ゲストインタビュー:日笠 和也
社会福祉法人ビハーラ理事長
本光寺住職
「家庭医=赤ひげ先生?」。そんな思いで迎えた北海道家庭医療学センター発足。
本輪西ファミリークリニックが日鋼記念病院の施設であった頃から、ご近所のよしみもあって患者としてお世話になっていました。1996年に北海道家庭医療学センターが発足した時、ちょうど胃の調子が悪く受診中で禁煙被験者第一号になったのが、実は私です。家庭医という言葉を聞いた時の町の人たちの反応は「今度は赤ひげ先生みたいなのが来るのかな?」というようなもので、特に異議などはありませんでした。
現在の佐藤弘太郎院長が赴任されてからは「地域医療を充実させるには、まず地域を元気にすることだ」という考え方に感銘を受け、ともにさまざまな活動をさせていただいています。4年ほど前に「蘭北地区を考える会」を立ち上げたのもその一つで、商店会のお散歩MAPの作成、コミュニティラジオでの番組運営、月1回のイベントなどを行っています。直近のイベントでは、地域の飲食店を巡るはしご酒ラリー、護身術講習会を行い好評でした。なお、蘭北とは室蘭市北部を指す地域名で、考える会の会員は現在10名ほど。佐藤院長や私のほか、酒屋の店主、新聞販売店の店長、自動車整備士、設備管理会社社長など、さまざまな業種のさまざまなメンバーがいます。
地域活性化と医療の充実。切っても切れない関係であることを実感。
私たちが佐藤院長に最も共感しているのは「地域をよくするためには医療が大切。同時に、地域医療を充実させるには地域の活性化が大切」という考え方です。本輪西ファミリークリニックは医療機関でありながら、当然のように商店会にも加盟し、クリニックの先生方も考える会の活動に積極的に参加してくれています。コミュニティラジオで月1回30分の番組を持ち、地域情報を発信したり町の様子を伝えたり。もちろんラジオのリスナーとして番組を聞く患者も多く、クリニックだけでなくラジオを通じての交流が生きがい、自己実現の場になっているケースもあると伝え聞きます。こういった活動をするようになって約4年。参加してくれる人、活動してくれる人が次第に増えてきたのも嬉しいことでした。これを牽引してきた佐藤院長の人柄の素晴らしさ、人望の厚さについては、私の口から言うまでもないことであると思います。
クリニックとともに目指す「支え合いながら生涯住み続けられるコミュニティ」。
ここ蘭北地区は若者の流出が著しい地域です。高齢化も顕著ですが、札幌などに住む子どもの近所の施設に入所する人も多く、人口減少が続いています。「本音を言えば住み慣れたこの地域で最後まで住みたかったけれど」という言葉を、この土地を去っていった多くの人たちから聞いてきました。地域の中で住み替えをしながらでも、支え合い生きていければというのが私が長年抱き続けてきた思い。私自身、保育所、寺院を運営していることからも、生まれてから亡くなるまでその人の人生をずっと見守りたいというのが願いです。
室蘭は美しい景色に囲まれ、自然という豊かな財産に恵まれた町です。ただ、この町で生まれ育った人たちには、せっかくのこの素晴らしさがよく見えていないきらいがあると感じています。この町で安心して生涯暮らし続けられる人が増えていくためにも、本輪西ファミリークリニックには、今のまま地域に根付いた存在であってほしい。先生方とざっくばらんな会話を積み重ねながら我々にできることを汲み取り、クリニックを盛り立ていきたいと思っています。
※勤務先・学年は全て取材当時のものです(2019年)