-文献名-
M.J.M. Bonten. Polysaccharide Conjugate Vaccine against Pneumococcal Pneumonia in Adults. n engl j med March 19, 2015 372;12
-この文献を選んだ背景-
2014年10月から65歳以上にたいする肺炎球菌ワクチンであるニューモバックスが定期接種となった。それに伴い、生活習慣病で通院している65歳以上の方々から肺炎球菌ワクチンを受けたほうが良いのか?という問いが聞かれることが多くなった。
これまでのメタアナリシスでは肺炎球菌ワクチンは敗血症を伴う肺炎など肺炎球菌による重症感染症は予防出来るが、総死亡は減少しないというものであった。また肺炎球菌性肺炎発症率に関してはこれまでのメタアナリシスでは効果を結論づけることは出来ない、1件の日本のRCTで施設患者に対する接種で肺炎球菌性肺炎を減らす事ができたという比較的限定したエビデンスだったかと思う。
そのような中で、2015年3月15日ファイザー社によるオランダでの大規模臨床試験(CAPiTA試験)でプレベナーが成人に対して肺炎球菌肺炎の発症率を減らしたということがNEJMに発表された。今回肺炎球菌ワクチンのエビデンスをアップデートし、より正確な情報を患者さんに伝える目的で本論文を選択した。
-要約-
Introduction:
肺炎球菌多糖体結合ワクチンは乳児の肺炎球菌感染症を予防するが,65 歳以上の成人における肺炎球菌性市中肺炎に対する有効性は,明らかにされていない.
Method:
65 歳以上の成人 84,496 例を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照試験において,13 価多糖体結合ワクチン(PCV13)の,ワクチン型株の肺炎球菌性市中肺炎,非菌血症性・非侵襲性肺炎球菌性市中肺炎,侵襲性肺炎球菌感染症の初回エピソードの予防における有効性を評価した.市中肺炎と侵襲性肺炎球菌感染症の同定には,標準的な臨床検査法と血清型特異的な尿中抗原検出法を用いた.
Results:
ワクチン型株による感染症の初回エピソードの per-protocol 解析では,市中肺炎は PCV13 群 49 例,プラセボ群 90 例に認められ(ワクチン有効率 45.6%,95.2%信頼区間 [CI] 21.8~62.5),非菌血症性・非侵襲性市中肺炎は PCV13 群 33 例,プラセボ群 60 例(ワクチン有効率 45.0%,95.2% CI 14.2~65.3),侵襲性肺炎球菌感染症は PCV13 群 7 例,プラセボ群 28 例に認められた(ワクチン有効率 75.0%,95% CI 41.4~90.8).有効性は試験期間を通して持続した(平均追跡期間 3.97 年).修正 intention-to-treat 解析におけるワクチン有効率は同程度であり( それぞれ 37.7%,41.1%,75.8%), 市中肺炎は PCV13 群 747 例,プラセボ群 787 例に認められた(ワクチン有効率 5.1%,95% CI -5.1~14.2).重篤な有害事象と死亡は 2 群で同程度であったが,局所反応は PCV13 群でより多く認められた.
※per-protocol解析:ITT解析は脱落者を含みランダム化した全ての対象を解析する。Per-protocol解析は服薬が遵守されている、データが利用できる(脱落やデータの不足がない)、重大なプロとコール違反がないものを解析。ITT解析より対象者が限定される
Conclusion:
高齢者において,PCV13 は,ワクチン型の肺炎球菌性,菌血症性,非菌血症性の市中肺炎と,ワクチン型の侵襲性肺炎球菌感染症の予防に有効であったが,あらゆる原因による市中肺炎の予防には有効でなかった.(Pfizer 社から研究助成を受けた.CAPITA 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT00744263)
Discussion/limitation:
この研究は、肺炎球菌疾患の発生率が低く、同じ人種が住むオランダ単一で行なわれた。肺炎球菌血清型の疫学的特徴と肺炎球菌感染症や疾患に対する母集団の感受性によって他の母集団ではワクチンの有効性は変化する可能性がある。
肺炎球菌のワクチン型を同定するための血清型同定尿中抗原検出キットのより高い感度はワクチン血清型のわずかな過大評価に繋がったかもしれない。
【開催日】
2016年7月6日(水)