-文献名-
Fasting time and lipid levels in acommunity-based population A cross-sectionai study. Arch Intern Med. 2012;172(22):1707-1710.
-要約-
【背景】
現在のガイドラインでは脂質測定は空腹時(最終食事から8時間はあけて)に行うように推奨しているが、最近の研究では非空腹時の脂質は食事の影響はほとんどうけないどころか、随時の方が心血管アウトカムを予測するのではないかと考えられている。この研究の目的は空腹時間と脂質測定値の関係を調査することである。
【方法】
空腹期間(時間単位)と脂質測定値を含んだ検査値を調査したCross-sectional研究が、2011年中の6ヶ月間に大規模な住民レベルのコホートで行われた。データは、カナダのカルガリーにある人口140万人を包括する検査データセンターで抽出された。
プライマリアウトカムは、HDLコレステロール値とLDLコレステロール値、総コレステロール、中性脂肪の測定値で空腹後1時間から16時間までが調査された。個別の年齢調整などは行い、それぞれの空腹時間毎に平均脂質測定値が評価され線型モデルを用いて評価した。
【結果】
合計20万9180人(11万1048人が男性、98132人が女性)が組み入れられた。平均のT-Cho・HDL-Cは空腹時間によっても差はほとんど見られなかった。平均の算出LDL値はグループ間で10%程度異なっており、平均中性脂肪は20%程度の差を認めた。
【結論】
住民レベルの横断研究では、空腹時血糖と脂質測定値にはほとんど差は認められなかった。おそらく脂質測定をルーチンで空腹時に行う必要は無いだろう。
-考察とディスカッション-
脂質検査を空腹で行う必要性については絶食時間に関わらず総コレステロールとHDLに関しては2%未満、LDL値の変化については10%未満、TGの変化については20%未満の範囲ということであった。最近は高脂血症の治療について一次予防の段階で内服治療になることは多くない。一次予防の患者さんに対しては変化率を知った上で大きな差が出るわけでもなさそうなので空腹での採血を推奨しなくてもいいのではないかと感じた。中性脂肪については余程高値でないと介入もしないのでこちらについても空腹である必要はないかと感じた。二次予防患者さんについては、個別の基礎疾患や合併症の交絡を排除しているかは不明であったこともあり、今回の文献だけで二次予防や薬の効果判定のためでの空腹採血を変更するだけの材料にはならないと感じた。
ディスカッション
・みなさんは空腹時採血を行っていますか?それはどうしてですか?
・この文献を読んで何か行動は変わりますか?
【開催日】
2016年8日24日(水)