医学生と家庭医療のキャリアについて話すときに考慮するべき12の論点

-文献名-
Kathleen Horrey. et al. Twelve points to consider when talking to a medical student about a career in family medicine. Canadian Family Physician. 1 January 2020; 66 (1): 74-76.

-要約-
背景;カナダ家庭医の大学(CFPC)の学部教育委員会(UGEC)は、医学生の家庭医療に対する認識と、彼らが私たちの専門分野について受け取るメッセージを調査している。この洞察を収集するために、UGECはメンバーの多様なグループからの意見を求めた。
まず、家庭医療のキャリアのやりがいと課題に関する彼らの見解について学ぶため、医学生のセクションを通じて共有される医学生向けの調査を開発した。これらのデータは、過去の家庭医療フォーラムのフォーカスグループスタイルのワークショップで発表された。ワークショップの出席者は、新卒者から40年以上の都市部と農村部の包括的な診療を含む40年以上の診療経験を持つ家庭医の幅広いグループを代表していた。医学生の認識に関する豊富な議論の後、私たちは居住者と最近の卒業生からより多くを聞く必要があることに気づいた。追加の調査は、居住者のセクションおよび家庭医療実践委員会の最初の5年間を通じて、選択したキャリアのやりがいと課題に対する認識を決定するために広められた。入力を提供したすべての人からの応答を捉えた概念的なテーマを開発した。家庭医療に関連するやりがいと課題の認識に関するこれらの概念的アイデアは、その後の家庭医療フォーラムの別のフォーカスグループスタイルのワークショップで発表され、参加者は反復的に出現した概念をさらに微調整した。UGECのメンバーとCFPCのアカデミック家庭医療部門の同僚は、これらのメッセージをさらに洗練させた。
「家庭医療でのキャリアについての12の論点」は、多数の異なる意見や経験の収集から生まれたものであり、家庭医が医学生と日常診療やその間に起こったことに役立てることができ、家庭医療のキャリアのやりがいと課題に関する医学生との議論において焦点を合わせるのに役立つ。以下に示すこれらの12の論点は、文書「家庭医療のキャリアについて医学生と話をする際に考慮すべき12の点」からのものであり、それはwww.cfpc.ca/uploadedFiles/Education/Twelve-Talking-Tipsからダウンロードできる(フランス語版もあり)。
話すポイント
1.家庭医療は専門であることを強調する
特に、かかりつけ医はジェネラリストの専門知識を持つ熟練した臨床医であることを説明する。家庭医療は、知的に刺激的で、挑戦的であり、非常にやりがいのある職業である。患者とその家族に奉仕することがどんな特権かを話す。これらの有意義な縦断的関係は、医師としての私たち自身の回復力と幸福を高める。かかりつけのポイントとして、家庭医療の4つの原則(www.cfpc.ca/Principles)を強調すると役立つ場合がある。その4つの原則とは、かかりつけ医は熟練した臨床医、家庭医療は地域に根ざした学問、かかりつけ医は、定義された診療集団のリソース、患者と医師の関係は、かかりつけ医の役割の中核であるというものだ。
2.彼らとの包括性の概念を調べ、これが圧倒的と思われるかどうか尋ねる
患者のプレゼンテーションの謎を受け入れ、「多くのことを少し知っている」という認識を拒否する。これは、家庭医療に必要な知的厳格さを低く評価する。
3.地域および新興のニーズを満たすために、コミュニティに適応したケアを提供するための訓練方法について話し合う
医学生は社会的説明責任に強い関心を持っている。かかりつけ医が包括的実践、特別な利益を伴う実践、および集中的実践のすべてを共同で私たちのコミュニティのニーズを満たす方法を調査することにより、この素因を構築する。
4.この仕事は、単独ではなくチームで行うことを指摘する
私たちは、他のかかりつけ医や他の医療提供者とチームで協力し、患者のケアを互いに支援する。
5.家庭医療がいかに多様性を提供し、決して退屈しないかを祝う。毎日が新しい経験をもたらす
私たちの仕事には、すべての人々、年齢、ライフステージ、プレゼンテーションの包括的で継続的な医療が含まれる。リーダーシップ、アドボカシー、奨学金、研究、品質改善が含まれる。
6.家庭医療が、このような多様な実践機会を持つ唯一の医療専門分野である方法を説明する
コミュニティのニーズよりも個人の利益に集中していると解釈されるため、柔軟性の概念よりも汎用性を強調する。
7.家庭医療は私たちと共に適応し成長するキャリアであることを強調する
私たちは自分の人生の段階と実践の段階に合わせて調整することができ、個人や私たちが奉仕するコミュニティとして私たちに最適なものを見つける。
8.この汎用性により、ワークライフの統合を達成するためにどのように努力できるかを説明する
医学生は誤って家庭医療を専門分野の「ライフスタイル」選択であると誤解しているため、ワークライフバランスなどの用語は避けてください。
9.「プラス1」年間の強化されたスキルトレーニングに関する神話を払拭する
学生がこれについて尋ねている理由を調べてください。一部の学生は誤解されており、家庭医療の訓練にさらされる前であっても、家庭医として患者に緩和ケア、産科ケア、緊急ケアなどを提供できるように強化されたトレーニングが必要であると考えている。他の学生は、包括的な実践の考えが圧倒的であることに気づき、より集中したいと考えている。この場合、家庭医療が彼らにふさわしいのか、それとも道筋なのかを探ってください。私たちは、生徒が地域のニーズを満たすために強化されたスキルプログラムを選択し、個人の利益を達成するためだけでなく、最良の結果が得られるように利益を達成することを奨励する。
10.家庭医療を「バックアップ」計画と見なしているかどうかを尋ねる
一部の学生にとっては、カナダのレジデントマッチングサービスでの一致で家庭医療を選択することが適切かもしれないが、家庭医療はすべての人のバックアップと見なされるべきではない。生徒が自分にぴったりだと思う分野を選択し、それに応じてランク付けすることを生徒に奨励する。
11.将来の診療条件の不確実性について懸念がある場合は、対処する
認識について率直に話してください。政治的風潮と家庭医療への支援は、時々変わる。物事が今日不確実に見える場合、それらは将来より良くなるだろう。すべての医療専門職に不確実性があることを認める。しかし、他の多くの専門分野よりも家庭医療の雇用機会に関してはるかに確実性が残っている。
12.患者があなたの仕事をどのように評価しているかについてのストーリーを共有する
かかりつけの医師に対する全身的圧力の背景と、私たちの職業は価値がないという印象に反して、患者が私たちの仕事をどれほど大切にしているのか、患者が私たちとの信頼関係を重視していることを忘れてしまうかもしれない。
結論:医学生の家庭医療に対する認識と、彼らが私たちの専門分野について受け取るメッセージを調査した後、医学生に伝えようとするメッセージは、いつも彼らから聞くメッセージとは違うことがわかった。「12の論点」は、家庭医療のキャリアに関するメッセージを改善し、メリットを強調し、神話を払拭し、課題に正直になり、医学生自身に家庭医療が適切かどうかを振り返るのを促すための推奨事項として浮上した。

【開催日】2020年2月12日(水)

COPD患者における一般診療所での呼吸機能検査の妥当性

-文献名-
T R Schermer, et al. Validity of spirometric testing in a general practice population of patients with chronic obstructive pulmonary disease (COPD). Thorax. 2003 Oct; 58(10): 861–866. doi: 10.1136/thorax.58.10.861

-要約-
Introduction:
近年プライマリケアの現場で呼吸機能検査の使用が急速に増大している。実践ガイドラインではCOPDの管理に呼吸機能検査が中心的な役割を示すことを示唆しており、患者のほとんどはプライマリケアで診断治療がされるため、これらのガイドラインは一般診療所に密接に関連している。
呼吸機能検査の有効性(もしくは信頼性)は呼吸器疾患の診断、モニタリング、マネジメントを行うための前提条件で、実際に広く使用されているが、プライマリケアの環境で呼吸機能検査の有効性は証明されていない。
過去の研究では、一般診療所で得られた呼吸機能検査の測定指数は検査室で得られた値に比べ、十分な検出がされていないことが示されており、妥当性が不十分であると示唆されている。しかし、これらの報告はいずれもpeer review(査読)がされておらず、今後さらなる研究が必要とされている。今回の研究の主な目的は、一般診療で行われた呼吸機能検査の結果が、検査室で行われた結果と、一致した検査結果を示すかどうかを評価することである。

Method:
研究には、4つの検査室(大学に2つ、総合病院に2つ)と149人の一般開業医(GP)と185人の検査助手からなる61の一般診療を対象とした。検査室における呼吸機能検査を「ゴールドスタンダード」測定と設定した。
一般診療所における患者は以下が選択された。
年齢は30〜75歳、喫煙者もしくは過去に喫煙歴がある中で、COPDの臨床的定義(「過去2年間に少なくとも3ヶ月間は、日中の咳嗽もしくは呼吸困難がある」)を満たし、気管支拡張薬投与後のFEV1の結果が40-90%、および(または)気管支拡張薬投与後のFEV1/FVCが予測値未満(男性で88%、女性で89%)を示しており、GPによってCOPDと診断された患者を対象としている。重度の併存疾患、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性発疹の既往のある患者は除外された。
研究が実施される前に、一般診療所のGPと検査助手には呼吸機能検査実施におけるトレーニングプログラムを受講させた。プログラムは、2.5時間のセッションを1か月の間隔で2回受講する。セッションの内容は、Thoraxの Webサイトで入手できるものとした。
研究データの収集は1998年12月から2001年1月まで行われ、一般診療所および検査室にはすべて、同じ電子呼吸機能検査計と肺活量測定ソフトウェアが装備された。各研究被験者は、一対の呼吸機能検査が実施された。最初の検査は常にいずれかの検査室で行われ、2回目の検査を一般診療所で行った。2つの検査の間隔が30日を超える被験者は、分析から除外された。研究途中に急性増悪があったケースの測定スケジュールは臨床的な改善が認められた6週間後まで延期された。
被験者は、一対いずれの呼吸機能検査においても、検査前8時間の短時間作用型気管支拡張薬と12時間の長時間作用型気管支拡張薬を控えるように指示され、呼吸機能検査を実施する15分前に、スペーサーによる気管支拡張薬(エアロゾル化サルブタモール400μg)の投与がされた。各テストでは、少なくとも3回の強制呼気操作が行われ、FEV1とFCVの結果の合計が最も高い操作が保存され、分析に使用された。

Results:
61の診療所の内訳は、21(34%)がソロプラクティスであり、35(58%)はグループ診療、5(8%)は学術集中ヘルスケアセンター?である。全体の65%の施設で研究前より呼吸機能検査が導入されていた。Table1には今回の特性が記載されている。トレーニングプログラムの出席率はGPで57%、検査助手で78%でした。61の施設の中で2施設はGPが検査を行い、59は検査助手が実施していた。

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Primary outcomeは、一般診療所と検査室におけるFEV1(一秒量)とFCV(努力肺活量)値の純粋な差の平均とした(ΔFEV1、ΔFCV)。1年目と2年目の研究アウトカムに大きな差はなかった。
また単純な差の平均と別に、調整された推定値も算出された(外れ値の影響を配慮され、最小値付近5%データと最大値付近5%データを除外して計算する5%トリム平均が行われた)。調整された推定値は単純な差の平均値より、(ごく軽度だが)高いことがわかった(Table2)。さらには研究1年目、2年目ともに、すべての診療所で測定した値のほうが、検査室での値よりもFEV1、FCVともに高く算出されていることがわかった(Table3)。この結果は診療所と検査室での呼吸機能検査の測定値に不一致があることを示唆している。
ΔFEV1、ΔFCVの値のばらつきについては、体系的な変化はみられなかった(Figure1,2)。

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Discussion:
今回の研究結果は、一般診療所の呼吸機能検査の品質と「ゴールドスタンダード」の手順で行われる検査室の呼吸機能検査の品質を加味して、納得する結果であった。
一般診療所の呼吸機能検査の平均値を一貫して観察したところ、再現性の割合については、診療所も検査室も同じであった。しかし上述した通り、診療所と検査室の呼吸機能検査の測定値自体の一致は限定的であったため、この結果は診療所と検査室の測定値の結果を同様のものとして扱うことは避けるべきであるということを示唆していることがわかる。

また今回の研究自体は診療所と検査室での呼吸機能検査のパフォーマンスを比較することを目指したものである。
検査のパフォーマンスは検査実施者の関連する因子によって大きく影響を受ける。被験者への指導の質、呼吸機能検査の再現性など多岐にわたる。比較における潜在的なバイアスを抑えるため、検査器具を同様のものを使用する工夫などは行ったが、被験者の気道過敏性や日内変動など個人因子は調査結果に影響を与えた可能性はある。被験者の繰り返し行う検査による学習効果も完全に影響していないとは言い難いが、この点に関しては、過去にCOPDの診断を受けている患者で呼吸機能検査の経験があり、理解力を有する方を対象に行っているため、個々の学習曲線は横ばいになっていると推定される。

(結論)
トレーニングされた一般診療所で得られたCOPDの管理に関連する呼吸機能検査の検査結果は、認定された検査室で測定された値よりもわずかではあるが統計的に高い値が出ていると結論付けた。
しかし再現性については、一般診療所と検査室に差がないことから、プライマリケアの現場で呼吸機能検査の実施が、すでに広く行われていることを支持するものであった。
ただし、上記の通り、診療所と検査室での値は不一致であることも示唆されたため、測定値の評価を入れ替えして使用することは避けるべきである(初回を診療所で測定して、フォローを検査室で測定するような行為)ことも示唆された。
プライマリケアの環境で呼吸機能検査を実施することを奨励することは、実践するスタッフのトレーニングが十分であれば、妥当性のあるものと考える。

【開催日】2020年2月5日(水)

決断の共有(shared decision making)を教えること

-文献名-
Guylène Thériault. et al. Teaching shared decision making. Canadian Family Physician. 17 JULY 2019;vol.65: 514−516.

-要約-
(Introductionに準じた部分)
医療の目標は患者さんの転機を改善することで、それには患者中心のケアを提供する能力を学習者に育成することが重要である。
決断の共有とは、「臨床医と患者が意思決定の課題に直面したときに利用可能な最善のエビデンスを共有し、情報に基づいた好みを達成するために選択肢を検討するよう患者を支援するアプローチ」である。
患者の価値と好みを引き出し、有意義な方法で情報を共有する能力を習得することが重要である。特に、利益と害のバランスが取れている場合は重要である。
エビデンスとベストプラクティスヘルスケアの他の分野と同様に、SDMを教える際、医師は知識、態度、スキルに注意を払う必要がある。多くの場合、焦点はスキルにあるが、他も重要である。
教育は、SDMの目標と原則に関する知識を養う必要がある。一部の学習者は、SDMを認識せず、最終的にすべての決定を下す必要があるかのように練習する。
これは、ケアのいくつかの側面(例:緊急の状況)には当てはまるかもしれないが、ケアの他の多くの側面にはSDMが関係するはずである。
SDMを教える最良の方法はない。SDMに必要な中核となる能力には、リスクコミュニケーションのスキル、患者の好みの引き出し、患者の価値の明確化が含まれる。
SDMに対する既知の障壁の1つは、患者が私に決定してほしいのではないかという信念である。これに対処するには、医師(教育者)は患者の自己決定を取り巻く問題を定期的に学習者と話し合う必要がある。
これは、任意のトピックに関するプレゼンテーションに埋め込むことができる。
たとえば、糖尿病患者の調査と治療をレビューした後、簡単な臨床ケースを提供し、学習者に計画を提供するよう依頼することができる。
その後、学習者に徐々にこの患者の生活の特定の側面を認識させる(たとえば、妻は緩和ケアを受けている、患者は仕事を失ったばかりなど)。
その後、新しい情報に照らして証拠がどのように見えるかを生徒に考えてもらう。最終的な目標は、学生が意思決定における患者の価値と好みの重要性を認識することである(Box 1)。

Box 1(概要)
最後に… だから、あなたは私たちが糖尿病患者に提供できるさまざまな薬について学びましたが… 
聞いて… 薬の選択を後押しするのは何だと思いますか? 
学習者は次の点を指摘するかもしれない。そうでない場合は、必ずそれらについて話うように。
有効性の証拠、薬物の適用範囲またはアクセシビリティの他の側面、価値と好み

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もう1つの障壁は、SDMに時間がかかること。実際、コンサルテーションの長さに対する効果の中央値は2.5分。
ロールプレイは、学習者が必要なスキルを開発するのに役立つという点で、SDMを教える上で非常に興味深く、形成的である。
ロールプレイのシナリオを使用する場合は、学習者に相互作用が有意義であり、ディスカッションの時間をためらうことなく、それほど長くないことを認識させてください。
決断の共有には、さまざまな手順が含まれる(Box 2)。教材として、一部の教師は学習者が携帯できるリマインダーカードを使用している。
他の人はこれらの手順を使用して、構造化されたフィードバックを提供している。

Box 2. 決断の共有の手順
1. 決定する必要があることを認める。
2. オプションと代替案を提示する。
 • フレーミング効果の回避* • 独自の価値観を適用しない•適切な意思決定支援ツールを使用する
3. 各オプションの潜在的なリスクと潜在的な利点について話し合う。
 • 潜在的な利益のために同様の分母を使用し、潜在的な害
 • 自然数を使用します(たとえば、1%の代わりに100人に1人)
4. その情報に照らして患者の価値と好みを話し合う
5. 患者の日常生活と目標における、さまざまなオプションの効果について話し合う
6. 患者が(意向を)反映するのを助けるために必要とされる、特定の問題に関する情報を提供する
7. 患者の懸念を確認し、理解を明確にする
8. 計画を立て、必要に応じてフォローアップを整理する
注)フレーミング効果とは、複数の選択肢から意志決定や判断をする際に、絶対的評価ではなく、そのときの心的構成
(フレーミング)や質問提示のされ方によって、意志決定が異なる現象のこと。
*フレーミングには、さまざまな代替手段の価値または利益と損害の認識に影響を与える可能性のある方法で情報を提示することが含まれる。

結論
意思決定を共有することは、教えることのできるスキルである。それが実践に統合されるためには、それは、単独の
カリキュラムではなく、すべての教育の重要な部分である必要がある。 他のトピックと同様に、多様式のアクティビテ
ィを使用すると、学習の効率が向上する可能性がある。 Box 3には、可能な活動に関するさまざまなアイデアがリストさ
れている。

Box 3. SDMを教えるための具体的な活動(概要)
ロールプレイ 
・どの質問がより有用であったか、それはなぜかを熟考する
・私たち自身の価値を反映していないかもしれない、次の決定を受け入れることの難しさについて話し合う
  学習者に会話ツールまたは意思決定支援ツールを作成してもらう
  フレーミング効果について議論する
• 情報を提示するさまざまな方法(割合、治療に必要な数、相対リスクなど)で学習者を考えさせ、内省を促進するビデオを使用する
SDMの手順を構造化された方法で使用してフィードバックを提供する
• これらの手順を毎日または毎週の学習者のフィードバックフォームに埋め込みます
 正式な教育に取り組む
•多くの(ほとんどではないにしても)講義の最後に、患者に意味するかもしれないことについてのいくつかの考察を含めることを目指す

JC黒木2019092

【開催日】2019年9月11日(水)

解釈的医療:プライマリ・ケア現場の変化の中、ジェネラリズムを支持する

-文献名-
Reeve, Joanne. “Interpretive medicine: supporting generalism in a changing primary care world.” Occasional Paper (Royal College of General Practitioners) 88 (2010): 1.

-要約-
患者中心性は総合診療の核となる価値である。それは、個々人の全人的なケアを支援する関係性のプロセスとして定義されている。今日まで、患者アウトカムと患者中心性の関連を示す努力は期待外れに終わっており、一方で現実的というよりは誇張した結果を示すいくつかの研究がある。患者背景の問題は、患者中心の医療面接の質とアウトカムに影響を与える。知識やエビデンスを合理的に活用する事は、最新の診療の視点を明確にし、患者中心性に影響をもたらす。
文献の批判的吟味、自分の実験的研究、診療実践からの振り返りに基づいて、 個別ケアを裏付ける知識の活用の最新モデルに対して、私は批判する。EBMや健康政策への適応を考えるSBM、
は診療経験の上に科学的知識をおく認識論的強調の観点から、最良のエビデンスを明確にする。
これは疾患の客観的な知識、そしてこの知識の確からしさの量的見積もりも含まれる。二次医療(臓器別専門医へ診断や治療のため紹介される患者)を考える際の“議論ある適切さ”に対して、
総合診療への(最新モデルの)応用は、診療で扱っている複雑でダイナミックで不確実な病体験の本質を考えると疑問が呈される。
私は、解釈的医療のモデルにより総合診療が記述されるのが望ましいと提唱する。解釈的医療とは、批判的で思慮深くプロファッショナルである適切な範囲の知識(個別の病体験のダイナミックで共有された探求や解釈に関する)の活用である。そしてこれらは、患者の日常生活を維持するための個人の創造的な能力を支援する。解釈的知識の発生は日々の総合診療の欠かせない一部であるが、その専門性は、うまくいっているか外的に判断できるような適切なフレームワークを持ってこなかった。解釈の質の認識に関連する理論や、質的研究から発生した知識を記述することで、ジェネラリストや解釈的臨床実践から発生した知識の質を評価するフレームワークを提唱する。私は、このモデルを更に発展させる研究の3つの優先順位(個人の創造的能力creative capacityの測定、個人のcreative capacityが上がることでのコミュニティの発展、暗黙知の信頼性の確立)を示す。またそのことで総合診療の規律の重要な要素を強調し維持するであろう。これは地域コミュニティの健康ニーズを促進し、支持する。

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【開催日】2019年7月24日(水)

禁煙による体重増加の影響

―文献名―
Yang Hu. et al. Smoking Cessation, Weight Change, Type 2 Diabetes, and Mortality. N Engl J Med 2018; 379:623-632.

―要約―
Introduction:
禁煙後の体重増加によって、禁煙による健康上の利益が減少するかどうかは明らかにされていない。
Method:
米国の男女を対象とした3つのコホート研究で、禁煙した人を特定し、禁煙状況と体重の変化を前向きに評価した。禁煙者における2型糖尿病・心血管疾患による死亡・全死因死亡のリスクを禁煙後の体重の変化量別に評価した。
Results:
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最近(禁煙2〜6年間)禁煙した人は、現在の喫煙者よりも、2型糖尿病のリスクが高く、HR:1.22 (95%CI:1.12-1.32)。
しかし、心血管疾患による死亡のHRは現在の喫煙者と比較して、体重増加の程度を問わず最近の喫煙者および長期間(>6年間)の禁煙者ともに低下した。
2型糖尿病のリスクは、体重の増加量に正比例しており、体重増加がない・0.1〜5kg増ではリスク上昇の有意差はなかった。
禁煙した人では、禁煙後の体重変化にかかわらず、死亡率に一時的な上昇は認められなかった。現在の喫煙者と比較して、心血管疾患による死亡のHRは、最近の禁煙者のうち、体重が増加しなかった群で0.69(95%CI:0.54~0.88)、0.1~5.0 kg増加の群で0.47(95%CI:0.35~0.63)、5.1~10.0 kg増加の群で 0.25(95%CI:0.15~0.42)、>10.0 kg増加の群で0.33(95%CI:0.18~0.60)、また、長期禁煙者で0.50(95%CI:0.46~0.55)であった。全死因死亡についても同様の関連が認められた。

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Fig1
図A:2型糖尿病のリスクは禁煙後5〜7年でピークとなり、その後減少する。
図B:体重増加を伴わない最近の禁煙者の2型糖尿病のリスクは、体重が増加した禁煙者におけるリスクよりも、喫煙をしたことがない人のリスクに早く近づいた。

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Fig2
図A:心血管系死亡率は禁煙後に大幅に減少し、10〜15年で最低に達し、その後ゆっくり上昇しましたが、現在の喫煙者のレベルには到達しなかった
図B:層別分析では、このような関連パターンがすべての体重増加群で観察されたが、体重増加なしの群の中では、心血管死亡率は5〜10年間禁煙した後減少し、その後上昇傾向なしに横ばいになった
図C:全死因死亡率は5〜7年の中止で単調な減少を示し、その後横ばい状態になった
図D:このパターンは、体重増加なしの禁煙者が禁煙後に直線的なリスク減少を示したことを除いて、すべての体重変化群で観察された

CONCLUSIONS:
大幅な体重増加を伴った禁煙は、2型糖尿病の短期的なリスクの上昇に関連したが、心血管死亡と全死因死亡の減少に対する禁煙の利益を減少させなかった。

[開催日]2019年2月6日(水)

Multimorbidity発生の予測

―文献名―
Luke T.A.Mounce,PhD et al. Predicting Incident Multimorbidity. Ann Fam Med 2018;16:322-329. https://doi.org/10.1370/afm.2271.

―要約―
PURPOSE
多疾患併存は有害な結果に関連するが、その発生の決定要因に関する研究は不十分である。私たちは社会人口統計学的、健康的、個人的な生活習慣(例えば、身体活動、喫煙、BMI)のどのような特徴が多疾患併存の新規発生を予測するかを研究した。
METHODS
10年間のフォローアップ期間を含む英国加齢縦断研究(ELSA)における50歳以上の4,564名の参加者のデータを使用した。慢性疾患がない研究参加者(n=1477)については、2002-2003年から2012-2013年の間の結果とベースライン特性の関連性を別々に調べるための離散時間ロジスティック回帰モデルを構築し、 初期の疾患にかかわらず10年以内の疾患の増加、および多疾患併存の発生に対する個々の疾患の影響を調べた。
RESULTS
多疾患併存の新規発生リスクは、年齢、財産(少ない方がハイリスク)、身体活動低下または外的統制(ライフイベントは自分ではコントロールできないと信じていること)と有意な関連性がある。
性別、教育、社会的孤立に関しては有意な関連性は認められなかった。
疾患が増加した参加者(n=4564)については、喫煙歴のみが追加の予測因子であった。
単一のベースライン疾患(n=1534)を有する参加者にとって、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息および不整脈は、その後の多疾患罹患と最も強い関連性を示した。
CONCLUSIONS
我々の知見は、影響を受けやすいグループの多疾患併存の新規発生予防を目的とした戦略の開発と実施を支援する。このアプローチは、生活習慣要因に対処する行動変容を組み込み、健康関連の統制の所在(Locus of Control)を目標とすべきである。

【開催日】2018年12月5日(水)

プライマリ・ケアにおける高齢者の入院に関連する潜在的な不適切処方の影響:縦断研究

―文献名―
Teresa Pérez, Frank Moriarty, Emma Wallace, Ronald McDowell, Patrick Redmond, Tom Fahey. Prevalence of potentially inappropriate prescribing in older people in primary care and its association with hospital admission: longitudinal study. BMJ (Clinical research ed.). 2018 Nov 14;363;k4524.

―要約―
OBJECTIVE
入院と65歳以上の高齢患者への不適切処方との関連と,入退院前後で不適切な処方が退院後に増加するかどうかについて調べることを目的とする.
DESIGN
 一般(家庭医療)診療所の診療録を後ろ向きに抽出した縦断研究.
SETTING
 2012~2015年にかけて,アイルランドにある44カ所の一般(家庭医療)診療所.
PARTICIPANTS
 診療所を受診した65歳以上の成人.
EXPOSURE
 病院への入院(入院群 v.s. 非入院群,入院前 v.s. 退院後)
MAIN OUTCOME MEASURES
 高齢者の処方スクリーニングツールScreening Tool for Older Persons’ Prescription(STOPP)ver.2の45の基準を用いて,潜在的不適正処方が占める割合を算出し,患者特性で補正を行い,層別化Cox回帰分析(明らかな潜在的不適正処方基準を満たした発生率)と,ロジスティック回帰分析(1人の患者について潜在的不適正処方が1回以上発生したか否かの2項値による)の2通りで分析し,入院との関連を検証した.患者特性と診断名に基づく傾向スコアによりマッチングを行い,感度分析も行った.
RESULTS
 分析には3万8,229例が包含された.2012年時点での平均年齢は76.8歳(SD 8.2),男性が43.0%(1万3,212例)だった.年に1回以上入院した患者の割合は,10.4%(2015年,3,015/2万9,077例)~15.0%(2014年,4,537/3万231例)だった.
 潜在的不適正処方を受けた患者の割合は,2012年の45.3%(1万3,940/3万789例)から2015年の51.0%(1万4,823/2万9,077例)の範囲にわたっていた.
 年齢や性別,処方薬数,併存疾患,医療保険の種類とは関係なく,入院は明らかに潜在的不適正処方基準を満たす割合が高かった.入院補正後ハザード比(HR)は1.24(95%信頼区間[CI]:1.20~1.28)だった.
 入院患者についてみると,潜在的不適正処方の発生率の尤度は,患者特性にかかわらず,退院後のほうが入院前よりも上昇した(補正後OR:1.72,95%CI:1.63~1.84).なお,傾向スコア適合ペア分析でも,入院に関するHRはわずかな減少にとどまった(HR:1.22,95%CI:1.18~1.25).
CONCLUSION
 高齢者にとって入院は,潜在的な不適正処方の独立関連因子であることが明らかになった.入院が高齢者の不適正処方にどのような影響を及ぼしているのか,また入院の潜在的有害性を最小限とする方法を明らかにすることが重要である.

【開催日】2018年12月5日(水)

Top 20 POEMs of the Past 20 Years

―文献名―
Mark H. Ebell, et al. Top 20 POEMs of the Past 20 Years: A Survey of Practice-Changing Research for Family Physicians. ANNALS OF FAMILY MEDICINE. 2018; VOL. 16, NO. 5 SEPTEMBER/OCTOBER: p436-439.

―要約―
1994年に、Slawson, Shaughnessy, and Bennettにより発表された論文によって、the key concepts of “information mastery”が確立された。従来のevidence-based practiceでは、研究のinternal validityの評価が重要視され、relevanceやapplicationは置いていかれていた。Information masteryによってpatient-oriented outcomesに注目が集まった。relevant clinical questionについての研究で、patient-oriented outcomesを出してpracticeを変えうるような論文は、POEM(patient-oriented evidence that matters)と呼ばれるようになった。
1998年に、筆者らはPOEMの定義に当てはまる論文を同定するために毎月100以上のclinical medical journals を集めたsystematic reviewを始めた。それぞれの論文は、primary care expertによってフォーマットに従って要約され、簡潔なbottom-line recommendation for practiceを提供した。それらはEssential Evidence Plusの購読者にメールされたりAFPに掲載されたりポッドキャストで配信されたりした。1998〜2017の20年間で、5,664のPOEMs (mean=283/y, range=230-368)が集まった。20週年を記念して、各年のPOEMsを選んだ。

201811松島1

They can be broadly divided into 3 groups:
(1) POEMs that recommend a novel, effective intervention,
(2) those that recommend abandoning an ineffective practice, and
(3) those that recommend abandoning a potentially harmful practice.

We observed greater challenges in choosing the best POEMs in recent years, largely because it is difficult to know whether a 3-year-old study will withstand the test of time and the rigors of replication in real-world settings. This judgment is even more difficult because of the increasing amount of industry-sponsored research published in journals and the relatively small amount of public funding for research to support the study of real-world problems in real-world settings.

It would be difficult for any clinician in any specialty or discipline to read all of the journals publishing studies of potential importance, not to mention critically evaluate the validity of individual relevant articles. Clinicians regularly reading POEMs can confidently change practice with the knowledge that they are using the very latest, most relevant, and valid information to provide for the very best care for their patients. The current POEMs are oriented toward primary care, including obstetrics and general hospitalists. We hope to encourage the development of POEMs for other specialties and disciplines in medicine, as well as such other health care disciplines as dentistry and veterinary medicine.

【開催日】2018年11月21日(水)

家庭医療におけるポイントオブケア超音波検査(POCUS)

―文献名―
Paul Bornemann, Tyler Barreto. Point-of-Care Ultrasonography in Family Medicine. American Family Physician. 2018; 98(4): 200-202.

―要約―
論説 家庭医療におけるポイントオブケア超音波検査
ポイントオブケア超音波検査(POCUS)は、臨床医によってベッドサイドで行われる超音波検査プロトコル
POCUSプロトコルにより表1の問いに答えることができる。

比較的短いトレーニング期間の後に行うことができる
・家庭医レジデントを対象としたPOCUSの使用可能性(feasiblity)の研究
 ポータブルエコーを使用した16時間のトレーニング
 使用法の学習が容易で診断効率と精度が向上し、患者満足度が上がる
 参加者の86%が毎日の実践においてPOCUSを引き続き使用することに同意するか強く同意した

OCUSは医療費を削減する可能性を示すエビデンスが増えている
・救急における尿管結石疑いの評価でエコーとCTを比較した研究
 POCUSによる初期検査で転帰の変化なしに59%のCT検査数が減少
・静脈アクセス、胸腔鏡検査、関節症への手技などにおいて超音波検査が合併症を減らす。

POCUSは多くの場面で身体診察やレントゲン写真より優れている
・POCUSを使用する場合、ジェネラリストの左心室収縮機能の評価は循環器科医と同等に正確
 医学生でも診断精度を50%から75%に高めることができる。
・POCUSは、蜂窩織炎と膿瘍を鑑別するための身体検査よりも優れている
 マネジメントを14%~56%の症例で変更させる。
・POCUSは、胸水、肺水腫、肺炎および気胸を含む多くの肺の診断において、身体診察またはCXpより優れている。

POCUSはイメージングへのアクセスを迅速化し増やすことができる
・POCUSを用いた腹部大動脈瘤のスクリーニングは、感度99-100%。4分未満で完了できる。
・POCUSによる下肢DVTのスクリーニングは、感度95%、特異度96%。4分未満で完了できる。

POCUSには様々なベネフィットがあるため、家庭医療における使用への関心が高まっている
・プログラム責任者らへの2014年の調査
  POCUSの公式カリキュラムを取り入れたレジデントプログラムは2%しかなかったが、
  29%が(非公式の?)カリキュラムを前年度から開始しており、
  11%がカリキュラムを開始する準備をしていた。
・2016年、AAFP(American Academy of Family Physicians)代表者会議の決議
  すべての家庭医療プログラムがPOCUSを研修に組み入れることを推奨
  POCUS研修を組み入れた継続的な医学教育をAAFPが増やしていく
・AAFPにより、大学医学教育におけるPOCUSカリキュラムガイドラインが作成された(添付資料)

後藤先生図1

腹部大動脈瘤スクリーニング
 ・瘤はあるか?
心臓
 ・左室収縮機能障害はあるか?  ・左室肥大はあるか?
 ・心嚢液はあるか?  ・体液量過剰ではないか?
DVT
 ・DVTはあるか?
肝胆道
 ・胆石はあるか?  ・胆嚢炎はあるか?  ・肝脾腫はあるか?
 ・脂肪肝はあるか?  ・腹水はあるか?
筋骨格
 ・骨折はあるか?  ・靭帯あるいは腱の病変はあるか?
 ・関節液はあるか?  ・手根管症候群を示唆する正中神経腫大はあるか?
産科
 ・子宮内妊娠はあるか?  ・胎位は正常か?
 ・胎児心拍はあるか?  ・妊娠期間は?
眼科
 ・網膜剥離はあるか?  ・硝子体出血はあるか?
 ・頭蓋内圧亢進を示唆する視神経腫大はあるか?
手技の際のガイド
 ・針、カテーテル、気管内チューブは適切な場所にあるか?

 ・気胸はあるか?  ・肺炎の所見はあるか?
 ・胸水はあるか?  ・肺水腫の所見はあるか?
皮膚軟部組織感染症
 ・膿瘍はあるか?
甲状腺
 ・甲状腺に病変はあるか?
泌尿器科
 ・水腎症あるいは腎結石の所見はあるか?残尿はどれくらいか?

【開催日】
 2018年11月8日(水)

家庭医療・古典シリーズ  家庭医の外来の「ルーチン、ドラマ、セレモニー」とは一体何か?

-文献名-
Miller WL. Routine, ceremony, or drama: an exploratory field study of the primary care clinical encounter. J Fam Pract. 1992 Mar;34(3):289-96.

-要約-
<サマリ>
背景:家庭医の診療ではしばしば家族システム理論と生物心理社会モデルを用いるが、忙しい外来診療においてはそれらの適応の仕方には違いがある。
方法:4人のグループ診療のうちの2名の家庭医によって日々の診療マネジメントの例示を同定しする。共同での質的研究を使ってその過程を探索する。鍵となる人物となる2名の家庭医と看護師の管理者への半構造化インタビューも用い、人類科学的なインタビュー技術を用いてテーマ分類を行なった。結果として生じた臨床上の出会いの類型化と意思決定の分類を参与観察と鍵となる人物からのレビューを用いて評価を行なった。最終結果は医師患者関係の過去の文献との比較で行った。
結果:3つの臨床上の出会いの類型が同定された。
 ●ルーチン:単純、単回、短時間外来、契約上の診療、生物医学モデルのみで対応
 ●セレモニー:誓約的、儀式的なスタイル
 ●ドラマ:精神的な問題を含め、衝突や感情を扱う状況 
結論:臨床上の出会いを分類することは、家庭医にとって家族システムの考え方を忙しい日々の診療に統合するための助けとなるであろう。これらの発見は今後の未来の研究、臨床研究、教育など多くのものに応用できる。
――――――――――
<結果の詳述>
外来の4つの定型分類
 ●1、ルーチン:『型通りの単純作業』
  ➢「シンプル」「簡単」「ありふれた風邪」「飯の種」
  ➢日常の感染症、小外科、保険書類関係、保証を提供するもの
  ➢解決するのが容易で比較的身体的問題のみの外来

 ●2、ドラマ:『不穏で緊迫した感情が蠢く場面』
  ➢「複雑」「困難」「問題」「話が終わらない外来」「悪い知らせを伝える」
  ➢不確実性が高い場面、衝突が生じる場面、医師―患者の合意が難しいとき、家族内の対立、アドヒアランスの不良、がんや糖尿病、ダウン症の告知
  ➢時間がかかる脅威を感じる外来で、その後も頻回の受診を必要とする。家族図が助けとなる。
  ➢早期にこれはドラマだという認識を持つと、患者さんが帰る間際の「先生、実は」という状況を減らすことができ、またその外来の最後に今後に続く何回もの受診の価値を伝えることができる。
  ➢問題解決は必要としない

 ●セレモニー:『儀式・祭事』
  ➢内容から2つに分かれる。
 ●3−1、移行期セレモニー(特別な機会での式事:結婚式、お葬式的な?)
  ➢新しいドラマの最初の幕開け、「予定の破壊者」であり「隠されている時間爆弾」。
  ➢ルーチンの中でドラマであると早期に認識し、以下の4つのステップを踏むことが重要 
    1.医者が患者を信頼していることを患者に知ってもらう
    2.医師は患者が最も恐れていることを取り扱う
    3.「一生のお願いだから聴診器を当ててください」への診察の実施
    4.医師は、希望を与えて、次回までに何か出来ることを提供する 
  ➢移行期の説明を受け、不安について学び、家族との再会・和解を開始し、さらに害が生じないように長期間の診療を準備
 ●3−2、維持期セレモニー(定例”Do”式事:朝礼、お歳暮的な?)
  ➢プロトコールに沿った対応、いつも通りの対応、
  ➢これも医師の快適さ・不快さでさらに2つに分かれる。
    ✧3-2-a.維持期好意的セレモニー 
     ●慢性疾患の管理・マネジメント、患者とのホラ話・噂話の交換 
    ✧3-2-b.維持期絶望的セレモニー
     ●「腹を立てている患者」、「孤独な患者」と評される。
     ●不要なビタミンB12注射や疼痛緩和注射などの不快な定期マネジメント(出来上がってしまったパターン)
 ●移行期も維持期も両方ともに、定められ繰り返される型や構成となっている。儀式的であったり、良し悪し関係なくパターン化された繰り返しのプロセスである。(McWhinneryは、シャーマン的な振る舞いと表現)

【開催日】2018年10月24日(水)