ユマニチュード

―文献名―
本田美和子/イヴ・ジネスト/ロゼット・マレスコッティ.マニチュード入門.2014年

―要約―
はじめに
ユマニチュード(Humanitude)はイヴ・ジネストとロゼット・マレスコッティの2人によってつくり出された、知覚・感情・言語による包括的コミュニケーションにもとづいたケアの技法。
「人とは何か」「ケアをする人とは何か」を問う哲学と、それにもとづく150を超える実践技術から成り立つ。
認知症の方や高齢者のみならず、ケアを必要とするすべての人に使える、たいへん汎用性の高い技法。

Section1 ユマニチュードとは何か
1 ケアをする人と受ける人
・日常の風景
・それは防御かもしれない
2 その人に適したケアのレベル
・ケアのレベルを設定する
 ①健康の回復を目指す(たとえば肺炎を治す)。
 ②現在ある機能を保つ(たとえば脳梗塞後の麻痺が進行しないようにする)。
 ③回復を目指すことも、現在ある機能の維持をすることも叶わないとき、できるかぎり穏やかで幸福な状態で最後を迎えられるように、死の瞬間までその人に寄り添う(たとえば、末期のがんの緩和ケアを行う)。
・誤ったレベルのケアは害である
3 害を与えないケア
・なぜ罪悪感を抱いてしまうのだろう・・・
・強制ケアが健康を害している
・睡眠を妨げない
 ・記憶の保持が困難になった人でも、幸せな気分で眠りについたという思いは感情記憶にとどまりますから、就寝時のケアは大切なのです。
 ・夜間の安否確認のための訪問や、失禁していないかと確認するためのおむつ交換がどれほど悪い影響をもたらしているか想像できるでしょう。
・抑制はしない
 ・入院の原因となった肺炎の治療が終わった2週間目には歩けなくなっている、ひとりでは食べられなくなっている、という皮肉な現実がある。
 ・「生きているものは動く」「動くことが生きていることだ」を当たり前に受け止めるケアの文化を育て、ケアの方法を変えていくことが必要です。
・わきを持ち上げない
 ・肩関節の脱臼に繋がる危険性があります。
 ・人の身体の動きを知ったうえで立位を介助する方法を正しく学び訓練することが必要です。
4 人間の「第2の誕生」
 ・ユマニチュードは、この「人と人との関係性」に着目したケアの技法です。
 ・ユマニチュードは、自分も他者も「人間という種に属する存在である」という特性を互いに認識し合うための、一種のケアの哲学と技法です。
 ・その中心に位置するのはケアを受ける人とケアをする人との「絆」です。
・もし他者との絆がなければ
 ・自分が人間的存在であると認識することができます。つまりこれが第2の誕生です。

Section2 ユマニチュードの4つの柱
・人間の尊厳を取り戻すために
 ・(1)その能力や状態を正しく観察し、評価と分析を行うこと。
 ・(2)見つめ、話しかけ、触れ、立つことや移動を効果的にサポートすること。
 ・(3)その行動の抑制も強制も行わない環境をつくること。
1 ユマニチュードの「見る」
・ポジティブな見方とネガティブな見方
 ・水平に目を合わせることで「平等」
 ・正面から見ることで「正直・信頼」
 ・顔を近づけることで「優しさ・親密さ」
 ・見つめる時間を長くとることで「友情・愛情」
・「見ない」は「いない」
・ケアを受ける人は本当に見てもらっているか?
 ・相手を「見る」ためには0.5秒以上のアイコンタクトが必要だとされています。
・「見る」ことに関する2つの方法
 ・自然にできる「見る」
 ・後天的に学ばないとできない「見る」
・職業人として「見る」ということ
・文化の問題ではない
2 ユマニチュードの「話す」
・赤ちゃんにはどう話す?
・話さない人には話しかけなくていい?
・コミュニケーションの原則
・オートフィードバック
 ・自分の行っているケアの様子を言葉にする。
3 ユマニチュードの「触れる」
・広い面積で、ゆっくりと、優しく
・ケアの場での「触れる」
・皮膚から伝わる感覚の情報は場所によって違う
・”つかむこと”が伝えるメッセージ
 ・「親指を手のひらにつけて、絶対に使わない」と強く意識することが必要になってきます。
・5歳の子の力以上は使わない
4 ユマニチュードの「立つ」
・立つことの意味
 ・子どものころに自分で立ち上がったこと、それを見ていた親や大人に喜ばれたという記憶は、ポジティブでほこりに満ちた感情記憶です。
・立つことの生理的メリット
・多くの場合、歩けないのは医原性
・一日20分、立位でのケアを
・脳に誤情報を与えないこと
5 人間の「第3の誕生」
・人間らしい世界に迎えられなかった子どもは?
・近く遮断状態の高齢者
・フライデーはどこにいる

Section3 心をつかむ5つのステップ
・責めるのではなく、変えればいい
・よかれと思ったことが・・・
・マナーとして当たり前のこと
・出会いから別れまでの5つのステップ
1 出会いの準備
・なぜノックするのか?
 ①3回ノック。
 ②3秒待つ。
 ③3回ノック。
 ④3秒待つ。
 ⑤1回ノックしてから部屋に入る。
 ⑥ベッドボードをノックする。 
・自分が来たことを告げて反応を待つ
2 ケアの準備
・合意が得られなければ、あきらめる
 ・3分以上このプロセスに時間をかけない。
・「あなたに会いに来た」というメッセージ
 ・「◯◯です。お話をしに来ました。ご一緒してよろしいですか?」
 ・”あなたと話をしに来た””あなたに会いに来た”というメッセージを伝える。
・嫌がる言葉は使わない
・正面から近づく
・視線をとらえる
・2秒以内に話しかける
・いきなりケアの話はしない
・話す、触れる
・顔はプライベート・ゾーン
3 知覚の連結
・2つ以上の感覚を使う
・複数の知覚情報を矛盾させない
・知覚の連結とは
・適正よりも技術
・2人でケアを行うときには「黒衣とマスター」技法を使う
・マスター役は「見る」「話す」、黒衣役は「触れる」
・どちらが効率的か
4 感情の固定
・「この人は嫌なことをしない」という感情記憶を残す
・やや大げさに表現する
・共に働く人たちの理解を得るには
5 再会の約束
・約束を書きとめておく
・次回来られない場合には

Section4 ユマニチュードをめぐるQ&A

【開催日】
2014年7月16日(水)