メンバーインタビュー:堀 哲也(指導医)

北海道社会事業協会帯広病院 総合診療科
責任医長・指導医


旭川医科大学医学部 卒業。北斗病院 初期研修。北海道家庭医療学センター 後期研修修了。北海道家庭医療学センター フェロー修了。国民健康保険上川医療センター 副院長として勤務し、現職。

患者さんと向き合い、幅広い疾患を深く学べる病棟研修

北海道社会事業協会帯広病院(通称、帯広協会病院)の総合診療科は、当センターで運営を行っています。帯広協会病院は、帯広・十勝地域の中核病院として、広範な役割を担っています。帯広市内のみならず、近隣の町村から1~2時間かけて通院する患者さんも少なくありません。地域の診療所では対応が難しい疾患への対応や、他の診療科と連携を要する疾患を抱えた患者さんのケアなど、診療所とは一味違った外来診療を学ぶことができます。また、救急研修については、年に約1,500台の救急車を受け入れており、その多くを総合診療科が初期対応を行っています。
救急から入院まで一貫した診療を行うことができるとともに、他科の医師とも連携しながら十分な症例数の経験を積むことができます。初期研修医の指導もしながら一歩進んだレベルでの研修ができるのも特徴です。そして、病棟研修では、肺炎や尿路感染症などの高齢患者さんを中心に常時30~50名の入院患者を総合診療科で担当しており、幅広い年齢層と疾患について学ぶことができます。
病歴と身体所見から鑑別疾患を考え、適切な診断や治療へとつなげていけるように症例検討カンファレンスや臨床推論カンファレンスなども定期的に行っています。退院に際しては、介護サービスなどの生活環境に関する調整が必要な症例もあり、多職種との連携、家族との関わり方についても学べます。
さらに「Half day Back研修」として週1回半日を利用して、近隣の更別村国民健康保険 診療所での研修もあります。地域の診療所に赴くことで、退院後の生活状況を知ることができ、訪問診療や乳幼児健診などの研修を通じて診療所ならではの家庭医の役割と病診連携についても学ぶことができます。

自由度の高い裁量を与えて、経験から得る学びを大切に

私自身、大学2年生の時に実習で訪れた更別村国保診療所での家庭医との出会いがきっかけで、家庭医を目指すようになりました。その時に生涯学び続ける生き方に感銘を受け、読書やレクチャーなどを通じた学びだけではなく、経験から得る学びを大切にする学び方は大きな衝撃でした。自分もそうありたいと思うようになりました。
専攻医には自由度の高い裁量を与え、ミスや足りない部分については十分なフォローとフィードバックを行うこと。また、看護師や検査技師といったスタッフたちから研修医への理解が得られるよう働きかけることも、指導医の大切な仕事だと思っています。
専攻医に対しては、まず具体的な目標を一緒に考えて、1カ月間目標に向かって取り組み、振り返りを行う、というサイクルを繰り返しています。例えば高血圧の診療について「ガイドラインに準じた診療ができる」「処方の根拠をカルテに記載する」といった目標を設定し、それができたかできなかったか、理由はなぜか、などを検証していきます。
よく聞かれる質問に「家庭医に向いているのはどんな人ですか?」というものがあります。私が思うのは、何にでも興味が持って主体的に取り組める人、患者さんの生活やそれまでの人生に関する物語にも耳を傾けてゆっくりと話を聞ける人、といったところでしょうか。また、新しいフィールドを切り開いていきたい人にも向いているでしょう。
進路に迷っている人ならば、まずは総合的に診療する姿勢が身につけられる家庭医を選んでみる、という考え方もあると思います。

※ 勤務先・学年は全て取材当時のものです(2017年)