―文献名―
Kristian E. Sanchack, Craig A. Thomas. Autism Spectrum Disorder: Primary Care Principles. AFP, December 15, 2016
―要約―
【概要】
自閉症スペクトラム障害(ASD)は、コミュニケーションの難しさと、反復行動、興味、活動で特徴づけられる障害である。早期の介入により、認知能力、言語、適応能力を改善させられるというエビデンスが増えており、そのため早期の診断が重要となっている。専門家は、18ヶ月および24ヶ月の幼児の訪問時にスクリーニングツールの使用を推奨している。薬物療法は、不適応行動や精神状態の問題に対して補助的に使用されるが、ASDで単一の有効な薬はない。予後は診断の重症度と知的障害の有無に大きく影響される。より早期に、より集中的な行動介入を受け、薬物治療は少ない子供が最も良い転機をたどる。
【疫学】
ASDの遺伝的影響は約50%。
環境因子の影響も受ける。出生前の母体の年齢や代謝性疾患(糖尿病、高血圧、肥満など)、バルプロ酸、母体感染、大気汚染、農薬暴露、低出生体重児、早産。
【臨床症状】
ASDの診断上の特徴には、社会的コミュニケーションの欠損と限られた反復パターン(行動、関心、活動)が認められる。ASDの診断基準と重症度レベルはTable 1,2参照。いくつかの徴候・症状は月齢6~12ヶ月で出現している。多くのケースでは、信頼性のある診断は24ヶ月で可能となる。
共同注意(興味を共有するために自分の注意を調整する能力) 月齢12~14ヶ月までに始まる。15ヶ月までに共同注意を示さない場合はASDの評価をするべき。子供が名前を呼ばれても反応しないので、「難聴じゃないか」と心配して来院することがある。
言語の遅れ 18~24ヶ月で、指さしや身振りのない言語遅延は、ASDと表現のある言語遅延の鑑別に役立つ。
限られた関心領域、反復的な行動 ASDの診断上必須の症状。小さい頃には目立たないこともある。ルーチンの行動パターンを変えるのは大変。常同運動(手を振る、つま先立ち歩行、目の近くで指をはじくなど)が見られることも。
【スクリーニング】
スクリーニングツールは、精査が必要な子供を特定するのに役立つ。長期的なアウトカムに基づいた3歳以下の小児におけるASDスクリーニングの有効性を評価するRCTはない。定期的な発達スクリーニングは、9ヶ月、18ヶ月、24ヶ月または30ヶ月児で提案される。
幼児自閉症修正チェックリスト(Modified Checklist for Autism in Toddlers;M-CHAT)は、最も広く使用されているスクリーニングツールだが、単独で使用した場合は偽陽性率が高い。ツールの作者は、その後にフォローアップ改訂版幼児自閉症修正チェックリスト(Modified Checklist for Autism in Toddlers-Revised, with Follow-Up;M-CHAT-R/F)を公開した。無料ダウンロード可能(http://mchatscreen.com/wp-content/uploads/2015/09/M-CHAT-R_F.pdf)
【紹介と診断】
ASDの評価には、包括的なアセスメントが含まれていることが望ましい。ASDを確実に診断し、ASDを模倣する状態を除外し、併存疾患を特定し、子供のレベルを決定することを目指す。
学際的なチームへの紹介が良いが、該当するチームがない場合は専門知識をもつ個々の専門医(児童心理学者、発達小児科医)が良い。
診断はDSM-5のASDの診断基準に基づく。
【治療】
●行動療法
早期集中的行動介入:就学前~低学年児童 望ましい行動を強化し、スキルの一般化を促し、望ましくない行動を減らすことによって、新しいスキルを教えることを目指す。
・認知行動療法
・Targeted play
・ソーシャルスキルトレーニング
・ペイシャントトレーニング
●薬物療法
ASD自体に効果のある薬物はない。不安障害、ADHD、睡眠障害などの治療に。頭痛、副鼻腔炎、胃腸障害はASDに似た症状が出たり、ASDの行動症状を悪化させることもある。
【開催日】
2017年8月16日(水)