―文献名―
大嶋光子,中村真規子 「認知症の人の心理的理解 パーソン・センタード・ケアの一考察」 太成学院大学紀要
―要約―
認知症の人は何もわからなくなってかえって楽ではないかと思われがちであるが、認知症の本人の語りから、自分が壊れていくようなおびえと不安を抱えて生きていることがわかっている。認知症の治療には①薬物療法、②脳活性化リハビリテーション、③介護者や家族の対応がある。③のように、身近な者による個別性の高い治療ができる可能性があり、その可能性を生かすため、認知症の理解を深め、認知症の人や介護者の尊厳を高めるパーソン・センタード・ケアについて考察を行う。
・認知症の心理的理解の方法
①認知症の人のためのアセスメントツール センター方式
認知症の人を支えるチームで情報を集約し、お互いの気づきやアイディアをもとに会話しながら「その人を知る」ためのアセスメントツール。
②バリデーション
たとえケアする側からみて違っていても、認知症のその人にとって現実であることを理解し、訴えや行動を否定しないで、受け入れることから始めるコミュニケーション法。
③精神的ケアの20か条
室伏が1987年に述べた、老年期に精神障害(神経症、精神病、痴呆)をもつ患者の生活全般をとらえて、共通して心がけるべきケアの原則。
④ブレーンストーミング法を用いた他者理解
「あなたが認知症になったときに望むケア」をテーマに認知症介護指導者研修の研修生に行われたブレーンストーミング法の実施報告。
・最新の認知症ケア パーソン・センタード・ケア
最近、認知症の当事者が自らの気持ちや環境について、もしくは望む支援について語り始めている。自らの気持ちに代表されるように「その人らしさ」という言葉が新たな認知症ケアのキーワードになっている。
英国ブラッドフォード大学認知症研究グループTom Kidwood教授の造語であるパーソンフッド(personhood)に由来。パーソンフッド:「一人の人として、周囲の人と関わりをもち、周囲から受け容れられ、尊重され、本人もそれを実感していること」
そのパーソンフッドを核として、それを維持し、認知症の人の生活の質を高めていくケアのあり方が「パーソン・センタード・ケア」である。
認知症を持つ人には「よい状態」と「よくない状態」がある。
よい状態の指標があれば、パーソンフッドが保持されていることを示す。
パーソンフッドが損なわれ、認知症の人と介護者の間に悪循環が起こる原因となるものは「悪性の社会心理」と名付けられた。(下表)
ケアする者はパーソン・センタード・ケアを実践するために、パーソンフッドを損なう悪性の社会心理を改善、排除し、人としてのニーズを満たす積極的な関わりを提供していかなければならない。
【開催日】
2014年9月3日(水)