応ができるわけではない。
結果として多くの教育診療所は複雑な指導医・レジデントのスケジュールを’juggle’する必要がある。
著者らは、2013-2018年に行なった42の内科あるいは家庭医の教育診療所へのサイトビジット(2日ずつで診療所長・プログラム責任者、レジデント、指導医、診療所スタッフへのインタビューを実施+その診療所の業務の直接観察)を通して、指導医の業務への参与のあり方にスペクトラムがあることを見てきた。
そこでそれを3つのFaculty involvement modelsとして記述し、具体例を示す。 (詳細レポートはAAMCからpublishされている様子:参考文献1)
1.The focused model
・少数の指導医がそれぞれ少なくとも5コマ/週以上を診療またはレジデントのプリセプティングに費やすモデル
・17/42=40%で、コミュニティ基盤型(=非大学型)レジデンシーによく見られる。
例:Program A:コミュニティ基盤型で11人の指導医、すべての指導医が6-8コマを診療所で診療あるいはプリセプティングで過ごすProgram B 後述のDispersed modelから移行した例。
以前は多数の指導医が週に1コマ診療、2コマ指導だったが、患者が待つ状況などを踏まえて、体制を移行し、プログラム内の指導医を入院対応のホスピタリストと外来のphysician educatorsに分かれるようにした。
結果、12人の指導医による6コマ診療、2コマプリセプティングの体制となり、レジデントの学習経験も、ケアの継続性も改善した。
Program C 大学基盤型で4つの小サイトでそれぞれが5-8人の指導医・4-5コマ診療、2コマプリセプティング。ただ、近年academic responsibilitiesが増したことでこの指導医たちが診療のコマ数を減らさざるをえなくなっている
2.The dispersed model
・多くの指導医が1-2コマ/週を診療所での臨床または教育業務に費やす
・9/42=21%で、大学基盤型のレジデンシーにしか見られない
例:Program D:大学基盤型の内科レジデンシー:100人レジデント、50人の指導医がいる。指導医は個
々の診療所では1-3コマしか費やさない。チームでのミーティングもなく、継続性は乏しいし、患者も担当医を待たなければならない。
Program E:大学基盤型の家庭医療レジデンシー。30人の指導医がいるが、臨床のコマは2-3コマと少ない。24人のレジデントも1-2コマずつで多くの診療所を回って診療をしている。(詳細あるが省略) 診療所の問題についてレジデントが指導医の働き方がFocusedになるように提言中。
Program F: 指導医たちは週に7コマを外来や教育に費やしているが、診療のほとんどがレジデントのいない診療所で行なっており、レジデントのいるサイトには週に1-2コマしかいかない。教育のための診療所配置の観点から、この状態はdispersed modelである。
3.The hybrid model
・1.と2.の融合型で、少数の5コマ以上費やす指導医と、1-2コマ/週の指導医の両方が務める
・16/42=38%が占めていた。
例:Program G: 大学基盤の内科レジデンシーで、ほとんどの指導医は週1-3コマを診療とプリセプティングに割り振っているが、2人の指導医がそれぞれの診療所で5コマ/週以上を診療・教育に費やしている。
が、リサーチグラントや他のアカデミックな業務の影響で指導医が診療所を離れるような圧力が働いており、診療所長はdispersed modelのような状態にならないようにするにはどうしたらよいか、懸念を抱いている。
Program H: 大学基盤型の家庭医療レジデンシー、小さい教育診療所が4つ、4コマ診療・1-3コマがプリセプティングとなるような指導医が診療所ごとにおり、それに加えて、community preceptorが週に1回レジデントの指導に携わっている。
上記のモデル以外の指導医の働き方に影響する因子
・それぞれの指導医が自分の診療スケジュールを決められる程度が重要
・あるレジデンシーではそれぞれの指導医がきめるため、ある日は2人の指導医が次の日が8人ということが起きていた
・診療所側が医師がいる人数を調整するために規則を持つパターンもある:例としては
・level loading: コマごとに同じ数の医師がいるように調整する
・Access-centered rule (Program D): 指導医が会議などの理由で診療をキャンセル可能なシステム。以前は許可なしに買おうだったが、今は診療所が十分な医師数が予約患者に対してあることを確認してキャンセルが可能になっている。
Focused Facultyの利点と実現するための障壁
利点:診療所チームの安定、継続性の維持、外来診療/教育者としてのロールモデルを示せる、その診療所のリソースや紹介先を熟知しており、より効果的なプリセプティングが可能、診療所の機能不全を看過しないのでチームのAnchorとなり、質改善、ポピュレーションアプローチ、継続性、レジデントへの対応などを主導的に行う
障壁:大学基盤の場合は特に、指導医の多重の、特にリサーチなどの業績評価の重圧との間で葛藤が起こる。大学組織では入院診療の方が外来診療より重んじられる、臨床教育者は研究者よりも大学では昇進しにくいなど。大学ではなくても入院診療との間のジレンマはある。
【開催日】2019年9月11日(水)