家庭医療・古典シリーズ  家庭医の外来の「ルーチン、ドラマ、セレモニー」とは一体何か?

-文献名-
Miller WL. Routine, ceremony, or drama: an exploratory field study of the primary care clinical encounter. J Fam Pract. 1992 Mar;34(3):289-96.

-要約-
<サマリ>
背景:家庭医の診療ではしばしば家族システム理論と生物心理社会モデルを用いるが、忙しい外来診療においてはそれらの適応の仕方には違いがある。
方法:4人のグループ診療のうちの2名の家庭医によって日々の診療マネジメントの例示を同定しする。共同での質的研究を使ってその過程を探索する。鍵となる人物となる2名の家庭医と看護師の管理者への半構造化インタビューも用い、人類科学的なインタビュー技術を用いてテーマ分類を行なった。結果として生じた臨床上の出会いの類型化と意思決定の分類を参与観察と鍵となる人物からのレビューを用いて評価を行なった。最終結果は医師患者関係の過去の文献との比較で行った。
結果:3つの臨床上の出会いの類型が同定された。
 ●ルーチン:単純、単回、短時間外来、契約上の診療、生物医学モデルのみで対応
 ●セレモニー:誓約的、儀式的なスタイル
 ●ドラマ:精神的な問題を含め、衝突や感情を扱う状況 
結論:臨床上の出会いを分類することは、家庭医にとって家族システムの考え方を忙しい日々の診療に統合するための助けとなるであろう。これらの発見は今後の未来の研究、臨床研究、教育など多くのものに応用できる。
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<結果の詳述>
外来の4つの定型分類
 ●1、ルーチン:『型通りの単純作業』
  ➢「シンプル」「簡単」「ありふれた風邪」「飯の種」
  ➢日常の感染症、小外科、保険書類関係、保証を提供するもの
  ➢解決するのが容易で比較的身体的問題のみの外来

 ●2、ドラマ:『不穏で緊迫した感情が蠢く場面』
  ➢「複雑」「困難」「問題」「話が終わらない外来」「悪い知らせを伝える」
  ➢不確実性が高い場面、衝突が生じる場面、医師―患者の合意が難しいとき、家族内の対立、アドヒアランスの不良、がんや糖尿病、ダウン症の告知
  ➢時間がかかる脅威を感じる外来で、その後も頻回の受診を必要とする。家族図が助けとなる。
  ➢早期にこれはドラマだという認識を持つと、患者さんが帰る間際の「先生、実は」という状況を減らすことができ、またその外来の最後に今後に続く何回もの受診の価値を伝えることができる。
  ➢問題解決は必要としない

 ●セレモニー:『儀式・祭事』
  ➢内容から2つに分かれる。
 ●3−1、移行期セレモニー(特別な機会での式事:結婚式、お葬式的な?)
  ➢新しいドラマの最初の幕開け、「予定の破壊者」であり「隠されている時間爆弾」。
  ➢ルーチンの中でドラマであると早期に認識し、以下の4つのステップを踏むことが重要 
    1.医者が患者を信頼していることを患者に知ってもらう
    2.医師は患者が最も恐れていることを取り扱う
    3.「一生のお願いだから聴診器を当ててください」への診察の実施
    4.医師は、希望を与えて、次回までに何か出来ることを提供する 
  ➢移行期の説明を受け、不安について学び、家族との再会・和解を開始し、さらに害が生じないように長期間の診療を準備
 ●3−2、維持期セレモニー(定例”Do”式事:朝礼、お歳暮的な?)
  ➢プロトコールに沿った対応、いつも通りの対応、
  ➢これも医師の快適さ・不快さでさらに2つに分かれる。
    ✧3-2-a.維持期好意的セレモニー 
     ●慢性疾患の管理・マネジメント、患者とのホラ話・噂話の交換 
    ✧3-2-b.維持期絶望的セレモニー
     ●「腹を立てている患者」、「孤独な患者」と評される。
     ●不要なビタミンB12注射や疼痛緩和注射などの不快な定期マネジメント(出来上がってしまったパターン)
 ●移行期も維持期も両方ともに、定められ繰り返される型や構成となっている。儀式的であったり、良し悪し関係なくパターン化された繰り返しのプロセスである。(McWhinneryは、シャーマン的な振る舞いと表現)

【開催日】2018年10月24日(水)