長期尿道カテーテル留置患者の閉塞

―文献名―
DJ Stickler and RCL Feneley. The encrustration and blockage of long-term indwelling bladder catheters: a way of forward in prevention and control. Spinal cord (2010)48, 784-790

―この文献を選んだ背景―
 訪問診療を受ける患者には尿道留置カテーテルが挿入されている人も少なくない。そのなかで閉塞を繰り返して頻回の訪問看護での出動となったり、医療材料の供給で規定を超える数が必要となって自己負担いただく事例が多い。その原因について調べたところこの論文にあたった。

―要約―
目的
 細菌のバイオフィルムの結晶によってFoleyカテーテルが硬い層で覆われ、閉塞するかを説明した文献を概観することで、長期膀胱内カテーテル留置をうける患者のケアのなかでこの合併症を制御するための戦略を導き出す。
方法: 1980年から2009年12月までに発表された文献のPubMedの広範な検索を‵バイオフィルム´‵泌尿器へのカテーテル法´‵カテーテル関連尿路感染症´‵尿路結石´の語を用いて行い、妥当な論文を探し出した。

Nature of encrustration
 カテーテルに付着した結晶の分析からストルバイトとアパタイトの2種類が中心ということが示された。電子顕微鏡での解析は多数の桿菌が結晶生成に関連していることがわかった。培養の結果、ウレアーゼ産生菌が主体となっていた。ウレアーゼが触媒となってPHをあげ、リン酸マグネシウムとリン酸カルシウムの結晶化が引き起こされる一方で細菌のバイオフィルムが形成される。このプロセスはカテーテルを閉塞するまで続く。Proteus mirabillisの感染が実験上でも疫学的にも主因となっていた。

Controlling the rate of crystalline biofilm formation
 P.mirabillis感染を受けたカテーテル挿入された患者の前向き研究ではカテーテル閉塞が起こるまでの時間は2-98日と幅があった。閉塞を決める重要な要因は尿PHと同定され、pHが高ければ高いほど、カテーテル閉塞まで長くなる。P.mirabillis感染モデルの実験結果ではpHが8.3を超えるとバイオフィルムの結晶は形成されなかった。健康なボランティアでの研究では単純に水分量を増やしクエン酸摂取でpHを上げることができる。

Epidemiology and pathogenesis of P.mirabillis infections
 長期カテーテル留置を受ける44%の患者でP.mirabillisが尿検体から同定されている。留置カテーテルは膀胱結石の重大なリスクとなっており、Chenらは脊髄損傷患者1336人のコホートの病歴を解析し、受傷後最初の1年でカテーテル挿入されてない人と比べて9倍のリスク上昇と報告している。Fenelyらによると膀胱鏡検査の結果、カテーテル閉塞する62%で膀胱結石が発見され、膀胱結石が見られた90%の患者にP.mirabillis感染が起こっていた。

結論
 カテーテル挿入された尿路への出現を発見次第の抗生剤加療によるP.mirabillisの除去は、多くの患者のQOLを改善させ、カテーテル閉塞の合併症を管理するうえで現状の資源の浪費を減らせるかもしれない。すでに慢性的に閉塞し、結石形成している患者に対しては、抗生剤治療はバイオフィルムの結晶内に細胞が潜むことから効果的である見込みはない。クエン酸飲料と飲水量増量といった戦略は膀胱結石除去するまでカテーテル問題をコントロールできるかもしれない。

【開催日】
2015年7月15日(水)