ー文献名ー
Effect of Oral Prednisolone on Symptom Duration and Severity in Nonasthmatic Adults With Acute Lower Respiratory Tract Infection: A Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2017 Aug 22;318(8):721-730. doi: 10.1001/jama.2017.10572.
ー要約ー
Introduction:
プライマリケアにおける急性下気道感染を扱うことは非常に一般的であり、急性下気道感染症の症状は増悪した喘息に類似している。経口および吸入コルチコステロイドは急性喘息に対して非常に有効であるが、米国、英国、および欧州のガイドラインでは、コルチコステロイドを急性下気道感染症に使用すべきかどうかについては指針が示されていない。これにも関わらず吸入、経口ステロイドが使用されていることが多い。今研究の目的は、喘息のない成人の急性下気道感染症に対する経口コルチコステロイドの効果を無作為に調べることである。
Method:
The Oral Steroids for Acute Cough(OSAC) trialは2013年6月~2014年10月の期間で行われた、無作為、3重盲検化のプラセボ群を対照とした研究である。多施設で行われ、オックスフォード等の4つの大学で研究の手法を学んだ家庭医と看護師が患者の適正(4週間以内の発症で、咳嗽に加えて24時間以内に少なくても1つの下気道症状(痰、喘鳴、息切れ、胸痛)を持ち、即日抗生物質の投与が必要でなくかつ5年間喘息の治療を受けていない成人患者)を評価し参加者とした。介入はプレドニンゾロン20mg/日とプラセボを5日間投与であり、フォローアップはウェブ又は用紙を用いて0~6の症状を28日間毎日記載し、咳はさらに28日間記載した。
主要なアウトカムは➀徐々に増悪していた中等度咳嗽の持続時間②投薬後の症状重症度(咳嗽、痰、息切れ、不安、不眠、活動障害)の2~4日間での平均スコア(0~6点)であった。
Results:
58人の家庭医と50人の看護師が評価し、525人の参加者が選ばれた。その中で124人が除外され、401人が参加となった。このうち咳嗽のデータは334人、症状の重症度に関しては370人が利用可能であった。双方の患者の性質に関してはプレドニゾロン群がわずかに男性が多く年齢(平均50歳)が高かった(table1)。
主要なアウトカムについて、①中等度に悪い咳の期間の中央値はプレドニゾロン、プラセボともに5日間であり(table2)、咳の持続時間のベースラインの中央値をCoxモデルに当てはめて計算すると0.91(95%Cl 0.76~1.10P=36) 対1.11(95%Cl 0.89-1.39)であり(9%<20%)有意差は認めなかった。
②2~4日目の症状の重症度に関してはプレドニゾロン群とプラセボで1.99対2.16(95%Cl-0.4~0.00,P=0.5)と0.2ポイント(9.3%<20%)であり有意差は認めなかった(table2)。
Discussion:
この研究ではいくつかの限界があり、1つ目は患者が選択的に集められているため募集率が低くなり一般化に影響が出る可能性があること。2つ目は中等度に悪い咳の期間が基準を満たさなかった募集者が予想以上に多かったこと。
3つ目は他のバイオマーカー(レントゲン、炎症反応、微生物学的検査、レントゲン)が測定されていなかったので
重症度に差が出ていた可能性があること。4つ目に試験の適格基準には、急性下気道感染ではなく慢性または感染後の咳を伴う患者が含まれていた可能性があること。5つ目にこの研究では、患者報告の結果を用いたので客観的ではないこと。6つ目にグループ間で服薬コンプライアンス不良による有害事象の効果について欠如していることが限界として挙げられた。
最後に、今後はCRPの上昇や即時に抗菌薬が必要な程度の重症度の高い場面でのステロイドの有効性についても研究が必要である。
【開催日】
2017年11月1日(水)