月経困難症の薬物治療(低容量エストロゲン・プロゲスチン配合薬とプロゲスチン製剤)

-文献名-
Masaru Iwata. Efficacy of Low-Dose Estrogen–Progestins and Progestins in Japanese Women with Dysmenorrhea: A Systematic Review and Network Meta-analysis. Advances in Therapy. 2002; 39: 4892-4909.

-要約-

Key point
なぜこの研究を行うのか?
日本人女性において、月経障害は仕事上の障害の主な原因であり、月経困難症は最も一般的な月経症状の一つである。したがって、月経困難症の疾病負担を改善することは、特に日本では不可欠である。月経困難症に対するプロゲスチン単独および低用量エストロゲン・プロゲスチン(LEPs)の有効性については十分な検討がなされていないため、本研究では、日本人女性における月経困難症の治療に使用可能なLEPsとプロゲスチンとの有効性の差を評価するために、システマティックレビュー、メタアナリシス、ネットワークメタアナリシスを行った。
この研究から何がわかったか?
直接メタアナリシスでは、原発性月経困難症における超低用量ノルエチステロン/エチニルエストラジオール(=ルナベルULD)の周期的レジメンを除き、いずれのタイプの月経困難症においても、またいずれのアウトカムにおいても、すべての薬剤とプラセボとの間に有意差を認めた、 また、8つのランダム化比較試験を含む間接的なネットワークメタ解析では、二次性月経困難症においてジエノゲストとノルエチステロン/エチニルエストラジオールの周期的レジメンの間にVASで有意差を認めたが、その他の薬剤間に差は認められなかった。LEPsとジエノゲストが原発性および続発性月経困難症に有効であることを確認し、治療成績の改善には周期的レジメンよりも継続的レジメンの方が有効である可能性を示唆した。

Introduction
月経困難症は月経に関わる症状として最も一般的であり、月経期の下腹部痛、腹部膨満感、悪心、嘔吐、頭痛、めまいなどの症状を特徴とし、QOLや生産性に悪影響を及ぼす。
原発性月経困難症は、原因となる疾患に関連しない月経痛であり、初経後2〜3年で発症することが多い。続発性月経困難症は主に生殖器の疾患(子宮腺筋症、子宮内膜症、子宮線維腫症)と関連している。子宮内膜症は、約70%の女性にみられる続発性月経困難症の原因であり、原発性月経困難症よりも長く続く月経困難症を引き起こすことが知られている。
原発性月経困難症と思われている患者の中に続発性が多く含まれる、原発性から続発性への移行がみられるといった報告もあり、明確な区別が難しい疾患群かもしれません。
日本人女性における月経困難症に対するLEPsおよびプロゲスチンの有益な効果を示唆する研究はいくつかあるが、薬剤間の有効性の差は依然として不明である。

Methods
MEDLINE、Cochrane Library、医中誌のデータベースを検索して研究を同定し、原発性および続発性の月経困難症に対するLEPおよび黄体ホルモンを評価するために、全月経困難症スコアおよびvisual analogue scale(VAS)を転帰尺度として用いたRCTを対象とした。メタアナリシスおよびネットワークメタアナリシスにより結果を分析した。

2021年8月31日以前に発表された研究が対象。RCTまたはRCTのSR、日本で実施された研究で日本語もしくは英語のもの。参考文献リストから手作業で検索、未発表論文がないか確認済み。集められた論文の質の評価は Cochrane risk of bias tool を用いて評価した。
Results
8件のRCTに関する10件の論文を同定し、7剤(LEPs6剤とプロゲスチン1剤)とプラセボを解析に含めた。
メタアナリシスでは、プラセボと比較して、ほぼすべての薬剤で月経困難症の総スコアとVASの改善が認められた。

Fig.2それぞれの薬剤とプラセボとの比較
(DRSP/EEの周期投与と連続投与の比較は含まれない)
a:原発性 月経困難症スコア
b:原発性 VASスコア
c:続発性 月経困難症スコア
d:続発性 VASスコア
参考:
ネットワークメタアナリシスでは、続発性月経困難症のVASはNET/EE LD(周期投与)よりもDNGでより改善した。(平均差25.84[95%CrI44.46〜7.15])
投与レジメンの比較では、LEPs(周期投与)よりもプロゲスチン持続投与でVASが改善し、LEPs(周期投与)よりもLEPs(延長投与)とプロゲスチン持続投与でSUCRA(surface under the cumulative ranking)が高くなった。







Discussion
月経困難症スコア、VASスコアともに治療群とプラセボ群の間には有意差がみとめられた。
続発性月経困難症でDNGがなぜ有効なのか?LEPsでは休薬期間に消退出血と骨盤痛を伴うがDNGにはないこと、高い黄体ホルモン活性による抗炎症作用と抗増殖作用が期待されることが理由になるだろう。子宮内膜症の治療容量の半分であることには注意。
LEPsの周期投与と連続投与の比較については、無月経期間(消退出血を含む)を長く作ることで疼痛が軽減された可能性が考えられる。消退出血頻度が少なくなることで「月経困難」の重症度が下がるか?という点については今回は評価されていない。
研究の限界としては、評価地点が月経周期の中で統一されていないこと、製薬会社主導の研究が多いこと、パブリケーションバイアス、集められた研究の数が少ないことが当てはまる。

参考pdf
https://med.mochida.co.jp/tekisei/dng202003.pdf

LEPsの種類について
黄体ホルモン:アンドロゲン作用の順でNET→LNG→DSG→DRSP
NET/EE ルナベルLD/ULD
LNG/EE トリキュラー(アンジュ)、ジェミーナ(連続投与)
DSG/EE マーベロン
DRSP/EE ヤーズ、ヤーズフレックス(連続投与)

副作用について
今回の論文では触れられていないが、DNGはLEPsと比較して血栓症発生リスクは有意に低い。一方で不整性器出血の割合はかなり高い。
周期投与と延長投与に関しては、延長投与での有意な血栓症発生リスクの増加は示されていないが、不整性器出血のリスクはあがることが示されている。悪性腫瘍に関しての報告はみつけられなかった。

【開催日】2024年11月6日

更年期障害における血管運動症状に対してのSSRI vs SNRI

―文献名-
Laura Morton Newhouser. SSRIs vs. SNRIs for Vasomotor Symptoms of Menopause. Am Fam Physician. 2022 Apr 1; 105(4): 430-431.

―要約-
Q.
SSRIとSNRIは更年期の血管運動性障害の治療に有効か?
A.
SSRIとSNRIはどちらも更年期の血管運動症状を緩和するのに有効である。(推奨度A)
2つのクラスの薬物を直接比較した研究はない。SNRIはより多くの有害作用と関連している。SSRIはタモキシフェンの代謝を阻害する可能性があるため、乳がんの女性にはベンラファキシン(イフェクサー)が好まれる。

2015年のSRでは、27〜78歳の女性3490名を対象に、血管運動症状に対するSSRIとSNRIの有効性を評価した。(「ほてり」回数は0〜50回/週)活動性がん患者、ホルモン療法、抗うつ薬、精神作用のある薬剤を内服している人は除外されている。ベンファラキシンがSNRIの第一選択で、効果発現が最も早く、(1週間までに単独で41%減、プラセボに対して26%減、P<0.001) 吐き気、口渇、便秘などの副作用もより頻繁にみられた。SSRIのパロキセチン(パキシル)は、プラセボと比較した場合、ほてりを最も軽減した(10mgで40.6%、20mgで51.7%;それぞれP =0 .0006およびP = 0.002)。 2020年の4つのRCTの検討ではSNRIやSSRIを含む6つの介入が検討された。もっとも血管運動症状を改善したのはエストラジオールだったが、ついでSNRIであるベンファラキシンが効果をみとめた。 14回以上の血管運動症状/週を有する閉経前後女性1005人が対象。介入は、エスシタロラム(レクサプロ)10~20mg/日、ヨガ、有酸素運動、オメガ3脂肪酸1.8g/日、17-β-エストラジオール0.5mg/日、ベンラファキシンXR75mg/日、不眠症の認知行動療法(CBT-I)であった。アウトカム評価には、Menopause-related Quality of Life scale(MENQOL)およびそのサブスケールを用いた。結果としては、エストラジオール、エスシタロプラム、不眠症の認知行動療法、ヨガでベースラインからのMENQOL全体の有意な改善が認められた。もっとも効果が高かった(スケールの大きな改善がみられた)のはエストラジオールであった。結論としては、以上の結果より、更年期障害に関連したQOL改善のために、女性は自身の症状や好みに応じて様々な治療戦略から選択することができることを示唆するものであった。 (日本で使われているエスラジオールはエストラーナテープ0.72mgを2日ごと貼り替え)

北米更年期学会の2015年のエビデンスに基づくポジションペーパーでは、更年期の血管運動症状の治療について、いくつかの異なる非ホルモン療法の選択肢を検討した。学会は、SSRIとSNRIの両方が生理的更年期症状(加齢によるもの)および外科的更年期症状(外科手術後)を大幅に緩和すると結論づけた。SSRIではパロキセチン(パキシル:10〜25mg/日)、エスシタロプラム(レクサプロ:10〜20mg/日)、シタロプラム(セレクサ:10〜20mg/日)が最も症状を軽減し、SNRIではベンラファキシン(イフェクサー:37.5〜150mg/日)とデスベンラファキシン(プリスティック:100〜150mg/日)が有意に作用したと述べている。SSRIは初期の副作用(特に吐き気とめまい)が少ないが、タモキシフェンの代謝を損なうことが指摘された。このため、乳癌の既往がある女性にはベンラファキシンが好まれた。

【開催日】2022年12月14日(水)

6ヶ月未満の乳児におけるCOVID-19関連入院に対する妊娠中のmRNACOVID-19ワクチンによる母体ワクチン接種の有効性-17州

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。
-文献名-
Natasha B. Halasa, MD, Effectiveness of Maternal Vaccination with mRNA COVID-19 Vaccine During Pregnancy Against COVID-19–Associated Hospitalization in Infants Aged. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2022 Feb 18; 71(7): 264–270.

-要約-
COVID-19の予防接種は、妊娠中、授乳中、妊娠希望している人、または将来妊娠する可能性のある人をCOVID-19から守るために推奨されている。乳児は、急性呼吸不全などCOVID-19による生命を脅かす合併症の危険性がある。他のワクチンで予防可能な疾患から得られた証拠によると、母体免疫は、特にリスクの高い生後6カ月間に、経胎盤的な受動抗体移行により乳児を保護することができる。妊娠中のCOVID-19ワクチン接種に関する最近の研究では、SARS-CoV-2特異的抗体の経胎盤移動が乳児に保護を与える可能性を示唆している。しかし、妊娠中の母親の免疫による乳児のCOVID-19に対する保護効果についての疫学的証拠は今のところ存在しない。
検査陰性、症例対照研究デザインにより、症例乳児の母親と対照乳児の母親(SARS-CoV-2検査結果が陰性の者)の妊娠中に2回の一次mRNA COVID-19ワクチン接種シリーズを完了した確率を比較して、ワクチン性能を評価した。参加した乳児は6か月未満であり、2021年7月1日から2022年1月17日までの間に20の小児病院の1つに出生入院以外で入院した。この期間中、SARS-CoV-2デルタ変異体は米国で優勢な変異体だった。12月中旬までの州で、その後オミクロンが優勢になった。症例-乳児は入院の主な理由としてCOVID-19で入院したか、急性COVID-19と一致する臨床症状を示した。症例の乳児は、SARS-CoV-2逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)または抗原検査の結果が陽性。多系統炎症性症候群の診断を受けた乳児はいない。対照乳児は、COVID-19症状の有無にかかわらず入院し、SARS-CoV-2RT-PCRまたは抗原検査の結果が陰性であった乳児。登録された対照乳児は、部位ごとに症例乳児と照合され、症例乳児の入院日から3〜4週間以内に入院した。
ベースラインの人口統計学的特性、臨床情報、およびSARS-CoV-2検査履歴は、入院中または退院後に訓練を受けた研究担当者が実施した親または保護者のインタビュー、および乳児の記録の電子医療記録レビューを通じて取得された。母親はCOVID-19ワクチン接種歴について尋ねられた。投与回数、妊娠中に投与を受けたかどうか、ワクチンを受けた場所、ワクチン製造業者、COVID-19ワクチン接種カードの入手可能性などが含まれる。研究担当者は、州の予防接種登録、電子医療記録、またはその他の情報源(プライマリケア提供者からの文書など)を含む文書化された情報源をレビューして、予防接種の状態を確認した。
 母親は,資料に基づいて、またはもっともらしい自己申告(接種日および場所の提供)により、ファイザー・バイオンテックまたはモデルナのmRNA COVID-19ワクチンの2回接種シリーズを完了した場合、COVID-19のワクチン接種済みとみなした.母親のCOVID-19ワクチン接種状況は、1)未接種(乳児の入院前にCOVID-19ワクチンを接種しなかった母親)、2)ワクチン接種††(妊娠中に2回分の一次mRNA COVID-19ワクチンシリーズを出産前14日以上に完了した母親)に分類された。妊娠中または出産後の母親の SARS-CoV-2 感染状況は、この評価では記録されていない。母親は、妊娠中に部分的にワクチン接種された場合(妊娠中に1回接種し、妊娠前には接種しなかった場合)(71人)、Janssen(Johnson&Johnson)COVID-19ワクチン(4人)を受け、COVID-19を2回接種した場合、妊娠前にCOVID-19ワクチンを2回接種(7人)、出産前14日以上でCOVID-19ワクチンを2回より多く接種(10人)の場合は除外した。
 症例乳児と対照乳児の特徴を比較するために記述統計(カテゴリー別結果についてはピアソン・カイ二乗検定およびフィッシャーの正確検定、連続結果についてはウィルコクソン・ランクサム検定)を用いた。乳児の COVID-19 入院に対する母親のワクチン接種の効果(すなわち、ワクチン効果[VE])は,ロジスティック回帰モデルから求めた VE = 100% ×(1-症例乳児および対照乳児の母親が妊娠中に COVID-19 mRNA ワクチンの 2 回投与を完了する調整オッズ比)式で算出した。モデルは、乳児の年齢と性別、米国国勢調査の地域、入院の暦年間、および人種/民族で調整された。その他の因子(例:乳児の基礎疾患、社会的脆弱性指数、行動因子)も評価したが、ワクチン接種のオッズ比を5%以上変化させなかったため、あるいは多くの乳児に関するデータ(例:母乳歴、未熟児、保育参加)が得られなかったため、最終モデルには含まなかった.二次解析では、母親が妊娠初期(最初の 20 週以内)および妊娠後期(21 週から出産 14 日前まで)に 2 回目の COVID-19 ワクチン接種を受けた場合の有効性を評価した。統計解析はSAS(バージョン9.4;SAS Institute)を用いて行った。
2021年7月1日から2022年1月17日の間に、17州の20の小児科病院において、483人の対象乳児のうち、104人(22%)が除外され、71人の除外乳児は妊娠中に部分接種した母親から生まれたか出産後に接種し、10人は出産14日以上前に3度目のワクチン投与を受けた母親から生まれ、23人は他の理由により除外された。残りの入院乳児379人(症例乳児176人、対照乳児203人)の年齢中央値は2カ月で、80人(21%)が少なくとも1つの基礎疾患を有し、72人(22%)が未熟児として生まれた(表1)。症例児のうち、妊娠中にCOVID-19ワクチンを2回接種した母親は16%であったが、対照児の母親は32%が接種していた。症例児と対照児の基礎疾患(それぞれ20%と23%、p=0.42)および未熟児(それぞれ23%と21%、p=0.58)の有病率はほぼ同じであった。症例児は対照児(それぞれ9%と28%)に比べ、非ヒスパニック系黒人(18%)とヒスパニック系(34%)の割合が高かった。

Table 1. COVID-19(症例乳児)で入院し、COVID-19(対照乳児)で入院していない生後6か月未満の乳児の特徴— 20の小児病院、17の州、* 2021年7月から2022年1月

 症例児のうち、43人(24%)が集中治療室(ICU)に入院した(Table 2)。25例(15%)の乳児は重症で、入院中に人工呼吸、血管作動性輸液、体外式膜酸素療法(ECMO)などの生命維持療法を受けており、これらの重症乳児のうち1例(0.4%)が死亡した。ICUに入院した43例の乳児のうち、88%は母親がワクチン未接種であった。ECMOを必要とした1例と死亡した1例の母親は、いずれもワクチン未接種であった。

Table 2. COVID-19で入院した6か月未満の乳児の臨床転帰と重症度、妊娠中の母親の予防接種状況別* — 20の小児病院、17の州、† 2021年7月〜2022年1月

妊娠中に母親の一次mRNA COVID-19ワクチンシリーズを2回接種した場合の、6カ月未満の乳児のCOVID-19関連入院に対する有効率は61%(95% CI = 31%~78%) であった(Table 3)。ワクチン接種済みと分類された母親93人のうち,90人(97%)がワクチン接種日を記録していた。妊娠初期(最初の20週)の2回接種COVID-19シリーズの効果は32%(95%CI=-43%~68%)であったが、信頼区間が広く、慎重に解釈する必要があり、妊娠後期(21週~出産14日前)は80%(95%CI=55%~91%)であった。

Table 3. 妊娠中の母親のワクチン接種のタイミングによる、6か月未満の乳児におけるCOVID -19関連の入院に対する母親の2回投与一次mRNA COVID-19ワクチン接種の有効性 — 20の小児病院、17の州、2021年7月〜2022年1月

Discussion
妊娠中のCOVID-19は重症化および死亡と関連しており、COVID-19を有する妊婦は早産、死産およびその他の妊娠合併症を経験する可能性が高い。重症化や死亡を含むCOVID-19の予防のために、妊婦へのワクチン接種が推奨されている。COVID-19のワクチン接種は、妊娠中に行うことで安全かつ効果的である。妊娠中のCOVID-19ワクチン接種は、出産時の母体血清、母乳および母体抗体の移行を示す乳児血清で母体抗体が検出されることと関連している。妊娠後期にワクチン接種を受けた女性から生まれた乳児のVE点推定値が高いことは、乳児に保護を与える可能性のあるSARS-CoV-2特異的抗体の経胎盤移動の可能性と一致する。乳児を保護する抗体が移行するための母親のワクチン接種の最適なタイミングは現在のところ不明であり、乳児の重症COVID-19の予防における母親のCOVID-19ワクチン接種の直接的効果は、これまで報告されていない。さらに、現在、乳児はワクチン接種の対象年齢ではなく、乳児の入院率はパンデミックの最高レベルにとどまっていることから、本研究は、妊娠中の母親のCOVID-19ワクチン接種が生後6カ月未満の乳児をCOVID-19による入院から守る可能性を示唆するものであった。

Limitations第1に、特定の変異体に対するVEを直接評価することができなかった.第2に、サンプル数が少ないため、ワクチン接種の妊娠三期別のVEを評価することができず、サンプル数が少ないため、いくつかの推定値の信頼区間が広くなり、慎重に解釈する必要がある。第3に、この解析では、妊婦が妊娠前または妊娠中にSARS-CoV-2に感染していたかどうかを評価しておらず、それによって母体の抗体が得られたかもしれない。第4に、感染リスクに影響を与える可能性のある、ワクチン接種者と非接種者の母親の行動の違い(母親が出生前ケアをしていたかどうかなど)などの交絡が残っており、潜在的交絡因子(例えば、母乳、保育への出席、未熟児)は、すべての乳児についてこの情報が得られなかったため、モデルで説明することができない。第5に、この解析には少数の参加者の自己報告データが含まれるため、母親のワクチン接種状況が少数の乳児について誤って分類されているかもしれない、あるいは母親が妊娠中にCOVID-19ワクチン接種を完了したかどうかについての記憶が不完全である可能性がある。第6に、母親がプライマリーシリーズを完了するために追加の mRNA COVID-19 ワクチン接種を必要とするかどうかを判断するために、母親の免疫不全状態が収集されていないことである.最後に、妊娠中に受けた母親のブースター用量のVEは、サンプルサイズが小さいため、評価できなかった。
生後6カ月未満の入院乳児379人(COVID-19を接種した176人[症例乳児]、COVID-19を接種しなかった203人[対照乳児])のうち、月齢中央値は2カ月、21%が少なくとも1つの基礎疾患を持ち、症例乳児と対照乳児の22%が早産(妊娠37週未満)で生まれたことが分かった。生後6カ月未満の乳児のCOVID-19入院に対する妊娠中の母親のワクチン接種の有効性は61%(95%CI=31%-78%)であった。妊娠中に 2 回の mRNA COVID-19 ワクチン接種シリーズを完了することで、生後 6 ヵ月未満の乳児の COVID-19 入院を予防できる可能性がある.CDCは、妊娠中、授乳中、現在妊娠を希望する女性、または将来妊娠する可能性のある女性がCOVID-19のワクチン接種を受け、最新の状態を保つことを推奨している。

【開催日】2022年6月1日(水)

産後11週における母親の健康と仕事関連の要因

-文献名-
McGovern P, Dowd B, Gjerdingen D, Dagher R, Ukestad L, McCaffrey D, Lundberg U. Mothers’ health and work-related factors at 11 weeks postpartum. Ann Fam Med. 2007 Nov-Dec;5(6):519-27.

-要約-
目的
 多くの母親は産後すぐに職場復帰をする。女性の出産後の回復や仕事と家庭の両立について要因の研究はあるが、産後の女性の健康との関連を調べた研究は少ない。また、社会的支援と女性の産後の健康状態の関連を経時的に調べた研究も少ない。本研究では、産後11週間の就業女性の産後の健康に関連する個人的および仕事上の要因について検討する。

 ★アメリカの産休・育休制度
 1993年に制定された連邦家族医療休暇法(FMLA)
  ・以下の条件を満たす場合は出産や養子縁組に関して12週間の休暇を取得する権利がある
    ①12ヶ月以上雇用されていること ②休暇開始までに1,250時間以上勤務していること ③勤務地から75マイル以内に住む従業員が50人以上いる職場で働いていること
   ・この法律での受給資格がない女性については、州の政策や個々の雇用主の政策が何らかの形で休暇給付金を提供する場合がある

方法
 前向きコホートデザインを用いて、2001年に出産で3カ所の市中病院に入院中のミネソタ州の母親817名を本研究に募集した。産後5週と11週に電話インタビューを実施した。対象者は18歳以上の有職者で,英語を話し,単胎児を出産し,もともと雇用されており、産後に復帰するつもりの女性であった。インタビュアーはバイアスのかからないインタビューをするためにトレーニングを受けた。フルインタビューは45分程度であったが、仕事を辞めた場合や時間が限られている場合は10分のミニインタビューとした。バイアス評価のために両方のインタビューを用いたが、多変量解析にはフルインタビューのみ使用した。身体的健康はSF-12の身体的な項目、精神的健康はSF-12の精神的な項目、症状は先行研究を参考に28項目を設定して評価した。これらの項目は4週間の期間内にあったかどうかを調査した。操作変数(2段階最小二乗法)を用いた多変量モデルを用いて、女性の心身の健康および産後症状に関連する個人的および雇用的特性を推定した。

結果
[table1]
 産後11週目に661名(登録者の81%)がインタビューを完了し、50%の参加者が職場に復帰していた。インタビューを完了した人としていない人の背景の差をtable1に示す。インタビューを完了した人は、より高年齢、白人が多く、大学卒業の学歴である割合が多かったが、身体的健康、精神的健康、貧困レベルに関しては差が無かった。

[table2]
 インタビューを完了した661人のcharacteristicsをtable2に示す。産後11週の時点で50%が仕事復帰していた。25~34歳のアメリカ女性のデータと比較して、身体的健康も精神的健康も有意に良かった。

[table3]
 産後の症状の頻度をtable3に示す。出産に関する症状は産後5週では平均6.2個であったが、11週では4.1個と有意に減っている。最も多い症状は5週でも11週でも倦怠感である。5週と11週で最も差があるのは母乳育児に関する症状である(11週の方が少ない)。休暇を得る母親より職場復帰する母親の方が母乳育児が少ないためと考えられる。

[table4]
 身体的健康、精神的健康、産後症状それぞれに関する多変量解析の 結果をtable4に示す。
・身体的健康
 産後の身体的健康の向上と有意に関連する要因は、妊娠前の一般的な健康状態の良さと、妊娠中の同僚からのサポートのレベルの高さであった。
・精神的健康
 産後の精神的健康の向上と有意に関連する因子として、妊娠前の一般的健康状態が良好であること、産前産後の気分の問題がないこと、家族や友人からの社会的支援が得られること、家庭や仕事の活動に対する管理意識が高いこと、仕事のストレス得点が低いことなどが挙げられた。
・産後症状
 産後症状の軽減と有意に関連する要因は、妊娠前の健康状態が良好であること、出産前の気分の問題がないこと、結婚しているかパートナーがいること(独身に対して)、非白人であること、夜泣きのない乳児を持つことであった。

 また、多変量解析の結果、健康の尺度に対する独立変数の効果は、一般に小さいか中程度であることがわかった。

議論
 症状としては疲労が多く、それ自体も問題となるが、疲労から精神的な不調などに繋がるためそういう意味でも重要である。
 今回の研究では産後5週から11週にかけて症状は減っていったが、先行研究においてそのパターンに当てはまらない症状として上気道症状が挙げられている。職場復帰による母児ともに環境変化(感染源への暴露、ストレスなど)で急性上気道炎が増えると考えられている。 
 母乳育児に関する症状が産後5週から11週にかけて減ったが、おそらく職場復帰に伴う母乳育児の減少(母乳育児は5週67%→11週で52%)が関連していると考えられる。ミネソタ州法では、母親が乳児に母乳を与えるために、毎日無給の休憩時間を提供することを雇用主に義務付けている。雇用主が休憩時間ををどの程度提供しているか、またはこの休憩時間を受けた女性が職場復帰後に母乳育児を継続する十分な動機となるかは、不明である。これらの問題に取り組む研究が必要である。
 産後の健康には妊娠前の健康状態が良いことが有意に関連することが分かった。つまり、女性を治療するすべての臨床医は、妊娠前の健康増進と健康管理に重要な役割を担っている。妊娠前に精神的または身体的な健康レベルが低い女性は、産後にもっと注意深く観察されるべきで、頻回の訪問などを検討すると良いだろう。
 limitationとしては、文化的背景などが異なる集団への適応。この研修は産後18ヶ月における健康状態の評価を目的とした前向き研究であり産後5週・11週はベースラインのデータとしても機能する。今後、今後の研究では、ケースコントロールデザインにより、就業中の産後女性と産後でない同様の女性とを比較し、両集団における症状の有病率に関する文献に情報を提供することが有益となるであろう。家族や友人からのソーシャルサポートを多面的に評価したが、父親に関する詳細なデータは集めなかった。
 今後は、この研究で示唆されたテーマを元に介入研究による評価が必要である。

結論
この結果から、産後の女性は、疲労レベルおよび精神的・身体的症状に関して評価される必要があることが示唆された。疲労や産後症状が日常的な役割を制限している女性は、医師に、仕事のストレスを減らし、職場や家庭での社会的支援を増やすための方法について相談し、家族・医療休暇の支援が症状のコントロールに役に立つことを保証することが有用であると思われる。

【開催日】2022年2月9日(水)

COVID-19の母体の経過(2020年6月)

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。

-文献名-
Sascha Ellington, et al.
Characteristics of Women of Reproductive Age with Laboratory-Confirmed SARS-CoV-2 Infection by Pregnancy Status — United States, January 22–June 7, 2020
Centers for Disease Control and Prevention MMWR June 26, 2020;Vol.69 :No.25

-要約-
Introduction:
2020年6月16日現在、COVID-19のパンデミックにより、米国では2,104,346人発症し、116,140人が死亡している。妊娠中、女性は免疫学的・生理的な変化を経験する。その変化により、呼吸器感染症による重症化のリスクを高める可能性がある(1,2)。これまでのところ、米国の妊娠中の女性におけるCOVID-19の有病率と重症度を評価するためのデータや、妊婦と非妊婦の間で徴候や症状が異なるかどうかを判断するためのデータは限られている。
Objective:
2020年1月22日から6月7日までに、COVID-19のサーベイランスの一環として、CDCに届け出られた、生殖可能年齢(15~44歳)の女性326,335人を対象とした。全員、COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2の検査結果が陽性であった。妊娠に関するデータを得られた人を対象とした。
Method:
観察研究。検査で陽性または疑いとなったCOVID-19患者は電子的にCDCに届け出られる。2020年1月22日から6月7日までに届け出られたものを解析した。50の州とコロンビア、ニューヨークからの報告が含まれる。データとして、人口統計学的特徴、妊娠状態、基礎疾患、臨床的徴候と症状、および転帰(入院、ICU 入院、機械的人工呼吸器の使用、死亡)を収集した。 データが欠落しているアウトカムは、起こっていないアウトカムであると仮定した。
Results:
 妊娠状況に関するデータは、91,412人(28.0%)で得られた。妊婦は8,207人(9.0%)であった(Table 1)。
 症状は、妊婦の65.2%、非妊婦の90.0%で報告された。症状の報告があったもののうち、妊婦の97.1%、非妊婦の96.9%で症状を認めた。妊婦と非妊婦の間で、咳嗽(51.8%、53.7%)、呼吸苦(30.1%、30.3%)は同頻度であった。妊婦は、頭痛(40.6%、52.2%)、筋肉痛(38.1%、47.2%)発熱(34.3%、42.1%)、悪寒(28.5%、35.6%%)、下痢(14.3%、23.1%)が少なかった。
 慢性の基礎疾患があるのは、妊婦で22.9%、非妊婦で35.0%であった。慢性肺疾患(21.8%、10.3%),糖尿病(15.3%、6.4%), 心血管疾患(14.0%、7.1%)が多かった。
 入院は、妊婦31.5%、非妊婦5.8%だった。ICU入室は1.5%、0.9%、人工呼吸は0.5%、0.3%。死亡は0.2%、0.2%であった。

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Discussion:
 15~44歳の方の5%が妊娠していたことになるが、この割合は予想以上に高くなっている。これは、以下のような可能性がある。
病気のリスク増加に関連しているとも考えられるが、妊婦は非妊婦と比較して医療機関に頻繁に受診するため、検査を受ける割合が高かったかもしれない。 ヒスパニック系および黒人の女性は,妊娠中に SARS-CoV-2 感染の影響を不均衡に受ける可能性がある。さらに、妊娠による入院の違いは、妊婦であるがために入院の閾値が低くなっているだけかもしれない。
 最近のスウェーデンでの研究では、COVID-19を持つ妊婦は、5倍の確率でICUに入院し、4倍の確率で人工呼吸管理を行われていた。死亡リスクは妊娠中と非妊娠中で同じであった。
生殖年齢の女性のインフルエンザ感染における妊婦・非妊婦の違いをみた最近のメタアナリシスでは、妊娠は入院のリスクが7倍高いが、ICU入院のリスクは低く、死亡リスクの増加はなかった。
 この報告書の所見には、少なくとも4つの制限がある。第一に、4分の3の患者で妊娠の有無が不明であったこと。妊娠状態、人種/民族、症状に関するデータ、基礎となる条件、およびアウトカムがかなりの割合で欠損していた。このような状況は、いくつかの特性の過大評価または過小評価につながる可能性がある。第二に、情報を確認して報告するためには、追加の時間が必要かもしれない。ICU 入院、機械的人工呼吸などのアウトカムの有病率を過小評価している可能性がある。第三に、妊娠週数は感染した時期や入院に関連しているかどうかがわからない。COVID-19の病気のためではなく、妊娠中の状態のために入院した可能性がある。最後に、ルーチンの症例サーベイランスでは、妊娠や出産のアウトカムは確認できていない。

【開催日】2020年8月12日(水)

トランスジェンダーのケア

-文献名-
DAVID A. KLEIN, MD, MPH; SCOTT L. PARADISE, MD; and EMILY T. GOODWIN, MD, Fort Belvoir Community Hospital, Fort Belvoir, Virginia Am Fam Physician. 2018 Dec 1;98(11):645-653.

-要約-

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導入:米国では約15万人の若者と140万人の成人がトランスジェンダーとして特定されています。社会文化的な需要が進むにつれ、臨床医はおそらくトランスジェンダーの人々の増加に気づくでしょう。
しかし、大規模な観察研究のデータは、トランスジェンダーの24%が医療環境での不平等な治療を報告し、19%が治療の拒否を報告し、33%が予防的介入を求めていないことを示唆しています。
約半数のレポートは、彼らがトランスジェンダーケアの基本的な教義を彼らの医療専門家たちに教えたと報告しています。
用語の定義:トランスジェンダーは、経験、表現される性別が出生時に割り当てられた性別と異なる人を表します。性同一性障害は、トランスジェンダー及び性多様性の人が経験する機能苦痛または問題を表します。
ICD-11の診断にある性不適合は、その人の経験する性別と割り当てられた性別の間の矛盾を表していますが、違和感または治療のための好みを意味するものではありません。
トランスジェンダーと性の不一致という用語は、一般的に性的指向、性的発達、外的性別表現とは異なります。
最適な臨床環境:臨床医が信頼関係の確立と維持に重点を置きトランスジェンダーの患者にとって安全で快適な環境を確立することが重要です(Table1)。
臨床医は「私は性多様性の人々のケアの経験が限られていますが、あなたが私の診療に安心を感じてもらえることが大事で、最適なケアができるよう頑張ります」と患者に伝えることはできます。
トランスジェンダー、性多様性に親和性のある資料のある待合室はより歓迎かもしれません。
問診票を更新して、性別に依存しない言語を含め、トランスジェンダーの患者の特定に役立つ2段階の方法(選択した性別と出生時に割り当てられた性別を特定する2つの質問)を使用できます。
文化的に繊細な用語やトランスジェンダーの話題、個人の偏見の評価における臨床医やスタッフのトレーニングは患者の反応に寄与するかもしれません。
また、地域のトランスジェンダーの患者の代弁をすることができます。

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評価:
病歴
トランスジェンダー患者を評価する場合、臨床医は性別の違和感または不一致の大きさ、期間、および安定性を評価する必要があります。治療は状況に合わせて最適化する必要があります。臨床像(例えば
、精神病)が混乱していたり性肯定ケアをより困難にする(例えば、制御されていないうつ病、重要な薬物使用)状況です。患者の社会環境のサポートと安全性は性肯定のために評価を必要とします。
これは、理想的には学際的な注意を払って達成され、完全に評価するために、数回の受診が必要な場合があります。
プライマリケア臨床医は、性同一性障害を評価しホルモン療法を管理することにより患者の性別関連のケアに積極的な役割を取るか、または良い状態であるか観察しプライマリケアと紹介を提供する補助的な役割を果たすか選択することができます(Figure1)。
臨床医は、自分自身をホルモン療法の門番と見なすべきではありません。むしろ患者が自分の健康管理について合理的で教育に基づいた決定を下せるように支援する必要があります。

身体診察
トランスジェンダーの患者は、継続的な不快感または過去の否定的な経験のために、身体診察中に不快を感じる場合があります。
診察は患者の現在の解剖学的構造と受診の特定のニーズに基づくべきである、そして、説明し寄り添い患者の快適さのレベルによって中断されるべきです。
性発達の違いは、通常、性の違和感や性の不一致よりもずっと早く診断されます。ホルモン療法されていない場合は、出生時に割り当てられた性別と一致しない性別の特性を評価するために、初期検査が必要になる場合があります。
このような所見は、内分泌科医または他の専門医への紹介を必要とする場合があります。

メンタルヘルス:
トランスジェンダーの患者は通常メンタルヘルスの診断の割合が高いです。しかし、患者の精神的懸念がトランスジェンダーであることに二次的であると仮定しないことが重要です。
プライマリケアの臨床医は、うつ病、不安障害、PTSD、摂食障害、薬物使用、親密なパートナーの暴力、自傷行為、いじめ、不登校、ホームレス、高リスクの性的行動、および自殺傾向のためのルーチンのスクリーニングを検討すべきです。
臨床医は、トランスジェンダーの人々の基本的なメンタルヘルスのニーズに対応し(例えばうつ病や不安に対する第一選択治療)、必要に応じて患者を専門医に紹介する必要があります。
トランスジェンダーはトラウマ的経験の有病率が高いため、ケアはトラウマインフォームドであるべきで(すなわち、安全、支援および信頼性に焦点を当てる)、ケアとレジリエンスに関連する患者の人生経験によって導かれるべきです。
人の性自認を出生時に割り当てられた性別に合わせるための努力、治療は非倫理的でAAFPのポリシーを含む現行のガイドラインやエビデンスに対応していない治療です。

ヘルスメンテナンス:
予防医療は、トランスジェンダーとシスジェンダー(つまり、トランスジェンダーではない)の人とで同様です。
微妙な推奨事項は、患者の現在の解剖学、薬物使用、および行動に基づいています。
高脂血症、糖尿病、喫煙、高血圧、肥満のためのスクリーニングの推奨事項はUSPSTFから入手できます。臨床医はVTEおよび代謝性疾患の兆候と症状に注意する必要があります。
ホルモン療法はこれらの状態のリスクを高める可能性があるためです。骨粗鬆症のスクリーニングはホルモン治療に基づきます。
がん検診の推奨事項は、患者の現在の解剖によって決定されます。乳房組織を持つトランスジェンダーの女性と完全な乳房切除を受けていないトランスジェンダーの男性は、シスジェンダーの人のガイドラインに基づいてマンモグラフィのスクリーニングを受けるべきです。子宮頸部および前立腺癌のスクリーニングは、現行のガイドラインおよび解剖的存在に基づいてなされるべきです。
予防接種(例HPV)および性感染症(HIVを含む)のスクリーニングと治療に関する推奨事項は、性行為に基づいてCDCとUSPSTFが提供しています。
HIV感染前および曝露後予防、治療基準を満たす患者のために考慮されるべきです。

ホルモン療法:
女性化および男性化するホルモン療法は、経験のある性から第二の性への発達を促進するための部分的に不可逆的な治療です。すべての性別の人がホルモン治療を必要とするわけではありません。
しかし、治療を受けた人は一般に、QOL、自尊心、不安の改善を報告しています。患者が不可逆的な外見の変化、生殖能力、および社会的な状況だけでなく、他の潜在的な利点とリスクを理解した後、治療に同意する必要があります。(詳細は割愛)
手術およびその他の治療:性の違和感を最小限に抑えるために、性適合外科的治療は必要とされない場合があり、ケアは個別化する必要があります。(詳細は割愛)

トランスジェンダーユース
すべてではありませんが、ほとんどのトランスジェンダーの成人は、子供の頃から性同一性の安定性を報告しています。しかし、性多様な思春期前の子供たちのなかには、ゲイ、レズビアン、またはバイセクシャルとして識別し、または性同一性がより明確になってきたときトランスジェンダーとは別にアイデンティティを持つこともあります。思春期前の性多様性の子供のために広く受け入れられている治療プロトコルはありません。臨床医は優先的に(支持的に「成り行きを見守る」アプローチとは対照的に)性同一性の健康的な探索を個別化する肯定的なケア戦略に子供や家族のメンバーの支援に焦点を当てることができます。
これは、トランスジェンダーの若者の発達に精通しているメンタルヘルスの臨床医への紹介を正当化するかもしれません。
トランスジェンダーの思春期の若者は、サポートのための心理療法にアクセスし、性同一性を探索し、性の不一致の社会感情的な側面に適応し、潜在的な治療に対する現実的な期待について話し合うための安全な手段が必要です。
臨床医は回復力を付与することが示されているサポーティブな家族や社会環境を代弁すべきです。いじめや被害にあうサポーティブでない環境は、心理社会的機能と幸福に悪影響をもたらし得ます。
トランスジェンダーの青年は、二次性徴の開始時に苦痛を経験する場合があります。臨床医は、患者が性的成熟のステージ2または3に達したときに思春期を抑制するために、性腺刺激ホルモン放出ホルモン
(GnRH)の開始または適時の紹介を考慮する必要があります。この治療は完全に可逆的であり、将来の肯定は簡単かつ安全にすることができ、性同一の安定性を確保するための時間ができます。ホルモン
治療は、思春期の発症前には保証されません。
GnRHアナログ治療のための同意には利益とリスクに関する情報が含まれるべきである。治療を開始する前に、内因性思春期の進行を必要とする可能性のある不妊治療について患者に紹介する必要があります。
一部の人は、外見(衣服、髪型など)または行動を性同一性と一致させることを好みます。社会的肯定のリスクと利益を比較検討する必要があります。初経後のTransmasculineの若者は、追加の避妊効果を
提供する月経抑制を受けることができます。乳房結合は、乳房組織を隠すために使用される場合がありますが、痛み、皮膚刺激、または皮膚感染を引き起こす可能性があります。
複数の研究が、思春期抑制とその後の性一致ホルモン療法後の心理社会的結果の改善を報告しています。治療の遅れは精神ストレスおよび性関連虐待を増強するかもしれません。
したがって、成り行きを見守るアプローチで性一致ホルモン治療を差し控えることにはリスクがないわけではありません。
トランスジェンダーの人、家族、臨床医向けの追加リソースは、eTable Cに示されています。

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FIGURE 1.
Considerations in the care of transgender and gender-diverse persons in primary care.

【開催日】2019年10月9日(水)

片頭痛もちの女性の脳卒中と低容量ピルの関係

-文献名-
Huma. U. Sheikh. Risk of Stroke Associated With Use of Estrogen Containing Contraceptives in Women With Migraine: A Systematic Review. Headache. 2018 Jan; 58(1): 5-21.
-要約-
Introduction:著者たちがなぜこの研究を行ったのか、これまでに分かっていること、分かっていないことなど前提となった事柄を記載する。
片頭痛は、妊娠可能な年齢の女性が罹患するcommon diseaseの一つである。片頭痛は脳卒中を含む様々な血管疾患のリスク因子と言われており、特に前兆を伴う片頭痛でリスクが高い。先行研究ではエストロゲン含有の経口避妊薬と脳卒中には関連があると報告されているが、経口避妊薬は改良を重ね、エストロゲン含有量もどんどん減ってきている。エストロゲン含有量の少ない現在処方されている経口避妊薬と、脳卒中発生リスクの間には関連があるのだろうか?(→経口避妊薬一覧へ)

Method:どのような方法を用いたのか、特殊な方法であれば適宜解説を入れる。
システマティックレビュー
PubMed、Cochrane Library、およびEMBASEを2016年1月まで検索し、18歳以上の女性を対象とした英語のRCTもしくは観察研究を収集した。介入は経口避妊薬の内服(エストロゲン単剤もしくはエストロゲン・プロゲステロンの合剤)を、アウトカムは虚血性・出血性脳卒中とした。
研究の質はGRADEとNewcastle Ottawaスケールで評価した。

Results:表やグラフがあれば適宜紹介する。
 7本の症例対照研究にて片頭痛を有する女性で経口避妊薬を内服した人うち、虚血性脳卒中を起こした人のORは2.08-16.0と報告されたが、いずれも小規模で信頼区間が広い。
 片頭痛を有する女性における経口避妊薬のエストロゲン含有量と脳卒中リスクについての研究報告はない。(エストロゲン含有量の記載はあるが、関係性は評価されていない)片頭痛と関連なくエストロゲン含有量と脳卒中の関連については、グループ間比較(エストロゲン含有量50μg、30-40、20)において虚血性脳卒中のリスクに容量依存的な変化があると結論づけた研究もあった。
 その他の危険因子として、片頭痛と喫煙と低用量経口避妊薬の組み合わせが相乗効果的に脳卒中リスクを上昇させることがわかった。OR34.4(CI 3.27-361)
前兆の有無での比較については、1884例を集めた研究があり、前兆を伴うものでOR6.1(CI3.1-12.1)、伴わないものでOR1.7(1.09-2.88)という結果であった。

Discussion:今回の研究の限界、残された課題などを記載する。
ほとんどの研究において、片頭痛の診断基準が曖昧であること、前兆のあるなしで層別化していないこと、経口避妊薬の種類やエストロゲン含有量の記載がない(カットオフを50μg以下と記載しているものは多いが、現在処方されている低用量経口避妊薬は30-40μgがほとんど、10-20μgというものもあり、現状にはあまり即していない結果であった)ことがlimitationとしてあげられた。
結論としては、低用量経口避妊薬と脳卒中リスクについては質の高い研究に乏しいことがわかった。前兆のある片頭痛もちの女性の経口避妊薬内服と脳卒中リスクは関連がありそうだが、低用量経口避妊薬でのさらなる研究が必要。喫煙との併用はリスクが倍増するので注意。少なくとも50μg以上の高容量のエストロゲン製剤とは関連がありそうなので、より少ない含有量の経口避妊薬の使用が妥当だろう・・・。

【開催日】2019年6月5日(水)

妊娠中のアセトアミノフェン使用と 小児期の問題行動との関係

-文献名-
Association of Acetaminophen Use During Pregnancy With Behavioral Problems in Childhood: Evidence Against Confounding. JAMA Pediatr. 2016 Oct 1;170(10):964-970.

-要約-
Introduction:
アセトアミノフェンは一般的な鎮痛薬の一つであり、妊娠中の全ての段階で安全であると考えられ、解熱・鎮痛の第一選択になっている。
妊娠中のアセトアミノフェンの使用は、多動障害およびADHD様リスクと関連している。 いくつかの研究で報告されている。以前の研究では多くの潜在的な交絡因子が説明されていたが、まだ認識されていない交絡の可能性がある。測定されていない家族性の交絡が考慮される必要があり、
母体の出生前の曝露と母体の出生後の曝露の比較、妊娠中のパートナーの曝露がある。

Method:
2015年2月から2016年3月までに、ALSPAC(Avon Longitudinal Study of Parents and Children)から得たデータを分析した。前向きの出生コホート。
1991-1992年の間にALSPACに登録された7796人のお母さんが対象で、子供とパートナーも調査対象となった。
(ALSPACには、出生前からの子どもと両親の長期にわたる個人情報が、遺伝子研究資源とリンクされて保管されている。)

母親は、妊娠18ヶ月と32ヶ月時に、前3ヶ月間にアセトアミノフェンを使用したかを尋ねられた。
子供が61ヶ月時点で、同様の質問を、母親とパートナーに質問した。また、筋骨格系の問題、感染症、片頭痛あるいは頭痛が同時期にあったかどうかも質問された。投与量や期間などについては詳細に確認をしていない。
子供が7歳になったときの母親から報告で、Strength and Difficulties Questionnaire(SDQ)を測定した。

Results:表やグラフがあれば適宜紹介する。
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妊娠18週および32週でのアセトアミノフェン使用は、行為障害、多動障害と
妊娠32週でのアセトアミノフェン使用は、感情的な症状やSDQ total difficulties と関連していた。

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出生後の母親、パートナーのアセトアミノフェンは関連なし

Discussion:今回の研究の限界、残された課題などを記載する。
胎児期にアセトアミノフェンに曝露した小児は、複数の行動障害のリスクが増加し、アセトアミノフェンと関連した未知の社会的要因や行動要因によっては説明できないようである。
この結果は、公衆衛生上のアドバイスに影響を及ぼす可能性がある。更なる研究により結果が再現され、機序が明らかになることも必要である。
Limitation:
頭痛・筋骨格系の問題・感染症など一般的な使用理由は調整されたが、アセトアミノフェンの適応の情報がない。
妊娠中の母親の健康に対する交絡や胎児への影響の可能性は除外できない。
アセトアミノフェンの用量や期間の情報がない(毎日使用していたのは0.1%)

【開催日】2017年12月6日(水)

「患者のどれだけ生きたいか?と、前立腺癌の治療の選択をする・しない」の調査

-文献名-
Jinping Xu et al. Patients’ Survival Expectations With and Without Their Chosen Treatment for Prostate Cancer. Ann Fam Med May/June 2016 vol. 14 no. 3 208-214

-この文献を選んだ背景-
 前立腺癌は男性の部位別罹患率の3位であり、長期生存の見込めるがんであるため、家庭医の継続的な外来で遭遇することの多いがんであるとも言える。実際、当院でも、これまで複数の前立腺癌患者を経験している。多くは治療継続という外来であるが、最近経験した2例においては限局性前立腺癌患者のカウンセリング(2ndオピニオン含)をも担う外来となった。それぞれの価値観や性格傾向に合わせて継続的なケアを行なっているが、「どれだけ生きたいか?」という期待が「治療選択の有無」にどのように影響しているのか?を調べた文献に遭遇し、今後の診療に行かせる研究と考え共有したい。

-要約-
Introduction:
・スクリーニングで同定された限局性前立腺癌への過剰治療は公衆衛生学的に重要な関心事である。
・低リスクのものは初期マネジメント戦略として「経過観察/積極的な監視療法」がガイドラインに含まれているが、実際選択しているのは10-20%程度である。新しい技術の存在やがん進行の不安・恐れが影響し、低リスクへの積極的な治療は増加傾向にある。
・現在、積極的治療と待機的観察を比較するPIVOT試験が進行中であり、10年間の中央値で待機的観察と比べて積極的手術が全ての原因もしくは前立腺癌に関連した死亡率を著しく低下させるという結果は示せなかった。手術や放射線療法などの積極的な治療が生存率向上に寄与するかはこれまで十分に確立されてもいない。
・治療決断に際し、治療オプションの利点・決定を正確に理解する必要があり、患者の期待余命が治療選択に影響するのかの調査はほとんどない。我々は患者の期待余命と限局性前立腺癌への治療選択の有無について調査を行なった。

Method:
・横断研究
・デトロイト市都心部に住む75歳以下の黒人・白人男性で、新たに診断された限局性前立腺癌患者が対象
・MDCSSというシステムのRSAというデータを利用し、自記入式調査表を用いての研究を行なった
・カルテレビューと治療選択、選択理由、どんな治療を紹介・推奨されたかなどを調べ、「治療をしなかった場合どれ
だけ生きられると認識しているか?」「治療しなかった場合、どれだけ生られると思うか?」という2つの質問を行なった
・治療無しで期待余命があると思う群、治療をして期待余命があると思う群、その群間の分析、年齢・人種・学歴・健康状態などによる多変量解析を行なった

Results:
松井先生図①

<治療希望の有無別の期待寿命>
・治療しない群では、33%が5年以下の期待余命であった。41%が5-10年、21%が10-20%、5%が20年以上だった。
・積極的治療を選択する群は3%が5年以下、9%が5-10年、10-20%が33%、20年以上が55%であった。
松井先生図②

<治療選択群毎の期待余命比較>
・積極的治療を選択する群の期待余命は11年以上と長く、治療しない群と比べて4年以上長かった。
・手術選択群と放射線選択群との違いは無かった。
・変数調整後、待機観察選択群では治療なしの場合にでより長い期待余命を持ち、治療ありの場合でより短い期待余命を持っていた。
松井先生図③

・治療しない群では待機観察で期待余命が長く、治療する群での期待余命が短かった。
松井先生図④

<多重線形回帰分析>
・年齢、健康状態、癌の深刻さの認識、治療選択群が期待余命の予測因子となった。
・人種やリスクレベルは含まれず。
松井先生図⑤

Discussion:
・全ての男性が、年齢、人種、学歴、合併症に関わらず、積極的治療での非現実的な期待余命を保持していた。
・手術や放射線を選択した男性は、それをすることでしない場合よりも10年以上余命が伸びると期待していた
・この誤解の訂正こそが重要で、治療の意思決定のみならず、PSAでのがんスクリーニングへの認識を改善するであろう
・他の研究では限局性前立腺癌と診断された男性は、全ての年齢と合併症の状態に関わらず86-98%がその癌で亡くなってはいない
・治療後の10年以上の観察結果でも、手術選択が生存を伸ばしたという確証は得られていない
・限局性前立腺癌の診断時に、出会った医師がどのような推奨を行なうかは初期の促進因子となる
・意思決定やその支援において、治療の比較や副作用に焦点があたることはあっても、期待余命を話題にすることは少ない
・泌尿器や放射線の医師が深い医師患者関係を構築してタイトな時間の中で診断や治療についてのディスカッションを行なえる機会は乏しい
・患者を長期に継続的に診ているプライマリケア医こそが、患者についての個人的な知識を持ち、意思決定へのアプローチ、疾患管理の流れの中で何を優先するかに利点を持っている
・本研究の限界としては、①経過観察・監視療法が31名と少なく、より多い人数での調査が今後必要であること。②2009-2010年の研究なので、監視療法が今よりも少ない時代の調査となったこと。③一箇所の都市で行った調査なので他の地域には当てはまらないかもしれない。

-考察とディスカッション-
・2例の患者の低リスクの1例は確固たる信念で治療を選択せず経過観察しているが、専門医からの圧力で不安が度々生じている。もう1例は中リスクでもあったが、手術や放射線のメリット・デメリットに悩み、またダビンチ手術や小線源刺入放射線療法という新しい治療方法でオプションが増えたことで、治療決定に悩み・迷走する時間があった。
・家庭医が意思決定のガイドとして、患者の人生を支援することは期待される役割であるが、多くの場合は
・待機的な観察は、治療の合併症を減らし、手術をしないコスト低下が期待できる。家庭医が期待余命などを含めて意思決定支援に関わるメリットは大きい。
・しかし、現状の医療体制や専門医との関係性の中で「患者が家庭医に相談を持ち込むか?」「家庭医と患者の決定を専門医がどう認識するか?」についてはまだまだ弱い体制・コンセンサスである。

<ディスカッションポイント>
 ・限局性前立腺癌の治療決定に関わったことがありますか?その際に、期待余命などを話題にしたことがありますか?
 ・今後、どのようにすれば患者が家庭医に前立腺癌の治療方針の相談を持ち込めると思いますか?どのようにすれば家庭医と泌尿器科医、放射線治療医で日本や各医療圏でのコンセンサスをつくれると思いますか?

【開催日】
 2016年9月21日(水)

家庭医はDVとどう対峙するか

―文献名―
O’Doherty LJ1, Taft A, Hegarty K, Ramsay J.Screening women for intimate partner violence in healthcare settings: abridged Cochrane systematic review and meta-analysis.BMJ 2014;348:g2913  PMID:24821132

―要約―
1)目的
医療機関のセッティングでパートナーからの暴力についてスクリーニングすることの効果を検証する事で、その意義を高め、女性の幸福に寄与し、今以上の暴力や害悪の原因を減少させるため

2)研究デザイン
スクリーニングの有用性を評価するためにシステマティックレビューおよびメタ分析を行なった。研究評価、データの抽出、質的評価は著者ら二人が独立して行なった。リスク比および95%信頼区間の設定については標準化された方式を用いて求めた。

3)データ
2012年7月までに、9つのデータベース(CENTRAL, Medline, Medline(R), Embase, DARE, CINAHL, PsycINFO, Sociological Abstracts, ASSIA)で検索され、2010年までに5つのトライアルが登録された

4)研究の選択における加入クライテリア
医療機関において16歳以上の全ての女性に対して、パートナーからの暴力を受けているかのスクリーニングプログラムがあることが、ランダム化もしくは準ランダム化試験が組み入れ基準である。スクリーニングだけを目的として介入したものと、普段のケア(スクリーニングをしない)との比較した研究だけを選定し、権利擁護や治療的介入のような構造的な介入を目的としたスクリーニングプログラムは除外した。

5)結果

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11のトライアル(n=13027)が同定され組み入れられた。(figure1)
6つの研究(n=3564)のメタ分析では、パートナーからの暴力を同定する割合が(通常のスクリーニングを行なわないケアに比して)上昇した(リスク比2.33、95%信頼区間1.39~3.89)。(figure2)とりわけ、出産前においては、リスク比4.26、95%信頼区間1.76~10.31となっていた。

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3つの研究(n=1400)のメタ分析では、スクリーニングプログラムは、DVの専門機関への紹介につながるエビデンスがないことが証明された。(リスク比2.67、95%信頼区間0.99~7.20)。(figure3)

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2つの研究だけのメタ分析では、スクリーニング後(3~18ヶ月)の暴力の経験を調査しているが、パートナーからの暴力は減っていない事を証明した。1つの研究から、スクリーニングに害悪はないと報告があった。

6)結論
医療機関におけるスクリーニングによりパートナーからの暴力が同定されるケースは増えているが、こうした暴力の潜在的な確率と比較すると、まだ低い状態である。また、スクリーニングが、効果的な専門家への紹介につながっているかどうかは不明である。短期間では、スクリーニングは、害悪がないとされているが、医療機関でスクリーニングを行なう上では十分なエビデンスはない。女性の長い期間の幸福において、スクリーニング法と、事例発見法、治療的介入を織り交ぜたスクリーニング法の有用性を比較する研究が必要である事を、医療機関におけるDV発見政策を施行しようとする政府に知らしめなければならない。

【開催日】
2014年10月1日(水)