プライマリケアにおけるうつ病の疫学

-文献名-
Manish K. Jha, MD, et al. A structured approach to detecting and treating depression in primary care:
VitalSign6 project. Annals of Family Medicine. 2019;4(17):326-334.

-要約-
 Purpose:
この報告では、米国の大都市圏で進行中の、16のプライマリケアクリニックにおけるうつ病患者のスクリーニング、
治療およびアウトカムを改善するために行われた「質の改善プロジェクト(VitalSign6)」の結果について記述している。

・16のクリニックの内訳:6つのcharity clinic、6つの連邦政府認定health care center、2つの民間の低所得者層向けクリニック、
 2つの民間のメディケアあるいは私的保険に加入している患者のためのクリニック

 Method:
この後ろ向き分析の対象は、前述の「質の改善プロジェクト」においてPHQ-2でスクリーニングされた25000人の患者(12歳以上)である。
スクリーニング陽性(PHQ-2>2)となった患者は、自記式質問票とclinicianの診察によってさらなる評価が行われた。
2014年8月から2016年11月までに集められたデータは3種類で、(1)当初のPHQ-2施行群(n=25000)、(2スクリーニング陽性群(n=4325)、(3)clinicianによってうつ病と診断され、
18週間以上登録されていた群(n=2160)である。

 Results:
うつ病のスクリーニングされた患者の17.3%(4325/25000)が陽性と判定された。
スクリーニング陽性だった患者のうち、clinicianの診察によってうつ病と診断されたのは56.1%(2426/4325)であった。
18週間以上登録された患者のうち、64.8%がmeasurement-based pharmacotherapyを開始され、8.9%が外部の専門家に紹介された。
薬物療法を開始した1400人の患者のうち、フォローアップの回数は、0回45.5%、1回30.2%、2回12.6%、3回以上11.6%であった。
寛解率は、フォローアップ回数が1回20.3%(86/423)、2回31.6%(56/177)、3回以上41.7%(68/163)であった。
ベースラインの特徴として、脱落率の高さと関連していたのは、非白人、薬物乱用スクリーニング陽性、うつ病/不安障害の症状の重症度が低い、若年であった。

 Conclusion:
ルーチンスクリーニングとうつ病の治療開始後、3回以上フォローアップされている患者は寛解率が高かったが、ケアの脱落率の高さは、アウトカムに悪影響を及ぼす重大な問題である。

背景:
➢ 大うつ病はUSでは成人の5-10%を占める。その半数はうつ病と診断されていない。適切な治療を受けているのは1/5以下。
ゆえに一般人口を対象にうつ病のスクリーニングを行うことが推奨されている。2015年に外来でうつ病とスクリーニングされたのは3%のみ。

➢プライマリケアクリニックで治療されたうつ病患者のアウトカムは、measurement-basedcare(MBC)に則って行われた場合、精神科での治療と同等である。

➢ Measurement-based careアプローチ:
(1)標準化された症状や副作用、治療のアドヒアランスの評価
(2)治療に対する現場での意思決定
(3)継続的なフォローアップ
(4)意思決定をサポートするためのclinicianへのフィードバック
から成る。通常のケアと比較して2倍の寛解率と見込めるとされ、うつ病のガイドラインにも採用されている。
主に患者の自己報告による(自記式質問票を活用)。

➢ Quality-improvement project:うつ病は慢性疾患であり、エビデンスに基づいたうつ病診療をプライマリケアで新しいスタンダートへ。
ウェブベースのアプリを活用しており、それによって(1)スクリーニング、(2)うつ病と診断された患者の症状のモニタリング、(3)clinicianに対してMBCをガイドする

➢ Clinician:内科医、家庭医、小児科医、physician assistants、advanced practice nurses

【開催日】2019年9月4日(水)