後期研修後の「経験からの学習」を支えるフェローシップ
十勝の冬を満喫している更別村国保診療所のフェローの松井善典です。
北海道の冬というと積雪の多さや曇天のイメージですが、ここ十勝では積雪が少なく一週間のほとんどが晴天です。
こんなにも美しくて過ごしやすい冬があるとは全く知りませんでした。
何事も経験しないとわかりませんね・・・。
と、いうことで今日は経験学習について・・・。
家庭医療専門医を目指していた後期研修医の一年目の時に、一冊の本と出合いました。
「経験からの学習~プロフェッショナルへの成長プロセス~」というタイトルの本です。
あなたのお薦めの一冊は?という質問があれば、「これ!」と答える名著です。
「企業における熟達者はいかに経験から学んでいるのか?」というリサーチクエスチョンから
・経験そのものの特性
・学習を促進する個人の特性
・学習を促進する組織特性
の3点より複数の分析・理論的考察を重ね、「経験学習の質は、所属する組織の特性と個人の信念によって決まる」というモデルが提示されています。
個人の内的経験だけではなく組織の外的経験からも学習している、その鍵を握るのが「仕事の信念」であるという指摘に大変納得しました。
実はこのモデル、HCFMのフェローの成長と熟達化にマッチ!と個人的に思っています。
フェローシップでは診療所の副所長/副院長として、後期研修医から1歩(ときに10歩!!)先の挑戦的な課題に取り組んでいます。
何より診療、教育、研究、経営とその課題の領域が幅広く、その各領域での知識・スキル特性をOn the JobのAction learningと、Off the Jobのグループ学習で振り返りながら学んでいます。またフェローそれぞれの働く現場が異なるため、その診療所における家庭医の歴史や組織ライフサイクルも異なり、その差異から学べる一方で、フェロー同士のディスカッションから共通の「パターン」や「流れ」が見えてくる印象があります。そして、上司や先輩たちからコーチング、メンタリングを公式・非公式に受けられるサポートが何より財産です。
これらの経験からの学習を通して、家庭医療の実践者として・教育者として・研究者として・経営者としての信念が醸成されている実感があります。そして、この信念こそが、家庭医としての様々な意思決定や学習や挑戦のためのモチベーション、プロとしての自覚を形成してくれている感覚があります。まだフェローとして一年しかたっていませんが、ぼんやりとしたものの輪郭が少し見えてきました。
来年度の挑戦は、今年度そのきっかけが見えた、フェローの活動そのものをHCFMの各領域の継続的な質の改善に繋げていくことです。私の主たる担当は教育分野(個人的には研究も)なので、日々の診療・教育面でも確実に力を付けながらも組織の横軸として、ミドルプレイヤーとして貢献と挑戦を続けていきたいと思っています。