―文献名-
Adrian R Martineau et al. Vitamin D supplementation to prevent acute respiratory tract infections: systematic review and meta-analysis of individual participant data. BMJ 2017;356:i6583
-要約-
Introduction
急性上気道感染症は頻度が高く、死亡率も高い重要な疾患である。過去の観察研究において、25-ヒドロキシビタミンDの血中濃度が低いことと急性上気道感染症の罹患率に関連性があることが示されていた。また、ビタミンDは上気道炎への抗菌・抗ウイルスペプチドを刺激し、感染予防に働く可能性があると言われていた。ビタミンD補給が急性上気道感染症のリスクを減らせるか、といったRCTが多数されており、現在までに5つの集計データメタアナリシスが実施されている。そのうち2つは統計学的に有意な効果を報告し、3つは有意な効果を報告しなかったこれら5つの試験のうち4つで、統計的に有意な異質性があると報告している。COPD患者の中でもビタミンDのベースラインが低い患者については補給による利益は大きく、また年齢やBMIなどはビタミンD補給による25-ヒドロキシビタミンDの応答に影響すると言われている。今回、この異質性を説明する要因を特定するために、ビタミンD補給による急性呼吸器感染症予防に関する25のRCTすべてにおいて、個々の参加者データのメタアナリシスを行った。
Method
デザイン:ランダム化比較試験からの個々の参加者データのシステマティックレビュー、およびメタアナリシス
データソース:Medline, Embase, the Cochrane Central Register of Controlled Trials, Web of Science, ClinicalTrials.gov, the International Standard Randp,osed Controlled Trials Number registry
試験選考のための基準:ランダム化、二重盲検、プラセボ比較によるビタミンD3あるいはビタミンD2補給の試験であり、倫理委員会に承認されており、急性上気道感染症の発生率に関するデータが前向きに収集されているもの。
Results
25のRCT(計11321名の参加者、0歳から95歳まで)が同定された。参加者データは10933名(96.6%)で得られた。ビタミンD補給により、全ての参加者の急性呼吸器感染証のリスクを減らした(調整オッズ比0.88、95%信頼区間0.81-0.96、P値<0.001)。サブグループ解析では、追加のボーラス投与なしで、毎日あるいは毎週ビタミンDを摂取した者に保護効果が認められた(調整オッズ比0.81、0.72-0.91)が、1回以上のボーラス用量を受けた者では効果が見られなかった(調整オッズ比0.97、0.86-1.10、P値=0.05)。毎日あるいは毎週ビタミンDを摂取した者のうち、保護効果がより強かったのはベースラインの25-ヒドロキシビタミンDレベル<25nmol/L(調整オッズ比0.30、0.17-0.53)であり、25-ヒドロキシビタミンDレベル≧25nmol/L(調整オッズ比0.75、0.60-0.95、P値=0.006)より高かった。ビタミンD摂取による有害事象の発生率には差がなかった(調整オッズ比0.98、0.80-1.20、P=0.83)。
結論:ビタミンD補給は安全に実施でき、急性呼吸器感染症に対する保護作用は全体に認められた。中でも、ビタミンD欠乏が強い者、ボーラス投与を受けていない者が最も利益を受けていた。
【開催日】
2017年3月22日(水)