「レジリエンス」の鍛え方

―文献名―
久世浩司. 「レジリエンス」の鍛え方.実業之日本社.2014

―要約―
久世浩司 慶應大学卒業。P&Gでマーケティング責任者として国内外で活躍。応用ポジティブ心理学準修士課程修了。

 
<レジリエンスとは>
失敗を怖れて行動回避する癖を直し、失敗しておちこんだ気持ちから抜け出し、そこから目標に向って前に進むことのできる力(もともとうつ病の若年化という、学校教育における問題に対処するため発達した経緯あり)
 
<なぜレジリエンスが必要か>
1職場でのうつ病は深刻
2グローバル化で世界のエリートが相手
3どう働いていいかわからない。「がつがつした働き方」が「無茶な働き方」としかイメージできない
レジリエンスがある人は、高いレベルでの自己洞察があり、自己の強みをいかせる土俵で仕事を注意深く選択し、感謝の念や仲間とのつながりを意識的に大切にし、自分らしくオーセンティックな働き方を体現している
 
<失敗>
失敗の真の問題は、失敗した後に生まれるネガティブな感情に支配されること。ネガティブな感情を持つこと自体はごく自然のこと。これが繰り返されると蓄積していき「学習性無力感」となってしまうのが問題。
<失敗の分類>
 ①予防できる失敗:責めない前提でのヒヤリハット報告 ポジティブに建設的にフィードバック
 ②避けられない失敗:自分の責任を過剰に感じることはない
 ③知的な失敗:歓迎すべき価値ある失敗なので自分を責める必要はない。
<失敗の後の対応>
 1)失敗経験をしたら上記の3つに分類すること
 2)不必要に自責の念を持たないこと
 3)失敗の種類に応じて適切な対応をとり、積極的に学習すること
 
<レジリエンスを鍛える7つのステップ>
 1)ネガティブ感情の悪循環から脱出する
 没頭できることを探し、フロー体験を取り入れることでネガティブ感情の悪循環を断ち切ることに役立つ
  ①運動系:水泳、ダンス、ジョギング、ウォーキング、武道、チームスポーツ、トレッキング、早足散歩 
  ②呼吸系:深い深呼吸を繰り返す。ヨガ、瞑想。マインドフルネス。
  ③音楽系:演奏や視聴。
  ④筆記系:自由記述、内省的記述、日記
 2)役に立たない7つの思い込み(思い込み犬)を手なずける
 ・正義犬:公正、「~ベキである」。公正でないことが起きると怒り、憤慨、嫉妬の攻撃系感情を生み出す 
 ・批判犬:他人を非難し批評しがち。曖昧な状態に耐えられない。怒りや不満の感情が生まれる。
 ・負け犬:自分と他人を比較しするが、他人と比べられることをおそれる。羞恥心、憂鬱感を生み出す
 ・謝り犬:悪いことを「自己関連づけ」し自分を責める。罪悪感、羞恥心から自尊心・自己評価が下がる。
 ・心配犬:1つでもうまくいかないと将来も全て失敗してしまうと不安になる。悲観的思考の癖がある。
 ・あきらめ犬:自分で状況をコントロールでき無いと考え、根拠の無い決めつけをする。不安、憂鬱感、無力感等の感情を生み、行動への意欲を低下させる
 ・無関心犬:物事や将来に関しても無関心で、面倒を避ける。自分と周囲の意欲喪失の原因となる。
 以上から自分の思い込みパターンを過去の事例から分析し、その原因となった原体験をさぐり、アンラーニングする。
 3)自己効力感をあげる
  ・成功体験を持つ ・うまくいっている人の行動を観察 ・他者からの言葉 ・高揚感を体験する
 4)自分の強みを活かす
  ・レジリエンスがある人は、① 自分の強みは何かを把握している、 ②自分の強みを平時から磨いている、 ③自分の強みを有事に活かすことができる。
  ・自分の強みを3つ見いだす
  ①自己診断の強み三大ツール
     VIA-IS(無料) ストレングス・ファインダー(有料)  Realise2(高額だが弱みも分析できる)
   ②コーチング
    強みを引き出す5つの質問
     ・最も大きな達成/成功は何か?      ・自分移管して最も好きな点は何か?
     ・何をしている時に最も楽しく感じるか?  ・どんな時に自分らしく感じるか?
     ・自分がベストで最高のときはどんなときか?
  ・弱みへの効果的な3つの対処方法
    ①弱みが仕事の目標達成に不可欠であれば、最小限の時間と努力で克服する方法を考える
    ②苦手をアウトソーシングする
    ③自分の弱みを補ってくれるパートナーと組む 
 5)心の支えとなるサポーターを作る
   サポーターがいると長期にわたり違いをもたらすことが研究でわかっている(カウアイ島の研究)
   家族や隣人とよい関係を保ちサポートされることで、孤独な環境に住む人よりも7年長生きする(研究)
   最も大切な5人を選ぶ。その時「あなたにとって大切な人は誰ですか?」「過去に大変だった時期に親身人相談してくれた人は誰ですか」「時には叱咤激励をしてくれたサポーターは誰ですか」という問いに答えながら考える
 6)感謝のポジティブ感情を高める
  1 感謝日記を書く 1日の終わりに感謝したことを思い出し、日記として書く。なぜこのよい出来事が起きたのかについてじっくり考え、感謝の気持ちを持ちながら日記を閉じる
  2 3つのよいことを思い出す:その日のうまくいったこと3つを回想する。そしてありがたい、運が良かったと感じる内容を箇条書きで記述する。なぜうまくいったかについても理由を考える。
  3 感謝の手紙を書く 自分が過去にお世話になった、助けられたひとで感謝を伝えられなかった人を選ぶ。その人に向けて感謝の気持ちを表す手紙を書く。どんな親切を行い、行為ある態度を示してくれたのか回想し、その結果どんな好影響を自分の人生に与えてくれたのかも言及する。その人がいなければ今の自分がどう変わっていたのかについても考える。書いた手紙は本人に手渡しか送付か、そのままにする。
 7)痛い体験から意味を学ぶ
  精神的な痛みを伴う体験の後に訪れる自己成長のプロセス。逆境体験を一歩引いた視点での内省が必要
  レジリエンス・ストーリーを作る
   1 被害者でなく、再起した者の立場で物語を形成する。被害者的に物語っては行けない。
   2 精神的な落ち込みから抜け出したきっかけは何かを回想する。 
   3 ゼロの状態からいかにして這い上がってきたのかに着目する。どのようなレジリエンンスマッスルを使用したのか書いていく
   4 書いた物語を眺め、これらの体験にはどのような意味があったのか、自分に対してのどんなメッセージが隠されているのかを高い位置から探求する作業をする。
   Qこれらの経験から何を学んだか? Qこれらの経験は、その後にどんな意味を持っていたのか? 
   Q俯瞰することで何か共通している者や大きな流れが見えるか?を考える

【実施日】
2014年7月9日(水)